ケムシカジカ
分類
スズキ目カジカ亜目ケムシカジカ科ケムシカジカ属
学名
Hemitripterus villosus
別名
トウベツカジカ、カワムキカジカ、スゴエモン、オコゼ、ナベコワシ、ボッケ、オバケ
分布
北海道全域、青森県から対馬東部までの日本海沿岸、青森県から千葉県銚子までの太平洋沿岸、相模湾(稀)に分布。
大きさ
最大で40cmになる。
釣期
沖釣りでは周年釣れ、陸釣りでは産卵のために深場から接岸する晩秋~冬が盛期となるが釣期は短い。
棲んでいる場所
水深10~540mの海底に棲む。ただし、産卵期の晩秋~冬には浅海域に現れる。
生活史
産卵期は晩秋~冬で、噴火湾では10~11月に産卵群が水深10m以浅の浅場に現れる。産卵前に交尾を済ませており、卵が海中に産み出される瞬間に受精する。大粒の沈性粘着卵を基物に産みつけるが、ゴカイ類の棲管塊が産卵基質によく選ばれる。仔稚魚は中層を浮遊し、動物プランクトンを食べて成長する。20mmの稚魚は頭部が丸く体は側扁し、体側は金属光沢がある淡桃色で腹部は銀色。稚魚は浅海域の藻場や転石帯に着底し、成長に伴って深場に移動する。成魚になると、産卵期には浅場へ非産卵期には深場へと明瞭に深浅移動するが、成熟年齢や寿命についてはよく分かっていない。
特徴
大型で食味がよいカジカとして地域的には人気の釣りもの。一見オコゼ類に見えるので警戒心を抱かせるが、毒棘はない。注意すべきは細かくて鋭い歯が並ぶ口で、噛まれると怪我をする。生命力が強く死んだ様に動かなくなっても噛みつくことがある。ケムシカジカ科の代表種で、日本産の同科魚類は本種をあわせても4種のみの小グループである。同科魚類は、体はやや細長くやや側扁し、体表は小瘤状突起に密に覆われ、腹ビレに棘条がなく、尾ビレは丸いなどの特徴をもつ。本種は頭がやや縦扁し、背面に多くの骨質突起があり、頭部、背ビレ棘先端、胸ビレ基部上端、側線上に皮弁がある。同科の他種とは、背ビレ棘条部の基底が長く、背ビレ棘条数が16~19と最も多いことで区別できる。体はオリーブ色がかった灰褐色だが、赤色、黄色、ピンク色など変異に富む。かつてトウベツカジカと呼ばれていたが、北海道当別村(現北斗市)で多く水揚げされていたことにちなむ。
主な釣り方
陸からの釣期は短いが、北海道噴火湾では産卵群が接岸する10~11月に多くの釣り人で岸壁が賑わう。中小物用の投げ釣りタックルで、ドウヅキ2本バリ仕掛けや投げテンビン仕掛けでねらい、エサはイカタンや虫エサ。向こう合わせのおおらかな釣りで、老若男女が楽しめる。近年はルアー釣りが盛んになり、一般的なロックフィッシュタックルにワームとジグヘッドの組み合わせでねらう。
美味しい食べ方
旬は秋~冬とされ、別名カワムキカジカと呼ばれるように、皮製品のように分厚くて堅い皮を剥いでから調理する。きれいな白身だが、産卵期には身がアイスブルーに変色することがある。見た目は悪いが味に影響するものではない。軟らかい白身はやや旨味が薄く、どちらかというと真子や肝の人気が高い。新鮮なものは刺身になるほか、各種の煮物や汁物に向き、鍋は申し分なく旨い。北海道や三陸の郷土料理である「カジカの子の醤油漬け」は、子持ちの雌から卵を取り出してイクラの醤油漬けと同様に加工したもの。濃厚な味とプリプリとした食感は一度食べたら忘れられない。
※この図鑑は、釣り人のために作られています。
そのため魚の名称は標準和名ではなく、釣りの人の間で呼ばれている通称名が使われているものもあります。