エンジン(5)


 この問題を解決するため、CBR600RRではいままでのインジェクターとは別に、エアボックスの最上部にさらにインジェクターを装着しました。そして、この追加したインジェクターを、エンジンスピードが約5,500rpmに達し、かつスロットルが大きく開かれた際だけに動作するよう、プログラムしたのです。こうして、高速走行中の吸気と燃焼の効率が大幅に改善されました。
 2個目のインジェクターは、吸気ストロークを行う直前に適量が噴射されます。エアと空気の混合を目覚ましく高速化できることに加え、スロットルボア40mmの新型の大型スロットルボディーに設置されたインジェクターが、燃焼室に入る混合気に加える適切な量の燃料を噴射。こうして、エンジンが高速・高出力で運動しているときも、完全な燃焼が得られる混合気の供給が可能となりました。
 エンジンが超高速回転しているとき、合計8本となるインジェクターの動作を極めて高い精度でコントロールするため、ECU(電子制御ユニット)も変更する必要がありました。そこで、CBR600F4iのデュアルシーケンンシャル燃料噴射システムに使われている16ビットプロセッサーを、32ビットプロセッサーへとアップグレードしました。CBR600RRの新型エンジンが運用限界速度に達しても、この新システムが燃料噴射を敏速かつ確実に制御します。
 このシステムのもうひとつのメリットは、吸気行程が強化されたことで、スロットルボディーと吸気ポートを通っていく吸入空気の温度がアッパーインジェクターからの燃料気化潜熱により大幅に下げられる点です。結果的に、より充填効率を向上させて高出力化が可能になりました。
 PGM-DSFIをCBR600RRの小型・軽量エンジンに搭載した結果、全回転域で素晴らしいスロットルレスポンスと驚異的なパフォーマンスを両立し、圧倒的なハイパワーを実現しました。


 

●環境に配慮したクリーンな排気
 CBR600RRには、ヘッドカバーにビルトインされた二次エアインダクションシステム「エアインジェクション」を、さらに改良した新タイプを採用しています。このシステムは、各シリンダーの排気ポートに新鮮な空気を取り込むことにより、一酸化炭素(CO)、ハイドロカーボン(HC)を含んだ排気ガスを酸化させることで、日本国内のエミッション規制値、EURO-1規制に適合させています。このシステムによるエンジン出力のロスはほとんどありません。



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