STEP :
AM 5:36
ようやく温もりはじめた川で、ヤマメ釣りのシーズンが開幕する!
寒々しい風景がサクラで埋め尽くされると、新しい何かが、はじまるような気がする。この季節を誰よりも強く待ち焦がれていたのは、渓流釣りファンに違いない。なにしろ半年もの間じっとガマンしてきたのだから。
&
八木健介さん
八木健介さん
自作のフライ&愛妻弁当持参で尺ヤマメに挑む35歳。
月刊誌『フライフィッシャー』副編集長の肩書きにかけて、ノーフィッシュは許されない!
佐藤俊輔さん
佐藤俊輔さん
渓流釣りをはじめて約10年、しかし利根川水系では魚を釣ったことがない29歳。これまでに4回釣行したが、成果はゼロ。5度目の正直なるか?
ありえない「社員研修」のはじまり

ありえない「社員研修」のはじまり

編集長のグッドアイデア!?

春は、はじまりの季節だ。何かフレッシュなことをはじめたい――。
7分咲きのサクラを眺めながら、月刊『つり人』の編集長はぼんやりと考えていた。
新人でも入ってくればシゴキ甲斐もあるのだが、新年度になっても編集部にいるのは代わりばえしない面々ばかり。
ヤマメ釣り、行きたいなぁ」誰かがポツリとつぶやいた。釣り雑誌の編集なんて、趣味と実益を兼ねた楽しい仕事と思われがちだが、実際はあまり釣りに行く暇がない。
年季のわりに、意外とヘタクソだったりする。
そうだ! なかなか釣りの腕が上がらない編集部員をイチから鍛え直す「社員研修」ってのはどうだろう?

難易度Aのムチャ振りミッション

思い立ったら即行動、が編集者の鉄則である。編集長はさっそく研修内容を検討しはじめた。ハードルは高いほうがイジメ甲斐があるから、ほとんど不可能に近い、ムチャクチャな企画で……よし、これだ!
「満開のサクラの下で尺ヤマメを釣ってこい! もちろん期限は1日だけ!」
渓流ファンにとって、尺=30cmを超えるヤマメは憧れの存在だ。足繁く釣り場に通っても、年間で2~3尾釣れたら上出来である。それを、たった1日で釣ってこいなんて、無理難題もはなはだしい。
この困難なミッションを命じられたのは、編集部員の八木さん&佐藤さん。この日、たまたま編集長の目の前を通りかかったのが運の尽きであった……。
厳密にいうと、1尺は30.3cm。だから30cmのヤマメは「尺ヤマメ」ではない……という議論があるとかないとか
厳密にいうと、1尺は30.3cm。だから30cmのヤマメは「尺ヤマメ」ではない……という議論があるとかないとか
季節の移ろいを実感できるのも釣りの醍醐味だ。ただし、サクラの時期によく釣れる魚というのは案外少ない
季節の移ろいを実感できるのも釣りの醍醐味だ。ただし、サクラの時期によく釣れる魚というのは案外少ない
季節の移ろいを実感できるのも釣りの醍醐味だ。ただし、サクラの時期によく釣れる魚というのは案外少ない

利根川は冬に逆戻り?

北関東屈指のヤマメ釣り場へ

4月上旬の朝、八木さんと佐藤さんの2人は関越自動車道を北へ走っていた。
サクラ前線はすでに首都圏を通過しつつある。
このタイミングで「満開のサクラ」に出会うためには、北関東方面へ向かうのが最善だろう。
快適なドライブで2人が目指したのは、日本一の流域面積を誇る利根川。中流域にあたる群馬県の前橋周辺が今回の釣り場である。強い流れに育まれた大型のヤマメを求めて、多くの釣り人が訪れるエリアだ。中流域とはいえ川幅は広く、エサ釣りやルアー釣り、フライフィッシングなど、多彩な攻め方ができる。都心から片道約2時間というアクセスのよさも人気の理由だろう。
ヤマメ釣りは3月の解禁日から9月20日まで楽しめる(※1)。

※1 ヤマメの禁漁期間は河川やエリアごとに異なる。3月1日~9月30日の所が多いが、釣具店などで必ず確認しよう
春の珍事? フライマンとエサ釣り師が一緒に釣りに行くことは稀だろう。足をひっぱりあわなければいいのだが
春の珍事? フライマンとエサ釣り師が一緒に釣りに行くことは稀だろう。足をひっぱりあわなければいいのだが
本日の釣り場
遊漁券について
河川でヤマメなどを釣る際は、漁協が発行する「遊漁券」を購入する必要がある。釣具店や、地域によってはコンビニでも購入可能。現場で監視員から買ってもいいが割高になる。よく通う釣り場なら「1日券」よりもワンシーズン使える「年券」がおすすめだ
遊漁券について

雪代による増水、敗北の予感

春の利根川はダム放水による雪代の影響を受けやすい。この日は30cmほど増水しており、朝の水温は5℃だった
春の利根川はダム放水による雪代の影響を受けやすい。この日は30cmほど増水しており、朝の水温は5℃だった
高速道路を降りて、気温計を見た八木さんの表情が曇った。たったの3℃しかない。
実のところ、利根川のヤマメ釣りは6月前後が最盛期。4月ではいささか早すぎるのだ。活性が鈍くてあまりエサを追わないので、尺ヤマメどころか、1尾釣れるかどうかの難しい状況である。
そしてさらに、悪条件が重なる。
橋を渡る2人が目にしたのは、明らかに増水した利根川の姿だった。
利根川は上流にダムがあり、そこからの放水の有無によって釣果が大きく左右される。特に、この時期は「雪代(ゆきしろ)」と呼ばれる雪解け水がダムに流れ込むため、放水後は水温が低下して釣りづらくなるのだ。「春の利根川は渇水したほうが釣れる」というのが定説だとか。そうとわかっていても、釣るっきゃないのだが。
※撮影:浦壮一郎/文:水藤友基
※このコンテンツは、2010年4月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。