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Honda Face Top > Case68:本田技研工業(株) 70MPa SHS 実証実験 EPISODE-1

Face 本田技研工業(株) 70MPa SHS 実証実験 Face Top Face Top

本田技研工業(株) 70MPa SHS 実証実験 70MPa仕様の燃料電池自動車に相応しい、新モデルのスマート水素ステーションを。

70MPaの高圧水素を製造するスマート水素ステーションの実証実験を開始。

 東京都江東区青海、いわゆるお台場と呼ばれる一画。新橋方面に向かう新交通ゆりかもめの車内から外を眺めると、テレコムセンター駅のすぐそばに「HONDA」「SHS」といった文字が大きく地面に描かれた施設があることに気づくでしょう。
 実はこの場所こそが、Hondaが水素社会の実現に向けて、70MPaスマート水素ステーション(SHS)の実証実験を行っている施設なのです。

 SHSとはHondaが開発した、水素の製造から貯蔵、充填といった機能をすべて10フィートコンテナサイズに収めた水素ステーションのこと。そして70MPa(メガパスカル)は、700気圧を意味し、その水素ステーションが燃料電池自動車(FCV)に充填可能な圧力を示しています。コンパクトで高効率。そのSHSを特徴づける核となる技術が、Hondaの独自技術、高圧水電解システム「Power Creator」です。これにより、膨大な電力を必要とするコンプレッサーを使わずに70MPa超の高圧水素を製造。太陽光や風力といった再生可能エネルギーと組み合わせることを容易にし、CO2フリーの水素製造を可能にしています。
 つまり、SHSがつくった水素を使えば、水素を燃料に走行時に水しか出さないFCVは、本当の意味でCO2排出ゼロで走ることができるのです。
 また、シンプルな設置方法も魅力のひとつ。工場で組み立てられた10フィートコンテナサイズのSHSをトレーラーで運び、水と電気をつなぐだけで、その日からの水素製造が可能です。こうした環境負荷の低減に寄与し、大規模な設備や用地も不要なSHSは、商用の大型水素ステーションをはじめ、水素の供給インフラがまだ整備されていない地方自治体などに導入いただき、水素を利活用する社会の礎となることが期待されています。実際に35MPaの充填圧力を持つSHSは、徳島県や宮城県といった新エネルギーの確保に積極的な自治体を中心に12カ所に設置され、すでに稼働を開始しています。

テレコムセンター駅から新橋方面に向かうゆりかもめの進行方向左手に見えるのが、70MPa SHS実証実験の施設

テレコムセンター駅から新橋方面に向かうゆりかもめの進行方向左手に見えるのが、70MPa SHS実証実験の施設

70MPa仕様のFCV「クラリティ FUEL CELL」とSHS

70MPa仕様のFCV「クラリティ FUEL CELL」とSHS

高圧水電解システム「Power Creator」

高圧水電解システム「Power Creator」

徳島県庁(左)、宮城県保健環境センター(右)をはじめ、全国でSHSの導入が進んでいる

徳島県庁(左)、宮城県保健環境センター(右)をはじめ、全国でSHSの導入が進んでいる

(株)本田技術研究所 四輪R&Dセンター 長岡久史主任研究員

(株)本田技術研究所 四輪R&Dセンター
長岡久史主任研究員

米国で開発したシステム(左)を、埼玉県庁のステーションにも活用(右)。当時は水素の製造、貯蔵、供給がそれぞれ別に配置されていた

米国で開発したシステム(左)を、埼玉県庁のステーションにも活用(右)。当時は水素の製造、貯蔵、供給がそれぞれ別に配置されていた

本田技研工業(株) 環境安全企画室 笹木英二主任

本田技研工業(株) 環境安全企画室
笹木英二主任

CO<sub>2</sub>フリーの水素製造ができるSHSの70MPa化に、国からも大きな期待が寄せられました。

 70MPa SHS実証実験の開発責任者を務める長岡久史(ながおかひさし=(株)本田技術研究所 四輪R&Dセンター 主任研究員)は、70MPa仕様のSHSに行きつくまでの流れをこう振り返ります。
「SHSの開発の歴史は米国での基礎研究から始まりました。いち早くFCVの研究開発に取り組んでいたHondaは、高圧水電解技術を用いた家庭用水素ステーションの実証実験を米国にて行っていたのです。そのCO2フリーでの高圧水素の製造技術に着目した日本の環境省の強い要望もあり、2012年に日本初となる再生可能エネルギーを活用する水素ステーションを埼玉県庁に設置。その後パッケージ型のSHSを開発し、2008年モデルのFCV『FCXクラリティ』とともに実証実験を行ってきました」
 ここまでの開発はFCV、SHSともに充填圧力は35MPaを想定したものでした。その後、業界の期待や長い航続距離を求めるニーズが高まっていく中で、FCVに70MPaの高圧水素貯蔵タンクを搭載することが国際基準に。Hondaもこれに準じて2016年に新型FCV「クラリティ FUEL CELL」をリリースしました。
「FCVが70MPa仕様になれば、当然SHSも70MPaの高圧水素を製造できるモデルが必要です。70MPaの充填圧力で『クラリティ FUEL CELL』に水素を充填することで750kmの航続距離を実現できます。私たちはFCVをクリーンな水素で、できるだけ長い距離を走らせたい。そのために、研究所ではFCVの70MPa仕様が持ち上がった時点からトライアルとして70MPaの水素製造に挑戦してきました」(長岡)

 そのSHSが直面した課題は水素製造の技術だけではなく、規制も課題だったと話すのは、Honda 環境安全企画室の笹木英二(ささきえいじ=本田技研工業(株) 環境安全企画室 主任)です。
「高圧水素の製造技術自体は2010年には確立していました。ですが日本でのSHSの展開においては、各種の規制が大きな問題でした。もともとSHSのような小型ステーションを想定していなかった日本の規制では、小型ステーションでも大規模な商用水素ステーションと同様の要件を満たさなければ設置することはできなかったのです」
 扱う水素の量は圧倒的に少ないにも関わらず、商用水素ステーションと同じ基準で防火壁や貯水槽などの設置が義務付けられた結果、敷地面積は商用水素ステーション並みのスペースが必要となっていました。こうした規制の緩和、改定に尽力したのが笹木です。

「2012年3月に日本初のソーラー水素ステーションを埼玉県庁に設置した時は、水素の製造量やステーションのサイズに見合わない過剰な設備や敷地面積が求められました。導入の容易さが特徴のはずのSHSは、このままでは絶対に普及しない。実証実験を関係する省庁や団体に実際に見てもらいながら、規制緩和を働きかけました」
 こうした実証実験はHondaに脈々と受け継がれている「現場、現物、現実」によって物事を考えるという「三現主義」の実践そのものだと言えます。そして省庁との調整、提案を繰り返し、立地条件の緩和など規制の適正化による小型水素ステーションの技術基準の整備を実現。その甲斐あってSHSの市販モデルが一気に全国の自治体に導入されていきました。

 そんな折、環境省から新たな要望が届きます。2020年までに再生可能エネルギー由来の水素ステーションを100カ所程度に導入したい。ついてはSHSの70MPa化を早急に進めて、実証実験を開始してほしい。そこで、Hondaは70MPa SHSの開発、製造を急ピッチで行うとともに、実証実験のプランニングに着手したのです。
「国と東京都は2020年の東京オリンピックを水素社会のショーケースにしたいと考えています。また、Hondaにもオリンピック前に実証実験を終え、開催時には70MPa SHSの市販モデルが設置してあるという状況をつくりたいという想いがありました。環境省は『CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業』の重点課題に70MPaの水素製造を設定。Hondaがその課題に採択され、実証実験の段取りが進むことになったのです」(笹木)

 70MPa SHSの実証実験が採択されたのは2015年4月。実証期間は2018年3月までの3年間です。笹木は急いで実証実験場所のピックアップを進めながら、もっとも注目が集まる土地を探しました。せっかくなら、Hondaが水素社会の実現に取り組んでいることを多くの人に知ってもらいたいと考えたのです。
「以前から見るとずいぶん緩和された現行の規制でも、SHSは敷地境界から8m離さなければなりません。それだけの土地があり、かつ人の目につくところ。関係各所と調整しながら辿りついたのが、お台場の一画だったのです」(笹木)

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