山根 和明 氏
月刊『つり人』編集長
山根 和明 氏
1994年つり人社入社。2006年より月刊『つり人』編集長を務める。渓流釣り、アユ釣り、磯釣り、沖釣り、コイ釣りなどなど四季折々の釣りを楽しむ。コイ釣りニュースタイルマガジン『Carp Fishing』、渓流釣り専門誌『渓流』、トラウトルアー専門誌『鱒の森』編集長を兼務。

秋冬の超人気ターゲット

秋から冬にかけては、釣って楽しく食べて美味しい魚が、続々と釣りの好機に突入します。中でも多くのファンを魅了するのがカワハギです。カワハギは「エサ取り名人」の異名を持ち、おちょぼ口を巧みに使い、ハリに刺さったエサを、きれいにかすめ取ります。イトやサオ先にほとんど変化が見られないのに、仕掛けを回収するとエサがきれいになくなっていることがよくあります。そこで釣り人はタダ食いさせないよう、あの手この手を用い、カワハギとの知恵比べに熱くなってしまうというわけです。

もうひとつ、釣り人が夢中になる理由が、その食味。ほどよく脂が乗った上品な白身は時にフグよりも旨いと評され、水温が下がるにつれ肥大化する肝はフォアグラに勝るともいわれます。また、魚料理につきまとう厄介なウロコ取りをすることなく手で簡単に皮が剥げ、キッチンをウロコで汚すことなくさばけるのも人気の理由かもしれません。
水温が下がるにつれて肝が肥大化するカワハギ。秋から冬にかけての超人気ターゲット
水温が下がるにつれて肝が肥大化するカワハギ。秋から冬にかけての超人気ターゲット
カワハギは手軽に楽しめるとあって女性にも人気
カワハギは手軽に楽しめるとあって女性にも人気

船釣りビギナーにオススメのエリア

水温が高い秋は堤防や磯などのオカッパリからもカワハギをねらえますが、魚との駆け引きをより楽しめるのは船釣りです。とはいえ、普通の人にとっては、乗船というだけでハードルが上がります。船に乗ることを躊躇させる要因は、船酔いと装備の心配が大部分を占めるのではないでしょうか。装備に関して、カワハギ釣りのメッカである東京湾、相模湾には、ライフジャケットやタックルがレンタルでき、仕掛けやオモリ、エサを常備している船宿が多く、その気になればクーラーボックスさえ持参すれば大丈夫です。
丸十丸の名物船長、小菅 裕二さん。とても気さくでビギナーには丁寧に教えてくれる
丸十丸の名物船長、小菅 裕二さん。とても気さくでビギナーには丁寧に教えてくれる
丸十丸をはじめ、相模湾や東京湾でカワハギを看板に掲げている船宿には、レンタルタックルやエサ、仕掛けを常備しているところが多い
丸十丸をはじめ、相模湾や東京湾でカワハギを看板に掲げている船宿には、レンタルタックルやエサ、仕掛けを常備しているところが多い
船酔いは個人差があるので一概にはいえませんが、比較的波が穏やかで、ポイントまでの行程時間も短い相模湾の小網代はビギナーにオススメできます。特に湾内は波の影響を受けづらく、湖のように波ひとつないような日もあります。

カワハギ釣りの基本

基本的な仕掛けはドウヅキ3本バリ仕掛け。エサはアサリ。アサリを装餌し、船長から投入合図が出たら、素早く仕掛けを投入。仕掛け着底後、すぐにイトを取ってサオ先を大きくあおり、底から2~3mオモリを上げます。着底した仕掛けをそのままにしていると、あっという間にエサが取られてしまいます。
底から仕掛けを上げたら、サオを小刻みに揺らしながらサオを下げて、オモリを着底させます。そして、5秒ほどポーズ。この時に、ブルブルとサオ先を小さく揺らすアタリが出ることが多く、その場合は、サオを静かに聞き上げます。魚がハリ掛かりすると、サオ先がグイグイ引き込まれるので、一定のスピードでリールを巻き上げます。カワハギならカンカン、カンカン、という金属的な引きをするので、慣れてくると引き味だけでカワハギかどうかが分かります。
5秒ほどポーズして反応がなかった場合、もう一度、仕掛けを2mほど底から切って、サオ先を揺らしながら落とし込んでアタリを5秒ほど待ちます。これの繰り返しが基本になりますが、エサ取りが多い時の「タタキ釣り」、食い渋り時の「ハワセ釣り」、魚が浮いている時の「宙釣り」など、その時の状況に応じたさまざまなテクニックがあります。
仕掛けが着底したらサオをあおって一旦底を切り、サオ先を小刻みに揺らしながら下げて着底させます
仕掛けが着底したらサオをあおって一旦底を切り、サオ先を小刻みに揺らしながら下げて着底させます
ベテランの釣り座。サオ受けにカウンターがあり、これで数をカウントします。エサのアサリは小出しにして船べりに置き、それ以外はクーラーボックスに
ベテランの釣り座。サオ受けにカウンターがあり、これで数をカウントします。エサのアサリは小出しにして船べりに置き、それ以外はクーラーボックスに
ベテランはこれらのテクニックを巧みに使い分け、次々と本命をゲットしていきます。隣で釣っているのに、ダブルスコア、トリプルスコアになることも珍しくありません。カワハギ釣りはキャリアやウデの差が最も顕著に出る釣りのひとつであり、釣り人 vs 魚に加えて、釣り人 vs 釣り人という競技性が、この釣りをより面白くさせているともいえます。 もっとも、多くの釣り方を身に付けているからといって、いつでも大釣りできるとはかぎりません。知識や技術が裏目に出てしまうこともしばしば。基本を忠実に守った人がよく釣るということも珍しくないので、最初のうちはあれこれ考えずに、基本を身に付けることが肝要です。
丸十丸のおかみさんも大のカワハギフリーク
丸十丸のおかみさんも大のカワハギフリーク
くせのない上品な白身は、刺身でもよし、焼いてもよし、煮てもよし、揚げてもよし。空揚げは特にお子さんにオススメ
くせのない上品な白身は、刺身でもよし、焼いてもよし、煮てもよし、揚げてもよし。空揚げは特にお子さんにオススメ
刺身と肝を和えた肝和え。カワハギ料理といえば、なんといってもコレ。一度食べたら病みつきになること請け合いです
刺身と肝を和えた肝和え。カワハギ料理といえば、なんといってもコレ。一度食べたら病みつきになること請け合いです
今回ご紹介したエリア
神奈川県/相模湾・小網代出船のカワハギ釣りMAP
アクセス
横浜横須賀道路・衣笠ICから三浦縦貫道へ。終点の林ICを降り、R134を左折し三崎方面へ。三崎警察署前を右折して突き当たりを左折。県道216号を右折。小網代バス停を過ぎたら看板に従って右の路地に入り丸十丸へ。
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※このコンテンツは2014年10月の情報をもとに作成しております。