春の到来を告げる魚を「春告魚(はるつげうお)」という。
かつては北海道西岸に産卵で押し寄せるニシンが有名だったが、その資源が激減して以降、メバルが春告魚としてポピュラーになった。

「眼張」と書くだけあり、目が大きくて視力がよいのが特徴だ。
堤防で気軽にねらえる半面、ゲーム性の高いターゲットとして知られ、今では専用のロッドやルアーが数多く登場している。夜になると活発にエサを追い回すが、日中は岩陰や藻場に身を潜めていることから“ロックフィッシュ”と言われ、今日まで続くロックフィッシュブームを巻き起こした。
また、従来は1種と考えられていたが、近年になって背面が黒く(青味がかることもある)胸ビレも黒いクロメバル、全体的に赤みを帯びているアカメバル、やや色の薄いシロメバルの3種に分類された。胸ビレの軟条の数で見分けることもでき、それぞれ16本、15本、17本である。

メバルは20cm前後が多く、大きくても35cmを超えるくらい。こちらはクロメバル
アカメバル
シロメバル

メバルの近縁種にも注目!

ウスメバル
水深100m前後をドウヅキやサビキ仕掛けで釣るのが一般的

北海道南部を北限に、太平洋側では関東周辺まで、日本海側では対馬周辺まで生息するのがウスメバルだ。大きさは最大35cm前後で、メバルよりも身が柔らかく、煮付けにすると非常に美味。メバルよりも深い海域に生息していて沖釣りでねらう。薄い赤褐色の体の背側に、はっきりとした褐色の模様が入り、鮮やかな体色は春を告げる魚に相応しい。近縁種のトゴットメバルに似ているが、ウスメバルはこの模様がやや大きい。

タケノコメバル
磯で専門にねらう場合、強めのタックルと太いラインが必須

東北方面を中心にアングラーの憧れの存在になっているのがタケノコメバルだ。その魅力は大型に育つことで、北陸地方から北のエリアでは50cmオーバーも見られる。当然、大型になればファイトは強く、しかも食べて旨いとくれば人気が高いのはうなずけよう。全体的に黄褐色で濃い褐色の斑点があり、その模様がタケノコの皮やベッコウに見えることからベッコウゾイという地方名を持つ。

ヨロイメバル
浅場の岩礁帯に潜み、小さなルアーでねらうとヒットしやすい

ヨロイメバルは、青森県から九州北部の日本海・東シナ海沿岸、青森県から三重県(福島県を除く)の太平洋岸、瀬戸内海に分布。鎧をまとったような武骨な魚体が目をひくが、最大20cmほどで専門にねらう人は少なく、カサゴ類より動きが鈍いようだ。その魚体や動きはメバルというよりもカサゴに近い。

エゾメバル
場所などにより、体色は灰褐色、緑褐色、赤褐色と個体差が大きい

エゾメバルは名称から分かるように北海道でよく見られるメバルだ。港でよく釣れるのは15cmほど、大きいもので35cmを超える。昔はガヤガヤとぶつかるくらい多く、地方名はガヤ。今でも世界自然遺産の知床半島などは魚影が濃いものの、資源が減少した1990年以降、栽培漁業で回復させる取り組みも行なわれた。

キツネメバル
40cmを優に超える大型のキツネメバル。冬から春は脂が乗り、最高に美味

北海道で人気のキツネメバルは50cm以上になる大型種で沖釣りの対象魚として古くからファンが多い。魚体には灰色、黒色、灰褐色が混じるまだら模様が入り、北海道ではマゾイという地方名で親しまれている。ちょっとややこしいが、北海道のソイ類にはクロソイ、シマソイ、アオゾイ(和名クロメヌケ)がいて、これらの中でマゾイは最も美味という人が少なくない。

このようにメバルとその仲間たちはそれぞれに個性があるが、通常の魚と違ってメスは卵を産むのではなく、卵巣内でふ化した仔魚を出産する卵胎生魚であることで共通する。人間のような独特な繁殖形態を持つことも、春告魚として多くの人に愛されるゆえん?
堤防で、磯で、沖で、春を待ちわびた釣り人にとって、メバルは最高の好敵手だ。

煮付けや塩焼きでいただくのが定番。大型は刺し身が旨い。写真は、キツネメバルの刺し身とエゾメバルの煮付け
煮付けや塩焼きでいただくのが定番。大型は刺し身が旨い。写真は、キツネメバルの刺し身とエゾメバルの煮付け
※このコンテンツは、2018年3月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。