宮里 藍プロ特集

Honda GOLF限定のインタビューや動画宮里 藍プロ スペシャルインタビュー 2012

SPECIAL INTERVIEW 2012 SPECIAL INTERVIEW 2012

アメリカツアー 7 年目、ツアー連戦中の宮里 藍プロを自宅のあるロサンゼルスに訪ね、Honda GOLF 単独のロングインタビューを行いました。
ゴルフのことはもちろん、アメリカでの生活や愛車 CR-V のこと、そして将来のことなど、包み隠さずに話してくれた宮里プロ。きっとみなさんの知らない「宮里 藍」がここにあります。 ※このインタビューは2012年7月に実施したものです。

2012.11.29

誰もがより上を求めるし、誰もがもっと上手くなりたいと考えているので、変化は必要なんです。

自分の強みを知っていますか?

米ツアーで9勝を挙げ、LPGAの中心選手になった宮里さんですが、ここに至るまでの道のりは順調でしたか?
つねに右肩上がりということはないので、上がったり下がったりの繰り返しですね。気持ち的に凄く落ち込んでいたこともあるし、ドライバーが打てなくなってスランプになった時期もあります。自分のいままでのキャリアの中ではそこが一番つらい時期だったので、それを乗り越えてからは挫折みたいなことはあまりないです。あのときに比べれば、たいしたことないですね。
ドライバーが打てないというのは?
ドライバーが打てなくなったのは5年ぐらい前です。当時はスイングを直していて、左にいくのを凄く嫌がっていましたから全部右に飛ぶんです。恐怖心が先に出て体が反応するんですね。右にしか行かないから、右に行くのも怖いし、でも体がそういう風にしか反応しないという…それを克服するのにだいぶ時間がかかりましたよね。最初にドライバーが打てなくなったときは精神的にも辛くなったから棄権しました。その後2週間ぐらいお休みがありましたけど、練習場に行くのが怖くて…。頑張って練習場に行ってもまっすぐ飛ばないし、どうにもなりませんでした。
克服するための方法は? やはり練習ですか?
もちろん練習は大事です。ただ自分の中の恐怖心を克服しなければならないので、どんな結果であっても試合には出続けていましたね。それはキャディの意向でもあって、「たぶん出続けたほうがいいよ」って彼が言うんです。もちろん予選は通りませんけど。いま考えると、あのとき試合に出ていて良かったなっていう理由はたくさんありますね。
そもそもスランプのきっかけは何だったですか?
私は父がスイングコーチなんですが、そのときはより正確性と、よりボールを飛ばしたいという2つのことを父と話していたんです。その目的のためにスイングを直したらあまりにも自分の中で違和感があって、その違和感でタイミングが合わなくなったし、逆に精度が落ちるし、気持ち悪い中で試合をしていかなければならないので、歯車がかみ合わないし、そういうことが重なって最終的にスランプになってしまったという感じです。ただこれはプロゴルファーになったらつきものの話で、誰もがより上を求めるし、誰もがもっと上手くなりたいと考えているので、変化は必要なんです。ただ変えるタイミングと、どれだけ時間がかかるか、ということをしっかり見据えてから変えないとダメですね。闇雲に変えてしまうと大スランプになることもあるんだなと勉強になったので、そのへんは慎重になりました。
長く活躍している選手は必ずどこかの時点でスイングを改造していますが、そういうリスクが伴うんですね。
タイガー・ウッズ選手とかは別ですよ。彼は物凄くフィジカルがあるし、フィーリングを持っているので、2年かけてスイングチェンジをしたとしても、その中で勝てるんですよ。私はそこまでのフィジカルはないし、どちらかというとフィーリングだけがメインでプレーしているほうなので、そのフィーリングが死んでしまうとゴルフがうまく組み立てられません。だからフィーリングを大事にしながら、微妙なアジャストをしていくということですね。
宮里さんはフィーリングのゴルファーなんですね。
めちゃめちゃフィーリングです。それが私の一番大事な部分ですね。いまはクラブも進化しているし、ボールも進化しているし、ゴルフのトレーニングのやり方とか、とにかく情報が凄いけれども、逆に言えばあまりにも情報が多いので、それが自分に合っているかどうかを見極めるのも大事なんです。進化していくことは凄く大事なんですけど、自分であるためのコアな部分は必ずしも進化する必要がなくて、逆にキープしなくてはいけない。そこはいろんなプロが悩んでいるところだと思います。
自分であり続けることが大事なんですね。ところで宮里さんは自分を客観的にどう評価していますか? たとえば自分のことを他人に説明するとき、どういうゴルファーだと説明しますか?
そうですね、自分のことをよく知っていて、自分の良さや強みをよく知っている選手、だというかもしれませんね。
強みとは?
私の場合、強みはフィーリング、それとメンタルですね。凄く飛ぶわけでもないし、パワフルなゴルフっていう感じでもないんですけど、自分の持ち前であるメンタルの粘り強さと正確性と、スイングテンポで戦う選手ですね。
スイングテンポが武器だと考えているんですね。
ゆったりしたスイングリズムをどんなプレッシャーの中でもキープできるという自信はあります。また「自分のことをよく知っている」というのがメンタルの強みなんですけど、そういうもので自分のゲームを組み立てているといっていいですね。と考えると、私は「精神的にうまくゲーム運びができる選手」じゃないかと思います。
できないことは絶対にやらない感じですか?
ゲーム中には自分が信頼しないことはしないです。こういうショットが打ちたい、とかいろいろイメージはありますけど、それが100%トラストできないのであれば、違う道を行きますね。やはり自分が100%信頼できるショットで打ちます。
そのブレのなさがレベルの高い世界で結果を出していける理由ですね。
紙一重だと思いますよ。ツアーに出ていると、ショットはみな同じレベルだと感じていて、なぜかというと、みんな同じようにグリーンまで行くんですよ。でもゴルフはパットなので、そこでどれだけパットを沈められるかどうかなんですね。パッティングで差が出るし、そこに持っていくまでのゲーム運びだったり、メンタルだったり、技術だったり、いろんなものが複雑に絡み合ってパットが入るか入らないかが決まってくると思います。だから女子の場合、技術ではみんな同じだと思いますね。これが男性だと違ってきて、バッバ・ワトソン選手とか見ると「あ~凄いな。あれだけ自在にボールを打てたら楽しいだろうな」って思いますけど。
お兄さんたちのプレーを見ても同じですか?
「こんなバンカーショット打てたらいいなぁ」とか思いますよ。去年、優作の最終戦を見に行ったんですけど、物凄く遠いバンカーから乗せるんですよ。「このバンカーからグリーンに乗るんだ!」って、すごく羨ましかったですね。でも「あ、グリーンは勝てるな」って思いました(笑)。藍が打ってたら今日9アンダー出てるって(笑)。
パッティングは負けていない、と。
はい。「パッティングは勝ったな」って思いました。

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