前回は、ナイロン、フロロカーボン、PEラインなど、釣りイトにいくつかの種類があることを紹介した。今回も、引き続き釣りイトの話。なかでも「太さ」にまつわるちょっとディープな知識をご紹介したい。
洋の東西を問わず、魚釣りに使うイトは、細くて丈夫なものほど優れているというのが基本だ。
太いイトは、周りのものから受ける抵抗がそれだけ大きくなる。すると潮や風の影響をより受けて魚のアタリが伝わりにくくなったり、あるいはキャスティングの飛距離が落ちてしまったりする。かといって、強度が足りず切れてしまっては釣りにならない。釣具店に行ったら、適度に細く、それでいて丈夫な釣りイトを探すことになる。
釣りイトの「太さ(細さ)」に関しては、まず一般的なのは「号数」表記だ。1号、1.5号、2号、2.5号……と、数字が大きくなるほど太い。
ナイロン、フロロ、ポリエステルの釣りイトについては、「1号=標準直径0.165mm」という基準規格がある。これらのイトは単糸の化学繊維であり、直接太さを計測することが可能。平成22年に日本釣用品工業会が定めた基準規格では、標準直径は、製品の一点を三方向から計測した平均値と決められている。
号柄 | 標準直径(mm) |
---|---|
0.1 | 0.053 |
0.15 | 0.064 |
0.2 | 0.074 |
0.25 | 0.083 |
0.3 | 0.090 |
0.35 | 0.097 |
0.4 | 0.104 |
0.5 | 0.117 |
0.6 | 0.128 |
0.8 | 0.148 |
1.0 | 0.165 |
1.2 | 0.185 |
号柄 | 標準直径(mm) |
---|---|
1.5 | 0.205 |
1.75 | 0.220 |
2 | 0.235 |
2.25 | 0.248 |
2.5 | 0.260 |
2.75 | 0.274 |
3 | 0.285 |
3.5 | 0.310 |
4 | 0.330 |
5 | 0.370 |
6 | 0.405 |
7 | 0.435 |
号柄 | 標準直径(mm) |
---|---|
8 | 0.470 |
10 | 0.520 |
12 | 0.570 |
14 | 0.620 |
16 | 0.660 |
18 | 0.700 |
20 | 0.740 |
22 | 0.780 |
24 | 0.810 |
26 | 0.840 |
28 | 0.870 |
30 | 0.910 |
号柄 | 標準直径(mm) |
---|---|
40 | 1.050 |
50 | 1.170 |
60 | 1.280 |
70 | 1.390 |
80 | 1.480 |
90 | 1.570 |
100 | 1.660 |
110 | 1.740 |
120 | 1.810 |
150 | 2.030 |
200 | 2.340 |
ここで、表の数値に少し疑問を覚えた人はいないだろうか?
実は号数と太さは単純な比例関係にはなっていない。2号は1号の2倍の太さ、10号は10倍の太さではないのだ。
これには釣りイトの号数表記がたどった歴史も関係している。ナイロンの釣りイトが登場する前、日本ではテグス(天蚕糸)が広く使われていた。
このテグスは、5尺(約150cm)の重さによって、4毛から1分2厘までの14種類に分けられて販売されていた。この場合の毛と厘は、長さでなく質量(重さ)の単位。当時、細いテグスは太さを直接測ることができないため、単位当たりの重さの違いを、太さも示すものとして利用したわけだ。
このうちの1厘のテグスの太さが、およそ0.165mmだった。そこで、日本で初めてナイロンの釣りイトを販売したメーカーは、1厘のテグスの太さに相当するナイロンラインを「1号」と定め、以後、他のメーカーもこの基準に従うことになった。
その後、号数表記が日本のメーカーとユーザーの間で、釣りイトの太さを示す単位として広く定着したのだが、実際はメーカー間での差異も大きく、統一した基準の必要性が高まり、時を経て前出の基準規格が決められることになった。ただし、元となる号数表記が単位当たりの重さによっていたため、長さ(直径)にした時には単純な比例関係にはならなかったのだ。
PEラインの号数表記には、また別の基準がある。日本釣用品工業会が定めたPEラインの基準規格は、「1号=200d(デニール)」というもの。デニールとは長さ9000m当たりの質量をグラム単位をもって表わしたもので、「200d=9000mが200g」である。
号柄 | 標準値(d) |
---|---|
0.1 | 20 |
0.15 | 30 |
0.2 | 40 |
0.25 | 50 |
0.3 | 60 |
0.35 | 70 |
0.4 | 80 |
号柄 | 標準値(d) |
---|---|
0.5 | 100 |
0.6 | 120 |
0.7 | 140 |
0.8 | 160 |
1.0 | 200 |
1.2 | 240 |
1.5 | 300 |
号柄 | 標準値(d) |
---|---|
1.7 | 340 |
2 | 400 |
2.5 | 500 |
3 | 600 |
4 | 800 |
5 | 1000 |
6 | 1200 |
号柄 | 標準値(d) |
---|---|
8 | 1600 |
10 | 2000 |
12 | 2400 |
15 | 3000 |
20 | 4000 |
25 | 5000 |
30 | 6000 |
PEラインは極細の原糸を複数本編む組糸で、なおかつ編む原糸の本数や編む密度にも幅がある。ナイロンやフロロのように真円でなく、原糸の間に細かな隙間があり押せば潰れる構造だ。そのため直径を測るのではなく、テグスと同じように重さが基準になっている。そのうえで、PEラインの1号は、感覚的な太さでいえばナイロンやフロロカーボンの1号と同じくらいになるようになっている(ただし構造が違うので、同じ号数ならPEラインのほうが2.5~3.5倍強い。この点については次回以降に触れる)。
このイトは何号か? 単純な数字の中にも、釣りイトのいろいろな性質や要素が反映されているのだ。
なお、釣りイトを選ぶ際のもう1つの主要な単位に「lb(ポンド)」がある。
こちらについても号数との関係も含めて次の機会にお伝えしたい。