NSXは、スタビリティと旋回性能を向上させるため、前後異サイズのタイヤを採用しました。これは、前後輪にかかるそれぞれの荷重を考慮し、前後タイヤのコーナリングパワーのバランスを追求することによって生まれたシステムです。
タイヤサイズの選択にあたっては、まず、NSXの重量と高性能車にふさわしい充分な容量をもつブレーキサイズの決定から始めました。
次いで、重量配分の大きいリアタイヤを、横G1.5Gまでのハードコーナリングを想定しても充分に性能の余裕がある225/50ZR16に決定。これに対してフロントには、荷重配分にふさわしいベストバランスのコーナリングパワーをもつタイヤとして、205/50ZR15に定めました。
ここまでバランスにこだわってフロントタイヤを決定したのは、単に外径合わせだけで定めた場合、M・R方式の重量配分では荷重に対しフロントタイヤの性能が勝り、直進安定性、旋回性能ともに不安定となってしまうからです。
一般的には、これを補うために、フロント・サスペンションやステアリング系の剛性を下げ、フロントをにぶくする手法が用いられますが、ステアリングに対する反応が不確かなものになりがちです。
このためNSXでは、フロント・サスペンションとステアリングの剛性を高くし、正確でダイレクトな手応えを得るため、フロント15インチ・リア16インチという、リム径までも変えた前後異サイズタイヤを開発したのです。
この結果、シャープで軽快でありながら、充分な高性能と、安定性のある旋回性能がもたらされました。また、小径のフロントタイヤはパッケージング上もきわめて有効であり、良好な視界や異和感のないペダルレイアウトも可能にしています。
さらにこのシステムは、前後が異サイズであるだけでなく個々のタイヤが左右非対称であり、4輪すべてが専用設計という、まったく例をみない画期的な方法が用いられています。 |