VTR1000F
VTR1000F
 

パワーユニット



エンジンイラスト 現在、国産大排気量のスーパースポーツの大半は4気筒エンジンを搭載しており、単純にリッター当たりの出力を比較した場合、4気筒エンジンの方が2気筒エンジンよりも効率が良い事が広く知られています。 
 しかし、モーターサイクルの楽しみ方がますます多様化している現代において、ロードスポーツモデルにおいても、絶対的な速さより、心地よい加速感や鼓動感を求めるユーザーが増加傾向にあります。そして、軽快な操縦性を発揮するスリムなボディ、存在感を主張できるパワーユニット、低・中速域での力強い加速感など、ビッグVツインエンジンでなければ表現できない性格を持ったモーターサイクルへの人気の高まりが、近年、国内でも巻き起こっています。
 従来の国産ビッグVツインモデルは、低速時の鼓動感は楽しいものの、高速走行時の振動が大きいなど、理想的なビッグVツイン・スーパースポーツの要件を満たしたモデルはまだ少なく、ユーザーからは本物志向のビッグVツインの登場が求められているのが現状です。
 そして、開発にあたって「ゆっくり走っても楽しく、早く走っても楽しめるビッグツイン」をエンジン開発のコンセプトに決定し、この考えに沿ってVTR1000Fのパワーユニットを新設計しました。


新設計水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ90度V型2気筒996cm3エンジン
エンジン 新設計の1リッターVツインエンジンの開発にあたっては、全回転域で豊かなトルク特性を実現するとともに、高回転域までスムーズに吹け上がるエンジン特性を求めました。また、不快な振動をカットすることも必要要件として設定しました。
 具体的には、この目標をクリアするために前後シリンダー角を90度に設定。バルブ廻りはDOHC4バルブとし、クランクシャフトはシングルピンタイプとしました。さらに、Vツインエンジンならではの加速感や鼓動感を活かすため、最適なフライホイールマスの設定を行っています。

 さらに、このパワーユニットの特徴のひとつとして、シリンダースリーブ一体式の上下割クランクケースをスイングアームピボットと一体構造としていることが挙げられます。
 一般的に、高い操縦安定性を実現するには、大きな前輪分布荷重を確保するために、クランク中心と前輪を可能なだけ接近させ、剛性の高いフレームでヘッドパイプとスウィングアームを一直線に結ぶことが最良とされています。
 しかしVTR1000Fのように90度ビッグVツインエンジンを搭載した場合、エンジンの前後・上下長が大きく、最適位置にレイアウトすることが難しいため、この問題を解決するために、スウィングアームピボット一体式のクランクケースを考案しました。
 そして、スイングアームをクランクケースに直接取り付けたことによって、後輪からの外乱が直接ヘッドパイプに伝わらない構造となり、前・後輪間の剛性分布が最適化された、新感覚で抜群の操縦安定性を有する車体構成が実現しました。


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