天野 三三雄 氏
月刊『Basser』編集長
天野 三三雄 氏
大学在学中に季刊『Basser』の編集アルバイトとして参加。その後、スポーツ紙釣り欄担当を経てつり人社入社。月刊『つり人』副編集長を経て、2009年より月刊『Basser』編集長を務める。『アオリイカ地獄』、『ロックフィッシュ地獄』、『シーバス地獄』などソルト系ムックの編集長も兼務。釣りはルアー全般のほかハゼ、カワハギ、カレイなど江戸前の釣りを好む。

ひとつテンヤの聖地から生まれた新釣法

ここ数年、沖釣りの世界でもっとも人気を集めているのが、千葉県大原発祥のひとつテンヤのマダイ釣りだ。もともと大原は寄せエサを使わないテンヤ釣りが盛んな地域だったが、食わせの豆テンヤを沈ませるための鋳込みテンビンやビショマと呼ばれる噛み潰しオモリの連結が必要だった。
ソフトベイトでマダイというニュージャンル。新たなソルトウォーターゲームとして注目を集めそうだ
ソフトベイトでマダイというニュージャンル。新たなソルトウォーターゲームとして注目を集めそうだ
それを豆テンヤのみで釣るのがひとつテンヤ釣法であり、テンビンや中オモリを使わないことから、軽いテンヤひとつだけの重さで沈ませるためにスピニングタックルを使う。ベイトリールからスピニングリールになったことでドラッグ性能が格段に向上。それまで1号前後だったPEラインが0.5号前後にしても切れなくなった。ラインが細いため軽いテンヤでも深場に落とせ、途中にテンビンがないためアタリがダイレクトに伝わり、タテ方向への誘いが主だったテンヤ釣りが、潮に乗せて送り込むことでヨコ方向にも探れるなどいいこと尽くめ。こうしてマダイ革命ともいうべきひとつテンヤが誕生。それまでキャスティングゲーム以外に沖釣りではほとんど使われることのなかったスピニングタックルが脚光を浴びたのである。

探る面白さがプラス!

ひとつテンヤ釣りの面白さに早くからハマっていたのが国内バスフィッシングの第一人者として知られる田辺哲男さんだ。そしてここ数年、密かに田辺さんが楽しんでいるのがソフトベイトによるひとつテンヤ釣法である。

マダイのルアー釣りにはこれまでも鯛ラバやインチクなどの漁具系ルアーが存在したが、いずれもバーチカルな巻き物。マダイがタテ方向の動きに反応しないとき、ただ落として巻くだけでは攻略しきれないことも多々ある。対してひとつテンヤの釣りはシャクってアピールさせることもできれば、その後のフォールで追わせることも漂わせたりタナを刻んだり潮に乗せてステージを広げることもできゲーム性に富んでいる。
「エコギア アクア スイムシュリンプ4in」を「オーバルテンヤ」に装着したところ。エビエサも装着できる設計になっている
「エコギア アクア スイムシュリンプ4in」を「オーバルテンヤ」に装着したところ。エビエサも装着できる設計になっている
この釣趣はそのままにソフトベイトによるルアーゲームを楽しむために開発されたのが「エコギア アクア スイムシュリンプ4in」である。パッケージにデカデカと"海老"と書かれているとおり、目指したのはテンヤに装着されたエビエサであり、テンヤやラバージグに装着したうえでのベストバランスを追及したという変わり種ルアー。さらにはフットボールジグの発展系ともいえる「オーバルテンヤ」を開発。
ラバージグにセットしたスイムシュリンプにヒット。市販のひとつテンヤで挑戦するもよし、ラバージグにアシストフックを付けて挑むもよし
ラバージグにセットしたスイムシュリンプにヒット。市販のひとつテンヤで挑戦するもよし、ラバージグにアシストフックを付けて挑むもよし
田辺さんが足しげく通う大原港出船のマダイ船では、このオーバルテンヤやラバージグとスイムシュリンプを組み合わせて上々の結果が出ており、マダイの食いは本物のエビと比べても遜色なしという。オーバルテンヤはソフトベイト専用というわけではなく、エビエサも装着できるテンヤ型ジグヘッドであり、田辺さん自身もエビエサとソフトベイトをその日その時の状況で使い分けているが、やはり今回はソフトベイトの釣りに着目したい。
たとえば、同じようにここ数年のブームといえたアイナメやソイといった大型根魚テキサスリグの釣り。この釣りが人気を博した要因は「投げる、探る、アワせる」といった釣趣にあると思う。ただ釣るだけならドウヅキ仕掛けでもよいが、どうせなら「投げる、探る、アワせる」といった要素が詰まったテキサスリグの釣りのほうが面白いと考えたアングラーが多かった。同様のことが今回のソフトベイトを使ったひとつテンヤにもいえるのではないだろうか。

ドラッグを駆使してマダイとファイト!

周年マダイをねらう大原の船は、概ね早朝出船の午前船と夕方帰着の午後船がある。漁礁などのピンポイントねらいではエンジン流しもするが、基本的にはパラシュートアンカーを使ってゆっくり広範囲を流す。

水深や潮の速さに応じて、通常は3号、5号、7号のテンヤを使い分けるが、水温の高い初夏から初秋は浅場をねらうことが多く、軽めのテンヤの出番が増える。また、水深が浅くて底取りも容易なため、ひとつテンヤ入門にも最適な季節といえる。
記者も市販のひとつテンヤとスイムシュリンプの組み合わせで本命をキャッチ
記者も市販のひとつテンヤとスイムシュリンプの組み合わせで本命をキャッチ
釣り方もいたってシンプル。通常は真下に仕掛けを落とし、底付近でリフト&フォール。潮が速い時は潮上に軽くキャストして潮下へ探るとよい。アタリはフォール中、あるいはリフトした直後に来ることが多く、それはエビエサを使ったひとつテンヤ釣りとまるで変わらない。ついばむようなショートバイトを察知したら、すかさずパワフルにアワせる。フッキングに成功すると同時に「キュンキュン」と心地よいイト鳴りがしてパワフルなマダイのファイトが堪能できるはず。細イトのため無理はできないがドラッグを駆使して慎重に寄せればラインブレイクを防げる。

標準的なタックルはメインラインPE0.6号、リーダー2号5m。ロッドはバットに張りがあり、ティップの感度が良好なものならOKだが、ロッドをリフトして誘い続ける釣りなので7ft以上の長さがあるとストロークのある誘いが入れやすい。強いていうならエギングロッド、硬めのメバルロッド、軟らかめのアイナメロッド、長めのバスロッドなどが流用できるはず。もちろん専用ザオもあるが、まずは手持ちのタックルで現場に出て、専用ザオの必要性を感じてから購入すればよいだろう。リールは2500~3000番台で、とにかくドラッグ性能の優れたものがベスト。
もちろんターゲットはマダイだけにあらず。大原沖は大型のカサゴやマハタ、ヒラメ、ホウボウ、青ものなど多彩な釣果が期待できる
もちろんターゲットはマダイだけにあらず。大原沖は大型のカサゴやマハタ、ヒラメ、ホウボウ、青ものなど多彩な釣果が期待できる
今回ご紹介したエリア
千葉県/大原沖のマダイMAP
アクセス
東京方面からは京葉道路・千葉東ジャンクションから千葉東金道路、千葉外房有料道路を経由してR128を南下し大原港へ
※このコンテンツは2011年9月の情報をもとに作成しております。