釣り人を夢中にさせるアユ

日本の夏を彩る川魚といえばアユです。漢字では「香魚」とも書き、その理由は獲れたばかりのアユからスイカのような甘い香りがすることにあります。

アユはユニークな生態を持っていて、成魚になると川の中の石に生える新鮮なコケを食べます。同時に、良質なコケが生える石はアユ同士で奪い合いになり、他のアユがエサ場に近づいてくると、激しく体当たりして追い払おうとします。甘い香りの元になっているのもこの新鮮なコケです。

夏の川で石に生えた新鮮なコケを食むアユ。ブラシ状の歯を持った口でこそげとるように食べるため、食事中はギラギラと身を翻すようすが見える

アユの「友釣り」は、この性質を利用した日本古来の釣り方。オトリのアユにハリを付け、他のアユがいそうな場所(石の周り)に泳がせていって、体当たりさせたところを釣り上げます。手もとから泳いでいったアユが、にわかに落ち着きをなくす気配がサオを通じて伝わると、次の瞬間にビュンと目印が飛び、掛かったアユが疾走します。その手応えは多くの人を夢中にさせるもので、江戸時代には「村人が仕事をせずアユ掛けばかりするので禁止してほしい」と庄屋から代官所に嘆願書が出されるほどでした。

アユの友釣りは釣りメーカーによる競技会も行われている。今も多くのファンがおり、アユ釣りの中心的な釣り方になっている

注目され始めたルアーによるアユ釣り

そんなアユの友釣りですが、現在の釣りシーンでは課題もあって、代表的なものが「専用の道具が多い」「道具の扱いに慣れるまで時間が掛かりやすい」「結果的に初期投資が掛かる」といった部分になります。

そうした中、特にここ数年、注目されるようになってきたのが「ルアーでアユを釣る」というアプローチです。釣りメーカーも力を入れ始めていて、アユ釣りにこれまで縁がなかった人にも始めやすく、アユをルアーで釣ってよい河川が徐々に増えていることも追い風になっています。

その手軽さから注目されているルアーを使ったアユ釣り。まだ新しい釣り方であることから、「アユルアー」「キャスティングアユ」「アユイング」など複数の呼び方がある
アユのいそうな石を見つけて上流側からねらうのがアユルアーの基本
ルアーが石に当たったらなるべく止めて待つ。すると他のアユがアタックしてくる

日本のアユ釣り河川の多くは、「アユ釣り=友釣り」を前提とした釣り場の運営をしており、ルアーやリールを使ったアユ釣りを禁止しています。しかし、特に若い世代にはルアーフィッシングに親しんでいる人が多いことから、川を管理する漁協の中にも、エリアを区切ってルアーによるアユ釣りを解禁するところが出てきているのです。この動きは、今後も拡大していくと思われます。

実際にアユルアーをやってみた。その感想は?

ここからは、実際にアユルアーを始めてみて、「面白い!」と実感したというルアーアングラーの体験をご紹介します。
※ルアーを使ったアユ釣りは河川により制限があります。出かける前に管轄漁協のHPなどで確認をお願いします。

埼玉県・入間川のアユルアーレポート

埼玉県の入間川はH4から一部区間でアユルアーが可能になり、H5から範囲を拡大。入間漁協管内の約26kmでルアーを使ったアユ釣りができる。釣りをしているのが今回レポートをしてくれた入間漁協組合員の齋藤竜也さん
  • 体験者
    齋藤竜也さん(入間漁協組合員)
  • 普段の釣り
    バス、トラウト、クロダイシーバスなどのルアーフィッシング
  • 釣った場所
    入間川アユルアー可能区間(飯能市小岩井浄水場取水堰より下流)
    入間漁協HP : https://blog.goo.ne.jp/iruma6666
  • 準備したもの
    市販のアユ用ルアー。そのほかのタックルやウエアは日頃から使用しているものを流用した
  • タックル
    ・ロッド:メバル用のスピニングロッド(8フィートの先調子)
    ・リール:スピニングリール(2500番)
    ・ライン:PEライン0.6号
    ・リーダー:フロロカーボン6ポンド(1.5号)
用意したアユ用ルアー各種。サイズは水深や流れの速さによって選び、より深く流れが速い場所では、より大きめのサイズが使いやすい。リアフック部分にアユの友釣りで使用するチラシバリやイカリバリをセットして使う
ハリは釣具店のアユルアーコーナーやアユの友釣り用品コーナーで売っているものを使う。どれがよいかは試行錯誤中
ルアー以外の道具は普段から使用しているものを利用。ランディングネットもトラウト用のもの
実際に釣れたアユとアユ用ルアー
アユルアー後のインタビュー
齋藤 竜也さん
齋藤 竜也さん
  • ー 釣り方は?
    齋藤さん「上流から下流にアユ用ルアーをキャストし(遠投はしない)、ロッドを下げて流れの中にルアーをしっかり沈めたら、リールはあまり巻かず、アユがいそうな石の周りになるべく長くステイさせます。アタリがあれば手応えでわかり、反応がなければ回収して何度かねらい直してみます。すぐには釣れず、時間をかけてねらううちに、アユに追い気が出てヒットするパターンが多かったです。」
  • ー やってみた感想は?
    齋藤さん「想像を超える面白さでした! アユはルアーを完全にライバルと見なしていて、突進して来たところをハリに掛けるのですが、魚の闘争心を逆手に取った釣り方である点や、釣りをする時に魚が好むナワバリ(石)を強く意識する点などは独特です。そこが他の釣りをする時とやはり違います。一方でルアーをステイさせるため、流れを読みながら釣りをする部分は、他のルアーフィッシングにも大いに役立つと感じました。」
  • ー 服装や道具ついて
    齋藤さん「ウエアについては、渓流のトラウトフィッシングのようなウエーダースタイルでもいいと思いますし、タイツにショートパンツを履いて、ゲーター、ウエーディングシューズを組み合わせるウエットスタイルでもいいと思います。タックルも、ルアーをフルキャストする釣りではないので、ロッドはヘビーなものよりティップが繊細なものを使用するのがいいと思いました。そのうえで、ロッドは長めのほうがルアーの操作をしやすく、目安として8フィート以上のものが使いやすいと思います。ランディングネットは、渓流用のもので充分に楽しめました。」

アユルアーの雰囲気や手軽さがよくわかるのではないでしょうか。最近は釣具店にもアユルアーのコーナーを設置するところが増えているので、興味が湧いた方はぜひ気軽に挑戦してみてください。

※このコンテンツは、2023年7月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。