VFR - 1986.03

VFR750F
VFR
 
VFR750F

1.開発コンセプト

 我々VFR開発チームは、レースで培われ、実証された数々の技術を投入し、「走行性能と快適性とクオリティを高次元で調和させた感性溢れる車づくり」を目指した。
 具体的には
ライダーの快適性と人車一体感を追求したスーパーエアロフォルム。
ハイパワーとフレキシビリティを両立させた105ps/10,500rpm以上(DIN)を発揮するパワーユニット。
俊敏な走りを約束する軽量高剛性フレーム。
 など、高い次元でのトータルバランスを目標に苛酷なテストを繰り返しながら、信頼性と徹底した軽量化を計った。


2.V-4エンジンのポテンシャル

2-1 コンパクト化
  V-4エンジンは、ほぼ2気筒なみのスリムなエンジン幅を可能にする。
この結果、前面投影面積が小さくなり、空気抵抗が減少、高速走行性能が向上できる。
つまり、同じエンジン出力でもより速いスピードが可能となる。
その上、大きなバンク角が可能となる。

2-2 フリクションロスの低減
  メインベアリング数が4個と少なく、フリクションロスの低減に寄与。さらにクランクシャフトが短い為、高い剛性が得られ馬力・トルクの向上が図れる。
V-4のエンジンレイアウトにより、不快な二次振動を大幅に減少できる。


3.第2世代のV-4エンジン

3-1 ギヤトレーン方式 カムシャフト駆動
  レーシングマシンRVF750からフィードバックされたギヤ駆動方式によりフリクションロスを約30%減少させた。
さらに高回転域に至るまでバルブ作動は正確に行われ、高出力化に大きく寄与している。

3-2 エンドピボットアジャスト方式のロッカーアーム
  ロッカーアームは従来のY字形で、同時にバルブ2本を押すタイプから1バルブ専用のストレートタイプとなり、1バルブ当りの等価質量を軽減した。
また、スウィング機構及びアジャスト機能を持つエンドピボットアジャスト方式は、フリクションの低減と、慣性質量の軽減に大きく寄与するとともに、良好なメンテナンス性を得ている。

3-3 運動部分の軽量化
  高出力と信頼性の両立を図りながら、フリクションロスを低減させるため、個々のパーツをグラム単位で軽量化した。
例えば浸炭処理によるハイパー、コンロッドの採用により、コンロッド1本あたり90gの軽量化(VF750F比)を実現。
吸・排気バルブもバルブの下部を削り落すというレーシングマシンの手法を採用、軽量化が図られている。

3-4 180度クランク
  180度クランクの採用により、爆発間隔を180°→ 270°→ 180°→ 90°とし、振動の軽減と排気音質の向上、さらにポンピングロスの低減を可能とした。

3-5 オイル潤滑システム
  オイルクーラーで冷却されたオイルを直接エンジンに供給する新潤滑システムを採用した。

3-6 ストレートポート+4→2マフラー
  キャブレター挟み角を従来の72°から52°へ変更し、7.2Lの大容量エアクリーナーの空気を、よりストレートに大口径の吸気バルブへ導く。
新設計ロッカーアームは、よりストレートな吸気を可能とし、吸入された空気は流速を落さずに燃焼室に送り込まれ、吸入効率を大巾に向上させている。
排気システムは4本のエキゾーストパイプのうち、左側2気筒(#1と#2)、右側2気筒(#3と#4)が集合され左右2本のマフラーへ継がれている。さらに2本のマフラーはコネクティングパイプで継がれ、各々の脈動効果と排気慣性を最大限に有効活用する構造となっている。
これら吸・排気効率の大巾な向上により、広いトルクハンドと最大トルク7.6kg-m/8,500rpm(DIN)を発生している。



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