八木 健介 氏
月刊『FlyFisher』編集長
八木 健介 氏
編集アルバイトとして2001年から月刊『FlyFisher』の製作に参加。その後、副編集長を経て2010年10月から編集長を務める。休日の釣りは専らフライフィッシング。近所のコイ釣りから、渓流のヤマメ・イワナ釣り、本流のニジマス釣りと、フィールドに合わせた旬の対象魚を追う。

広がる秋の釣り場

ここ数年、本州を中心に「冬期ニジマス釣り場」がすっかり定着している。冬期ニジマス釣り場とは、ひとことでいうと、全国的に9月や10月で禁漁となるヤマメイワナ釣りが終わったあと、対象魚をニジマスに限定して、秋から冬の間もエサ、ルアー、そしてフライの釣りが楽しめるように一定の区間とルールを設けた川のことだ。つまりシーズンオフの間も、変わらずフライフィッシングが楽しめてしまうフィールドということになる。
そもそも渓流釣りの禁漁が秋に定められているのは、ヤマメやイワナといった魚の産卵期がこの時期にあたることが大きな理由。そして、ヤマメやイワナは川の中でも最上流の本流やその支流(あるいはもっと小さな沢)で産卵する。その点、冬期ニジマス釣り場はずっと下流のヤマメやイワナの産卵とは無関係な中流域もしくは下流域に設置され、そこに春に産卵するのが一般的なニジマスを季節限定で放す。それによって、「渓流釣りのオフシーズンにも楽しく釣りができるように」しているのだ。魚の保護というルールは守りながら、柔軟に釣り場を活用するという発想である。
重量感のあるニジマスのみが放流されている吾妻川。これからの年末年始、渓流ではなかなか味わえない大ものの感触が楽しめる
重量感のあるニジマスのみが放流されている吾妻川。これからの年末年始、渓流ではなかなか味わえない大ものの感触が楽しめる
現在、こうした試みが成功しているのが、静岡県の天竜川、埼玉県の荒川、群馬県の吾妻川、栃木県の箒川などだ。これまでであれば本州では考えられなかった「紅葉の中でのフライフィッシング」が楽しめる場所もあり、2011年からは長野県の千曲川でも同様の試みが開始されることになった。

めざすはニュージーランド!

今回、それらの中でもおすすめの釣り場として紹介するのが、群馬県の「吾妻川(あがつまがわ)」である。坂東太郎と称される大河・利根川の支流の1つで、2004年から毎シーズン、秋になると地元の阪東漁協が中心となって、「阪東・子持(ばんどう・こもち)冬期釣り場」が運営されている。2011年度もすでに10/8にオープン。着々と釣果が聞かれ始めている。
日の差す時間帯に水面を注意深くのぞくと、大型のニジマスがゆったりと定位しているのが見つけられる。サイトフィッシングは1尾を見つけてから釣るまでの、すべてのプロセスが楽しめる釣り。必需品となる偏光グラスを必ず持参し、焦らずじっくり魚を捜そう
日の差す時間帯に水面を注意深くのぞくと、大型のニジマスがゆったりと定位しているのが見つけられる。サイトフィッシングは1尾を見つけてから釣るまでの、すべてのプロセスが楽しめる釣り。必需品となる偏光グラスを必ず持参し、焦らずじっくり魚を捜そう
全長2.5kmにおよぶ釣り場は、ニジマスの放流を定期的に行うという以外、自然の流れそのまま。水量は豊富で透明度は高く、区間内には大小の石が入っており、プール、荒瀬、早瀬と多彩なポイントが続く。そして、ニジマスは冷水で養殖された大型魚のみが放流されており、区間の半分を占める「キャッチ&リリースエリア」では、釣り方もフライ、ルアー、テンカラに限定されているため、シーズン中のいつ訪れても魚影が多い。
大雨による濁りが入らない限り、魚の姿を見つけながら釣る、いわゆるサイトフィッシングも可能であり、ダイナミックな釣りが手軽に楽しめる場所として着実にファンが増えている。釣り場のキャッチフレーズはずばり、「めざすは日本のニュージーランド」だ。

ニンフを送り込む

コンディションのよいニジマスはフライにも積極的に反応する。小春日和のような温かい日に水生昆虫のハッチがあるときは、広いプールでライズが起きることが多いので、その時は4番ロッドや5番ロッドを使ってドライフライでねらうのが楽しいだろう。

そして、ライズがない時には、水中のニジマスの鼻先にニンフを送り込む釣り方が効果的だ。特に小さなサイズのフェザントテイルなどを使うと、ルアーにスレた大型でもあっさり食いつくことが多く、フライフィッシングの独壇場となる。この際はある程度長さのある5番もしくは6番のロッドがおすすめだ。
魚のアベレージサイズは50cmほど。ロッドは5~6番のものがおすすめだ。ドライフライだけなら4番程度でも楽しめる
魚のアベレージサイズは50cmほど。ロッドは5~6番のものがおすすめだ。ドライフライだけなら4番程度でも楽しめる
ニンフで釣る時は、アウトリガーと呼ばれる、ねらうポイントの横にポジションをとり、ロッドを上空に掲げてフライを沈めながら送り込む方法が基本。大きな岩の沈んでいる横や、浅い場所が深くなる部分などをねらってみよう
ニンフで釣る時は、アウトリガーと呼ばれる、ねらうポイントの横にポジションをとり、ロッドを上空に掲げてフライを沈めながら送り込む方法が基本。大きな岩の沈んでいる横や、浅い場所が深くなる部分などをねらってみよう
ニンフを使う時は、水中が見えない足場の低い場所であればアウトリガースタイルかルースニングで、また、この釣り場にいくつかある足場の高い場所であれば、魚を目視したうえでのアウトリガースタイルでねらってみよう。ラインはドライフライの時もニンフの時もフローティングラインがあればOK。その先にテーパーリーダーとティペットを接続し、ニンフを結ぶ場合はスプリットショット(いわゆるガン玉)も使って、フライを充分な深さまで沈めてやる。ティペットの太さは魚のサイズが大きいので、ギリギリ細くして5Xまでにしておきたい。
ドライフライのほか、沈めて使うニンフ(下段)やウーリーバガー(最上段)があると有利。ニンフはスプリットショット(ガン玉)と組み合わせて使う
ドライフライのほか、沈めて使うニンフ(下段)やウーリーバガー(最上段)があると有利。ニンフはスプリットショット(ガン玉)と組み合わせて使う
吾妻川は近くに日帰り温泉施設もあり、少し足を伸ばせば有名な伊香保温泉も充分に立ち寄れる距離。秋の休日、大もの相手にじっくり釣りを楽しむには、うってつけの釣り場といえる。入漁料金は1日券のみで3000円(現場売りは4000円)。受付の管理棟は午前8:00~午後5:00までのオープンだ。これからの渓流釣りオフシーズン、交通の便もよい冬期ニジマス釣り場で、大型魚の引きをぜひ堪能していただきたい。
今回ご紹介したエリア
群馬県/吾妻川のニジマス釣りMAP
アクセス
関越自動車道・渋川伊香保 ICを新潟、みなかみ方面に降りてR17号へ。新潟、みなかみ、沼田、草津中之条方面へ走り、平成20年7月開通のバイパスで草津中之条方面を目差し、子持道の駅の次の信号を左折してR353に出ると、3㎞ほどで北群馬信用金庫がある。その付近に旗と左折矢印があるので左折すると、200mほどで釜ヶ渕管理棟に到着する。
※このコンテンツは2011年10月の情報をもとに作成しております。
※環境省レッドリスト等の掲載種については、法令・条例等で捕獲等が規制されている場合があります。必ず各自治体等の定めるルールに従ってください。