間もなくGW。待ちに待った大型連休に、どこへ行こうか頭を悩ませる釣り人は多いはず。しかしモンダイなのは、どこへ行っても混雑しそう……ということ。せっかく大自然を満喫し、のんびり釣りをしたいのに、隣の人と肩が触れ合いそうな場所に行っても意味がない。
というわけで、この時期は混雑しない釣り場、渋滞せずに行ける場所を捜したくなるが、はっきりいってそんな都合のいい場所はない。が、ひとつ選択肢があるとしたら、それは「近場」。たとえば都民にとって、いわば「灯台下暗し」で穴場といえる釣り場が、多摩川なのである。
「え~、多摩川なんて……」
そう思う方もいるだろうが、実はここ、ターゲットはかなり豊富。コイやマブナ、ナマズ、アユ、ヤマメ、オイカワなどのほか、河口付近ではシーバスなども釣れる。
今は渓流釣りの盛期だが、数多い多摩川の支流に分け入れば、GWであっても人は少ない。実際、過去にGW真っただ中の某日、多摩川支流に入ったことがあるのだが、川では誰ひとり見かけることはなかったほど。場所さえ選べば、都内にもそんな楽園があるのだ。
そして、なにもそんな上流に行かずとも、実はこの時期親子でねらえるターゲットがいる。多摩下流部のテナガエビだ。子どもでも楽しめる手軽な釣りではあるが、アワセのタイミングは意外と難しく、ベテランでもついつい夢中になってしまう。ちなみにテナガエビは食べてもとても美味しく、シンプルに塩焼きにしたり、空揚げにするとぷりぷりした身は絶品。
もうひとつ、近年注目したいのは遡上魚の増加。かつて水質がよくなかった時代、多摩川ではアユなどの遡上数は激減していた。しかし排水される水がきれいになってゆくと、遡上数は年々増加。ジャンプして堰を越えようとする稚アユの姿が確認できるようになった。その結果、アユを追いかけて下流部に入ってくるスズキも増え、今ではルアーアングラーの数も多くなっているのだ。
また4月から5月の初旬にかけては、時に50cmを超すようなマルタウグイが群れをなして遡上する姿が見られる。ルアーやフライフィッシングでねらう人も多く、一部の釣り人の間では多摩川の春の風物詩として楽しまれているほど。
これらの魚は、実は海と山をつなぐ大切な役目も担っている。アユなどの遡上魚は、海の栄養素を川の上流まで運ぶ。そこで鳥や獣に食べられ、その食べ残しやフンなどは森の栄養になっていく。
また逆に、水源の森が豊かであると、水はきれいになり、極端な渇水や増水も減る。その結果、魚たちにとって棲みやすい環境が保たれ、遡上魚たちも戻ってきやすい川になる。森と川、そこに棲む生きものがつながることで、川は豊かな生態系を保てるようになるのだ。かつては決してきれいとはいえなかった多摩川は、現在生きものたちにとって棲みやすい環境を取り戻しているというわけだ。
というわけでGWにどこかへ行くのなら、多摩川というのはひとつの選択肢。渋滞で時間をつぶすより、近場のドライブで充分楽しめるフィールドなのである。