BEAT
BEAT

TECHNICAL NOTES

燃料噴射制御マップ
鋭いスロットルレスポンスと、安定したアイドリングを両立した燃料噴射制御マップ切り換え方式。
走行中の様々な状況を検出し、その情報をもとに最適な空燃比を瞬時に算出、燃料噴射量を制御して正確に送り出すPGM-FI。ホンダF-1をはじめ、量産車にまで広く採用している高精度な電子燃料噴射システムですが、MTRECの機構上のもうひとつの特徴は、この燃料噴射量の制御方式にあります。従来の量産エンジン用PGM-FIでは、幅広い走行条件の下で適した燃料噴射量を確保する目的から、“インテークマニホールド内の吸気圧力と、エンジン回転数を基準にした燃料噴射制御マップ”を用いてきました。一方、F-1エンジンではアイドリング時などの安定性は不要であることから、急加速時などに、よりすばやい燃料追従性が得られる“スロットル開度と、エンジン回転数を基準にした燃料噴射制御マップ”を使用しています。F-1エンジンと同じく多連スロットルを備えるMTRECエンジンは、F-1エンジンと同様の制御マップの利用によって、ハイレスポンスの獲得が可能ですが、アイドリング時の安定性を犠牲にすることは許されません。開発しようとしているのは、レーシングエンジンではなく、乗用車のエンジンなのです。そこで、この両立を図るため、これら2つの燃料噴射制御マップを合わせ持ち、条件に応じて切り換える、量産乗用車用エンジンでは世界初の制御方式を確立。あらゆる条件において、つねに最適な燃料量を瞬時に噴射できるシステムをつくり上げました。

高精度電子技術による切り換え制御。
アイドリング時の他、定速時、ゆるやかな加・減速時、低負荷時には“吸気圧力と、エンジン回転数を基準にした燃料噴射制御マップ”。急加速・急減速時、高負荷時には“スロットル開度と、エンジン回転数を基準にした燃料噴射制御マップ”。MTRECはスロットル開度、エンジン回転数、スロットルの動きに応じて2つのマップ切り換えを電子制御します。この切り換え制御により、それぞれの制御マップにおける高精度な領域を使った、より正確な燃料量の供給を可能にするとともに、パーシャル域から全開までのスロットルの動きに対する燃料量のいっそうすばやい追従性を得て、レスポンス向上を果たしました。また、MTRECのECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)は、このクラスでは初の大気圧センサー内蔵とし、O2センサーも素子温度を一定に保って常に安定した空燃比フィードバックが得られるようにヒーター付きを採用。スロットルセンサーをはじめ、各センサーはきわめて誤差の少ないものだけを選び抜いて使用するなど、高精度で、信頼性の高いエンジンコントロールシステムに仕上げています。
MTRECの燃料噴射制御システム

吸・排気効率、燃焼効率を徹底向上。高性能化のためのチューニング。
バルブシステムは、吸気側φ24.5mm、排気側φ21mmの大径バルブを採用し、バルブリフト量、バルブ開角ともに比較的大きめに設定。MTRECの効果を活かしきる、優れた吸・排気効率を実現しています。また、燃焼室形状をコンパクトなペントルーフ形とし、ピストンのヘッド部をフラット化。燃焼効率を高め、レギュラーガソリン仕様ながら、10.0の高圧縮比を達成しました。高出力、高トルクとともに良好な燃費をもたらしています。

トリプル・エキゾーストマニホールド
トリプル・エキゾーストマニホールド
高出力化に貢献するとともに、快い排気音を奏でるエキゾーストシステム。
排気脈動効果を活かしてすみやかな排気を行なうため、パイプの曲がりを大きくとって充分な長さを確保したステンレス製トリプル・エキゾーストマニホールドを採用。エキゾーストパイプも太くして排気の抜けをよくし、高出力化を図りました。また、走りをより快いものにしていく上で、排気音もBEATにとって大切な要素でした。そこで、サイレンサー容量をアップするなど徹底したチューニングを施し、高い消音性能を得ながら、刺激的なエキゾーストノートをつくり出しています。

高回転・高出力化への対応と、熱対策。
MTRECの導入にともない、エンジン本体についても660ハイパー12バルブエンジンをベースとしながらも、高回転・高出力化への対応、熱への対策を中心に細部にわたって徹底した見直しを実施。シリンダーブロック、クランクを除き、ほぼ全般にわたって新設計しました。
〈主な高回転・高出力化対応〉●バルブスプリングの荷重をアップ。●コンロッド、メタル類を強化。●オイルパン容量を拡大し、オイル面を低下させたことにより、高いオイル循環性能を確保。
〈主な熱対策〉●ピストンの耐熱性アップのため、1.6L DOHC VTECエンジンと同一素材を使用。●ピストンのヘッド部裏側すみのアールを拡大してピストンリングの熱ひき性を向上。●エキゾーストポート下まで冷却水がまわるようにウォータージャケットを設け、排気温度の上昇を抑制。
さらに、ACジェネレーターの容量アップによってバッテリの小型化を可能にし、車両全体として軽量化するなど、ポテンシャル向上をトータルに図っています。

小気味よいチェンジフィーリング。ショートシフトストローク5速マニュアルミッション。
エンジンの特性を活かした操る楽しさを具現化していくには、ドライバーとのインターフェイスともいえるミッションの操作感は、大切なファクターのひとつです。BEATは、手首で素早くシフトできる、小気味よいチェンジフィールを得るため、フリクションの少ないワイヤーチェンジ式で、シフトストロークをNSXと同じ40mmに設定した、ショートストロークの5速マニュアルミッションを採用。クラッチディスクの慣性モーメントを小さくし、シンクロ負荷を低減するなど、NSXのノウハウを採り入れ、ショートストロークながら軽い操作性を実現しました。また、充分な剛性を確保してシフトレバーのガタツキ感を抑え、カチカチと決まるダイレクトチェンジに近い操作感をもたらしています。もちろん、ギヤ比は、クロスレシオを採用。エンジンのパワー、トルクを有効に使った走りを楽しめます。スポーティ感あふれる走りが引き出せます。

軽くスムーズな操作感を生む油圧クラッチ。
ワイヤー式に比べて設定の自由度が高い油圧クラッチの採用によって踏力を最適化するとともに、ペダルストロークも短めの設定とし、スムーズな操作感を得ています。

エンジンの特性を活かす数々の対策。
エンジンのレスポンスの高さを損なうことなく発揮させるため、フライホイールを軽量化。さらに、1.6L DOHC VTECエンジン搭載車と同じバランスウエイト付ダイヤフラムスプリングの採用により、高回転時のクラッチフィーリング向上を図りました。また、クラッチ容量に余裕を持たせ、強度も充分に確保しています。



← 前のページへ --- 目次へ --- 次のページへ →