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PM 4:51
夕マヅメのラストチャンス

夕マヅメのラストチャンス

エサ釣り区間で好スポット発見!

八木さんがミスを連発していたころ、佐藤さんはあっけないほど簡単に魚を釣りあげていた。下流のエサ釣り区間で立て続けに2尾をキャッチ。「きっとまだ釣れますよ。あとは八木さん用に残しておきます」と、余裕しゃくしゃくである。
C&R区間では、釣った魚を再放流しなければならない。だから、魚の数が多くて釣りやすいに違いない。一方、エサ釣り区間では魚を持ち帰ってもいいので、たぶんあんまり釣れないはず。そんなふうに考えるのが自然だろう。
ところが、そこに盲点があったようだ。C&R区間の下限から30mほど外れた場所に大きな岩の淵があり、良型のヤマメが溜まっていたにも関わらず、ほとんどのフライマンがサオを出していなかったのだ。
そのおかげで、午後の遅い時間でもヤマメを連発することができたのだろう。
「どこで釣れたの?」「サトウ岩です」「は?」「あのポイントをサトウ岩と命名します」ってオイ! でも、釣り人が勝手に名付けたポイントが全国各地にあるのも事実です
「どこで釣れたの?」「サトウ岩です」「は?」「あのポイントをサトウ岩と命名します」ってオイ! でも、釣り人が勝手に名付けたポイントが全国各地にあるのも事実です
この感触を味わうまでに何時間かかったことか! どれだけ経験を積んでも、最初の1尾を掛けた時の興奮は変わらない
この感触を味わうまでに何時間かかったことか! どれだけ経験を積んでも、最初の1尾を掛けた時の興奮は変わらない
パーマークのきれいな26cmのヤマメ。標高があるので風景はまだ冬っぽいけど、気分はすっかり「サクラサク」
パーマークのきれいな26cmのヤマメ。標高があるので風景はまだ冬っぽいけど、気分はすっかり「サクラサク」

コンビネーションプレーで結果オーライ?

ポイントを解説する佐藤さんの話に、遅れてやってきた八木さんが耳を傾ける。釣れた2尾はいずれも26cm前後。いつもなら充分満足のいく型だが、今回のミッションはあくまで30cmを超える「尺ヤマメ」なのだ――。
きれいなループに導かれて、ドライフライが音もなく水面に落ちる。岩と岩のあいだを巻くゆるやかな渦に乗せるため、ラインメンディングを繰り返す。
そして5投目。「理想的な流れ方になった」と八木さんが思った直後、波紋が生じてフライが消えた。ロッドが弧を描き、腰を落として引きに耐える。魚は水面下でギラリと反転した。いいサイズだ。
と、ここで八木さんが忘れ物に気づいた。「ネットがない! 車に置いてきた!」
そこへ駆けつけた佐藤さん、自分のタモ網を構えて川に入り、ランディングに成功! 連携プレーで手にしたヤマメのサイズは?
八木「29cm? いや、28cmだな……」
佐藤「惜しい! この際、尺ヤマメが釣れたってことにしちゃいましょうよ」
八木「そろそろ編集長から電話かかってくるよね、きっと」
佐藤「めんどくせー。こっちの苦労も知らないでさぁ」
ブツクサいいながら帰り仕度をはじめた2人は、携帯の電源をOFF! よし、これでひと安心だ。
“尺ヤマメ”の余韻に浸りながら、クルマに乗ったらどっと疲れが出てきた。帰りのドライブを思うと、やっぱり快適なCR-Vで来て良かった!
川の流れにラインが引っぱられると、ドライフライを自然に送り込むことができない。そのため、ねらった場所にキャストするだけでなく、複雑な流れに応じてラインをメンディングする技術も重要である
川の流れにラインが引っぱられると、ドライフライを自然に送り込むことができない。そのため、ねらった場所にキャストするだけでなく、複雑な流れに応じてラインをメンディングする技術も重要である
トランクに忘れたネットを取りに戻って、今度こそ自分でランディング
トランクに忘れたネットを取りに戻って、今度こそ自分でランディング
春の珍事パート2。ランディングネットを忘れたフライマンを、エサ釣り師がバックアップ
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フライフィッシングはキャッチ&リリースが基本。だが、いつもお土産がないと家庭内不和の恐れあり。そこで八木さんは、夏になると海でシイラを釣って晩のオカズを提供するらしい。涙ぐましい努力
フライフィッシングはキャッチ&リリースが基本。だが、いつもお土産がないと家庭内不和の恐れあり。そこで八木さんは、夏になると海でシイラを釣って晩のオカズを提供するらしい。涙ぐましい努力
今回は残念な結果に終わった利根川本流も、ハイシーズンに入れば期待大。昨年は台風の影響が少なく、川が荒れていないからだ。良型ヤマメの当たり年になると予想されている
今回は残念な結果に終わった利根川本流も、ハイシーズンに入れば期待大。昨年は台風の影響が少なく、川が荒れていないからだ。良型ヤマメの当たり年になると予想されている
もうちょっとで30cmなのに、というサイズを「泣き尺」という。この魚は「泣き泣き尺」くらいかな
もうちょっとで30cmなのに、というサイズを「泣き尺」という。この魚は「泣き泣き尺」くらいかな
SEE YOU NEXT MISSION! | 失敗 敗北の一句「尺ヤマメ 姿を見ずに 桜散る」
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※撮影:浦壮一郎/文:水藤友基
※このコンテンツは、2010年4月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。
※環境省レッドリスト等の掲載種については、法令・条例等で捕獲等が規制されている場合があります。必ず各自治体等の定めるルールに従ってください。