エンジン(3)


●軽量化された新型スリッパーピストン
 往復部の重量を最小化することも、CBR600RRのエンジン設計にあたって重要な目標でした。なぜならば、信頼性を維持しながら、より大きなパワーを得るためです。このエンジンに採用された新型の鍛造製スリッパー型ピストンは、CBR600F4iのピストンと比較し、スカート部を短く設定し、15gもの軽量化を行うとともに、トップリングは0.8mmの先進の超薄型軽量リングを採用することで、高回転時のフリクションによるパワーロスと、ブローバイ防止を見事に両立させています。
 さらに、独自に開発したPMC(パウダード・メタル・コンポジット)アルミ/セラミック・シリンダースリーブを採用するとともに、長さと直径の見直しによって8gも軽量したピストンピンを採用して、往復部の軽量化を達成しました。

 

●浸炭ナットレスコンロッド
 コンロッドの軽量化も高回転を可能とすることに大きな役割を果たします。重さやマスが大き過ぎればレスポンスと加速は遅くなり、高回転域での振動やストレスを生み出すからです。そこでCBR600RRのコンロッドには、「VTR1000F」と「VTR1000SP-2」で初めて導入された軽量「ナットレス」設計を採用。従来型のコンロッドはナットとボルトで大端を締結しているのに対し、ナットレスコンロッドは、棹側にダイレクトに切られたネジ穴をボルトだけで締めつけています。これによって従来のナットとボルトの組み合わせより12gも軽く、シリンダー1本あたり約35g、全体で140gの軽量化が実現しました。往復部の重量を軽減できたことで、シャープな回転上昇とパワフルな加速時のレスポンスを実現できたのです。


●デュアルピボットカムチェーンテンショナー
 エンジンの高回転化に伴って、カムチェーンへのストレスは増大します。そこでCBR600RRでは、シンプルでありながら実に効果的なデュアルピボットテンショナーシステムでストレスの増大を解決しました。
 その名のとおり、これはふたつ(デュアル)のカムチェーンガイドから構成されたシステムです。クランクシャフトのスプロケットのすぐ上からガイドする長いカムチェーンガイドが、カムスプロケット側に配置した2個目の短いガイドを介して支持されます。これによって、テンショナーリフターに加わるカムチェーンからの振動が、“てこ”の作用で分散されるとともに、カムスプロケット側のカムチェーン噛み合わせ部を短いガイドがサポートすることで、激しい加減速や超高回転下でもチェーン張力を安定させることができます。



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