開発コンセプト


 CBR600RRは、街中からサーキットまでの性能を飛躍的に高めて、新しい時代に向けた、スーパースポーツのベンチマークとなることを目指しました。開発コンセプトは、『イノベーティブ ワンダー』=『驚異の革新性』とし、開発に対する考え方についても大きな変化を加えました。
 従来は市販車としてベストな仕様や性能を徹底的に研究・開発し、開発完了後にサーキットでテストを行うという開発の順序でした。しかし、『イノベーティブ ワンダー』というコンセプトを出発点としたCBR600RRは、これまでの開発の順序を逆転させて、開発初期段階でサーキットテストを行い、そこで得たデータをもとに研究と検討を重ねました。
 サーキットでより速く走るために、設計段階から様々な試行錯誤を繰り返すとともに、同時期に開発を進めていたMotoGPマシン「RC211V」と考え方や構造まで同じとなるフレーム形態、リアサスペンション構造、ライディングポジションまでも、速く走るためのコントロール性を重視して仕様を決定しました。その結果、重量配分を根本から改善して、従来にないほどのマスの集中化によって人とマシンの一体感を高めることに成功しました。

 このマシンには、新しく“RR”の称号を与えました。高性能スーパースポーツの代名詞である「CBR」の名を守りながら、Hondaの誇る“RR”の2文字を与えたのは、我々の意思を明確に示すためです。いま“RR”という名称は、Hondaの誇るスーパースポーツマシン「CBR954RR Fire Blade」だけに与えられた特別な意味を持った称号でした。CBR600RRは、“RR”の称号を継承する新時代の高性能スーパースポーツとして誕生したのです。
 CBR600RRは、600ccスーパースポーツカテゴリーで唯一の国内認定取得車として、国内の騒音・排出ガス規制を高い水準でクリアしながら、本来のキャラクターを十分に堪能できる仕様としました。
 より強力なパワーを発揮することがCBR600RRのゴールのひとつとして開発しましたが、単にエンジン出力が増大しただけでなく、幅広い回転域全体で驚くほどの走行性能を発揮します。これによって、レース中の競り合いなどでギアチェンジの自由度が増し、よりスポーティーな走りを可能としました。数々の先進技術が、スロットルを操作するたびに体感できる『驚異』の源泉となっているのです。
 また、欧米をはじめとした多くの国々のユーザーにスポーツを満喫していただくことに加え、目標をもうひとつ設定しました。それは、レースポテンシャルを高めることです。スポーツバイクの究極であるレースポテンシャルを高めた狙いには、ますます活況を見せる国内STクラス、欧米でのSSクラス等のレースユーザーに対して、廉価なベース車とKITパーツがあれば、よりモータースポーツを身近に楽しむことができ、ロードレースの活性化にも寄与できると考えたからです。

 スタイリングはRC211Vを継承し、車体設計のすべてがMotoGP制覇へ向けたHondaの開発成果として、この量産車にフィードバックされています。レースポテンシャルとスポーツ性に加え、『イノベーティブ ワンダー』がもたらす興奮を性能と外観に与えました。
 ストリートとサーキットの双方で、600ccスーパースポーツの王者といえるCBR600RRは、Hondaのレーシングスピリットを、最先端テクノロジーとともに反映しました。
 また、静止時にはRC211Vを彷彿させ、走り出せばすべてのライダーがヴァレンティノ・ロッシと同じ気分を味わっていただけると思います。
『イノベーティブ ワンダー』というコンセプトをすべてにおいて反映した、CBR600RR。このマシンに乗る人たちは、我々が駆使した新技術がもたらすライディングフィールに、新鮮な驚きと興奮を体験していただけると確信しています。

 


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