山根 和明 氏
月刊『つり人』編集長
山根 和明 氏
1994年つり人社入社。2006年より月刊『つり人』編集長を務める。渓流釣り、アユ釣り、磯釣り、沖釣り、コイ釣りなどなど四季折々の釣りを楽しむ。コイ釣りニュースタイルマガジン『Carp Fishing』、渓流釣り専門誌『渓流』、トラウトルアー専門誌『鱒の森』編集長を兼務。

セミパターンで水面が炸裂

初夏、北海道の多くの渓流がベストシーズンを迎えますが、今回はオホーツク地方の人気河川、渚滑川を紹介したいと思います。
渚滑川は20km以上にも及ぶ長大なキャッチ&リリース(C&R)区間が設置されていることでも知られており、周辺河川の中でも特にレインボートラウト(ニジマス)の数が多く、再生産を繰り返したきれいな魚たちが釣り人を楽しませてくれます。

そんなフィールドの初夏の楽しみ方として、おすすめなのが表層の釣り。水面に落ちたセミやバッタはニジマスたちの格好のエサ。ルアー、フライでもそんな陸生昆虫を模したパターンでヒットに持ちこめるのが、この季節の魅力です。水面を流れるセミパターンに派手な飛沫をあげて飛びかかる様を目にすれば、きっと初めての人でも北海道のレインボートラウトに熱くなってしまうはず。
7月に入れば、セミが川を流れるようすがよく見られる。魚たちにとっては、さもご馳走に違いない
7月に入れば、セミが川を流れるようすがよく見られる。魚たちにとっては、さもご馳走に違いない
放流活動が盛んな渚滑川には、再生産を繰り返した美しい魚も多い。6月下旬からがドライフライなど表層の釣りの本格シーズンとなる
放流活動が盛んな渚滑川には、再生産を繰り返した美しい魚も多い。6月下旬からがドライフライなど表層の釣りの本格シーズンとなる
原生林の中を流れるフィールド。フラットな流れでも、岸際のカケアガリやボトムにできたスリットなど、細かいポイントは多い
原生林の中を流れるフィールド。フラットな流れでも、岸際のカケアガリやボトムにできたスリットなど、細かいポイントは多い
ポイントをどんどん移動しながら魚の反応を探っていくブラインドフィッシングが基本になりますが、時には流れに定位している魚を目視できることもあり、サイトフィッシングも楽しめます。また、岩盤の際や川底にスリットが入っているポイントなど、確実に魚が付いていると思われる流れは、じっくりとねらってみたいところ。1、2投で反応がなくても、10投ほどキャストした後にいきなり水面が割れる……
といったことも珍しくないので、ここぞという場所では納得するまで探ってみることをおすすめします。
レインボートラウトのアベレージは40cm前後。50cmオーバーの大ものの実績も高いのですが、なかには60cmを超える魚の記録も…。
そしてそんな初夏の釣りを盛り上げてくれるのが、周囲に広がる景色の美しさです。渚滑川は全体的に落差の少ないフラットな渓相が特徴ですが、川岸ぎりぎりまで迫る豊かな河畔林と、ゆるやかに蛇行する流れは、やはり本州ではなかなか目にできない景観。釣りができるだけで満足してしまいそうですが、そんな場所でエキサイティングな釣りが楽しめるのはさすがです。

ただし、釣りをするうえで気をつけなければならないことも。渚滑川流域はほぼすべての区間が、ヒグマの生息エリアです。川に入る際には鈴や撃退スプレーなどのクマ対策は万全にしておくことが大切です。ちなみに、おもな入渓点にはC&R区間を示す看板が設置されており、駐車スペースも確保されています。
渚滑川の下流部。開放感のある広大な景色が広がる
渚滑川の下流部。開放感のある広大な景色が広がる
川に入る時には、クマ対策を万全に。ペンションに泊まりながら釣りをする場合は、航空機で運べないクマスプレーなどを貸してくれる場合もある
川に入る時には、クマ対策を万全に。ペンションに泊まりながら釣りをする場合は、航空機で運べないクマスプレーなどを貸してくれる場合もある

東京からも意外と近い、オホーツクエリア

そんな豊かな自然の中で釣りが満喫できる渚滑川ですが、羽田から直行便が出ているオホーツク紋別空港を利用すれば、約1時間30分の道のり。さらに空港でレンタカーを借りれば、渚滑川までは1時間弱です。つまり東京を起点に考えた場合、北関東の川へ釣りに行くのと、ほとんど移動時間が変わらないのです。一度訪れてみれば、驚くほど気軽にオホーツクの釣りを満喫できるはずです。

今後さらに季節が移ると9月上旬にはカラフトマス、中旬からはシロザケが姿を見せ始めます。そんなタイミングに釣行できれば、波の穏やかなオホーツク海のサーフでサーモンフィッシングに挑戦してみるのもおすすめです。朝夕はサーフ、日中は渓流のダブルヘッダーも面白いですよ。
空港を出発してから1時間30分後にヒットした良型のレインボー。関東方面から毎年通う人が多いのもうなずける
空港を出発してから1時間30分後にヒットした良型のレインボー。関東方面から毎年通う人が多いのもうなずける
渚滑川からも近い紋別港。オホーツク海の幸が集まる漁業基地。特にカニは全国的に有名
渚滑川からも近い紋別港。オホーツク海の幸が集まる漁業基地。特にカニは全国的に有名
また、空港のある紋別市はオホーツク海の幸が味わえる町としても知られています。特にビジターにも人気なのが紋別港すぐ近くにある「まるとみ」。干物などのお土産物も揃うほか、横には食堂もあり、季節の魚介類を味わえます。釣行のついでに立ち寄ってみては。
今回ご紹介したエリア
北海道/渚滑川のニジマスMAP
アクセス
オホーツク紋別空港を出たら、R238を紋別市街地方面に北上。道なりに進み、R273に合流すると渚滑川沿いの道になる。
※このコンテンツは2014年7月の情報をもとに作成しております。