アウトドアで楽しむ釣りには、予期せぬトラブルが付き物だ。ちょっとした不注意から怪我をすることはよくあるし、場合によっては重大な事故も起こり得る。
たとえば釣りバリが指などに刺さるケースはよくある。通常、釣りバリにはカエシと呼ばれる部分があり、刺さったら抜けにくいようにできている。身体や衣類に刺さってしまった場合は、カエシを切るペンチやニッパーがないとなかなか抜けない。特にルアーフィッシングなどのハリはカエシが大きいので、それらの道具は必需品といえるだろう。
ちなみにカエシが体内に入っているなら、刺さった部位にもよるがカエシまで貫通させたほうがよい。そのうえでカエシを切ったほうがスムーズに抜くことができる。だが皮膚というのは意外と硬いもので、いざ刺そうと思うとなかなか刺さらない。そんな時は毛抜きやピンセット、あるいは細い筒状のものなどで、ハリを抜く周辺の皮膚を上からしっかり押さえ付けるとよい。
勝手知ったる釣り場に行くのであっても、いざという時の備えがあると安心だ。腹痛や頭痛の薬、足をくじいた時のためのテーピングテープ、絆創膏などなど……。こういった、いわゆるファーストエイドキットと呼ばれるものがあると、アウトドアの遊びはぐっと安全に楽しめるようになる。
おそらく多くの釣り人は、各種の薬や絆創膏くらいは持っていくだろう。頭痛や腹痛なんかで、貴重な釣りの時間が楽しめないのはもったいない。また、ちょっと指先にトゲが刺さっただけでも釣りの集中力は削がれる。絆創膏や傷薬、消毒薬などもあるとよい。
ハチやアブに刺された際に使いたいのがポイズンリムーバー。注射器のような形状で、ハチなどに刺された時に毒を吸い出す道具だ。秋はハチが活発に活動するので、川や湖で釣りをする人は持参するとよい。またポイズンリムーバーは、ブユなどに刺された時に使っても、痒みの症状が多少和らぐ。
海釣りの場合、ヒレの先端などに毒を持つアイゴ、ゴンズイ、ハオコゼ、ミノカサゴなどに刺されるトラブルもよくある。種類のよく分からない魚には不用意に触らないことが肝心だが、もし刺されたらまずは傷口をよく洗うこと。また、こういった毒魚の毒はタンパク質。タンパク質は熱を加えると壊れるので、42~45℃の湯に30~90分浸すと痛みが弱くなるという。小型のストーブとナベくらいあれば、こんな時でも対処できるだろう。
これらの対処法は、あくまで応急的なもの。釣り場ではこのくらいしかできないだろうが、帰宅してからは病院に行って適切な処置を受けることが大切だ。
ファーストエイドキットは、自分を守るための備えであると同時に、人に迷惑をかけない備えでもある。楽しい釣りの時間をすごすために、少しくらい荷物が増えても、最小限のキットは用意しておきたい。