STEP :
AM 10:20
海から池へ。見切りの早さで大フィーバー!?

水面上の攻防 ――フライフィッシングの戦略

ハッチはまだか? 水温上昇時のワンチャンス

釣り人は、日の出の前後を「朝マヅメ」と呼ぶ。魚が捕食行動に入るため、釣りやすい時間帯だとされているのだ。だが、早春のヤマメ釣りにはこれが当てはまらない。むしろ水温の上昇する正午前後にチャンスが訪れることが多い。
フライフィッシングひと筋の八木さんは、ドライフライを軸にねらう作戦を立てた。川の水が温かくなると、カワゲラなどの水棲昆虫が浮上して水面でハッチ(ふ化)しはじめ、ヤマメにとって格好のエサになる。この無防備な虫たちに似せて作った毛バリの一種が、ドライフライである。
問題は、ハッチがなければ釣りにならないこと。魚が水面で虫を食べていなければ、ドライフライにも反応しづらいからだ。流れや天候の変化に気を配りつつ、ここぞ! というスポットを絞り込む。そしてひたすらハッチを待つ。アクティブに見えるフライフィッシングにも、時には忍耐が必要なのだ。
フライマンは鳥にも目ざとい。川面に急降下を繰り返していれば、鳥がハッチした虫を食べている証拠だ(写真はハクセキレイ)
フライマンは鳥にも目ざとい。川面に急降下を繰り返していれば、鳥がハッチした虫を食べている証拠だ(写真はハクセキレイ)
ドライフライは表面張力を利用して水面に浮く。ときおりドライシェイク(浮力材)を吹きつけることで、きれいに浮かびやすくなる
ドライフライは表面張力を利用して水面に浮く。ときおりドライシェイク(浮力材)を吹きつけることで、きれいに浮かびやすくなる
フライフィッシング用のタックル。ロッドは8フィートの4番、ドライフライは14番をおもに使用。神流川では7.6フィートの3番ロッド、16番のフライを選んだ
フライフィッシング用のタックル。ロッドは8フィートの4番、ドライフライは14番をおもに使用。神流川では7.6フィートの3番ロッド、16番のフライを選んだ
車を停めた近くで、八木さんがカワゲラの仲間を発見。このような虫がたくさんハッチしていれば、ヤマメもドライフライに反応してくれるはず
車を停めた近くで、八木さんがカワゲラの仲間を発見。このような虫がたくさんハッチしていれば、ヤマメもドライフライに反応してくれるはず
フライ用のリールは長いラインを巻くためのもので、魚を掛けたあとはほとんど使わない。ダイレクトに魚とやりとりする、という点ではエサ釣りと似た面白さがある
フライ用のリールは長いラインを巻くためのもので、魚を掛けたあとはほとんど使わない。ダイレクトに魚とやりとりする、という点ではエサ釣りと似た面白さがある

川を読む ――エサ釣りの戦略

直径0.01ミリ以下の極細イト

八木さんがフライタックルの準備を終えたころ、佐藤さんはすでに川のなかにいた。ただしサオではなく、大きな網を携えて。
ヤマメのエサ釣りは、川虫(水棲昆虫)を採取するところからはじまる。釣具店に行けばミミズやブドウ虫などが売っているけれど、普段から魚が食べ慣れているエサを使うのがいちばん。使う川虫の種類によって釣果に差が出ることもザラだ。
水が冷たいので、お昼ごろがチャンスなのはフライと同じ。ただし川底近くをねらうため、今日の状況ではドライフライよりもやや有利か。
そして今回、0.3号という細いイトを選んだのが佐藤さんのこだわり。イトが細ければ細いほど水の抵抗が減り、魚に違和感を与えずにエサを流せるからだ。「尺ヤマメが掛かったら切られる可能性も高いですが」と笑う佐藤さん。うーん、その可能性はかなり、低いかも。
エサ釣りの道具。本流ザオ7.5m、イトは通しで0.3号(神流川では0.2号)。ハリはカッパ極3~4号、ガン玉B~2Bを使用
エサ釣りの道具。本流ザオ7.5m、イトは通しで0.3号(神流川では0.2号)。ハリはカッパ極3~4号、ガン玉B~2Bを使用
流れの強弱や水深に応じてガン玉の重さを細かく変える。ヤマメは基本的に川底近くの流れにいるため、目の前にエサが届くよう調整する
流れの強弱や水深に応じてガン玉の重さを細かく変える。ヤマメは基本的に川底近くの流れにいるため、目の前にエサが届くよう調整する
水温の低いこの時期は、トロ場や瀬のヒラキ、淵尻のカケアガリなど、あまり流れの速くないポイントを重点的にねらう
水温の低いこの時期は、トロ場のヒラキ、淵尻のカケアガリなど、あまり流れの速くないポイントを重点的にねらう
クロカワムシ(トビケラの幼虫)
クロカワムシ(トビケラの幼虫)
オニチョロ(カワゲラの幼虫)
オニチョロ(カワゲラの幼虫)
キンバク(カワゲラの幼虫)
キンバク(カワゲラの幼虫)
ヒラタ(ヒラタゲロウの幼虫)
ヒラタ(ヒラタゲロウの幼虫)
川底をさらって採取したいろいろな川虫。クロカワムシはハリにチョン掛けして使うと、水中でクネクネと動いてヤマメにアピールする。そのほかの種類は、お尻から刺して足の横からハリ先を出すと生きたまま使える
※撮影:浦壮一郎/文:水藤友基
※このコンテンツは、2010年4月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。
※環境省レッドリスト等の掲載種については、法令・条例等で捕獲等が規制されている場合があります。必ず各自治体等の定めるルールに従ってください。