夕マヅメのラストチャンス
エサ釣り区間で好スポット発見!
八木さんがミスを連発していたころ、佐藤さんはあっけないほど簡単に魚を釣りあげていた。下流のエサ釣り区間で立て続けに2尾をキャッチ。「きっとまだ釣れますよ。あとは八木さん用に残しておきます」と、余裕しゃくしゃくである。
C&R区間では、釣った魚を再放流しなければならない。だから、魚の数が多くて釣りやすいに違いない。一方、エサ釣り区間では魚を持ち帰ってもいいので、たぶんあんまり釣れないはず。そんなふうに考えるのが自然だろう。
ところが、そこに盲点があったようだ。C&R区間の下限から30mほど外れた場所に大きな岩の淵があり、良型のヤマメが溜まっていたにも関わらず、ほとんどのフライマンがサオを出していなかったのだ。
そのおかげで、午後の遅い時間でもヤマメを連発することができたのだろう。
コンビネーションプレーで結果オーライ?
ポイントを解説する佐藤さんの話に、遅れてやってきた八木さんが耳を傾ける。釣れた2尾はいずれも26cm前後。いつもなら充分満足のいく型だが、今回のミッションはあくまで30cmを超える「尺ヤマメ」なのだ――。
きれいなループに導かれて、ドライフライが音もなく水面に落ちる。岩と岩のあいだを巻くゆるやかな渦に乗せるため、ラインメンディングを繰り返す。
そして5投目。「理想的な流れ方になった」と八木さんが思った直後、波紋が生じてフライが消えた。ロッドが弧を描き、腰を落として引きに耐える。魚は水面下でギラリと反転した。いいサイズだ。
と、ここで八木さんが忘れ物に気づいた。「ネットがない! 車に置いてきた!」
そこへ駆けつけた佐藤さん、自分のタモ網を構えて川に入り、ランディングに成功! 連携プレーで手にしたヤマメのサイズは?
八木「29cm? いや、28cmだな……」
佐藤「惜しい! この際、尺ヤマメが釣れたってことにしちゃいましょうよ」
八木「そろそろ編集長から電話かかってくるよね、きっと」
佐藤「めんどくせー。こっちの苦労も知らないでさぁ」
ブツクサいいながら帰り仕度をはじめた2人は、携帯の電源をOFF! よし、これでひと安心だ。
“尺ヤマメ”の余韻に浸りながら、クルマに乗ったらどっと疲れが出てきた。帰りのドライブを思うと、やっぱり快適なCR-Vで来て良かった!
※撮影:浦壮一郎/文:水藤友基
※このコンテンツは、2010年4月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。
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