11.30 Honda Diversity Forum 2017

2017年11月30日、都内ホテルにて女性活躍のKeyとなる主任層の女性従業員のモチベーション向上とネットワーク形成を目的とした「Honda Diversity Forum 2017」が開催された。フォーラムには全女性主任の8割約400名が参加。Hondaの人材多様性進化の画期的な一歩となった1日をレポートする。

Hondaの多様性への“本気度”を感じた1日 Hondaの多様性への“本気度”を感じた1日

2016年の女性管理職を対象とした「Honda Diversity Forum 2016」に続き、2017年は女性主任層を対象に開催された。13時に開幕し、懇親会を含め19時に終了。15名の役員と外部ゲストが、6時間にわたるフォーラムを見守った。

13:05 13:05

八郷社長 オープニングメッセージ

「新しいつながりをつくってほしい」 「新しいつながりをつくってほしい」

八郷社長のスピーチを皮切りにスタート。親しみのこもった笑顔と真剣な眼差しで、自身の生まれてからHondaに入るまでと、入社してからの35年間のキャリアについて熱く語った。

13:15 13:15

多様性推進室
向後室長 スピーチ

「目標を明確にしてチャレンジ!」 「目標を明確にしてチャレンジ!」

続いて人事部多様性推進室の向後室長は、「女性活躍に取り組む理由」「取り組みの成果と課題」「チャレンジとネットワークの重要性」について。そして、この日の「主役は参加者の皆さん」であると締めくくった。

参加者の声

  • Hondaの多様性は、まだまだ始まったばかり。女性に焦点を当てているのも通過点
  • 女性の意識改革も必要だが、男性の意識改革はもっと必要
  • 会社の本気度を理解することができて、やる気になった

13:30 13:30

日経BP社 執行役員 麓氏

基調講演「新時代を生きる
女性のキャリア戦略」

「キャリアのオーナーシップを持とう」 「キャリアのオーナーシップを持とう」

『日経WOMAN』の創刊メンバー、記者、発行人を経て日経BP社執行役員を務める麓氏。記者としての知見、キャリアデザイン学の研究者としての理論、そしてワーキングマザーとしての経験、この3つの観点から、現在がいかに女性活躍の千載一遇のチャンスであるか、キャリア構築のうえで必要なマインドなどについて講演。「仕事も私生活もうまくいく」ヒントを説いた。

リアルタイムアンケート

参加者1人に1個、アンケート回答用のボタンを配布。麓氏の問いかけに参加者がその場で回答できる参加型の講演となった。
「Hondaさんは日経BP社の実施する女性の活躍する会社ランキングで、昨年241位でした。さて今年は何位になっていたでしょう?」
という問いかけに対し、参加者は「1:ベスト10位以内 2:100位以内 3:200位以内 4:300位以内」から選択。3の回答が最も多く、昨年とあまり変わっていないのではという見方が大半。実際のランキングは85位とベスト100入りした

参加者の声

  • 社会の流れや、外から見たHondaのお話に説得力があった
  • 「居心地のいい場所から出る」「もう年だからと思わない」麓さんの言葉から元気をもらいました
  • 「チャンスに期限がある」なるほど!と思うと同時に何かが吹っ切れて、頑張ろうと思えた

WORK 01.

イントロダクション

さまざまな領域や年代の参加者が、10名ずつのグループに。
40卓のテーブルに女性主任が着席する会場は壮観だった。最初にグループごとに一人ずつ所属、名前、仕事内容など自己紹介。ほとんどが初めましての間柄。少し緊張気味にスタートした。

WORK 02.

グループディスカッション

「Hondaの多様性進化において自分が職場でできること」をテーマにグループワークを開始。各テーブルに管理職が1名アドバイザーとして加わった。短時間ながら活発な意見交換があり、全員で立ち上がって話しあうグループもちらほら。

WORK 03.

ラウンドテーブルミーティング

各テーブルに役員や外部ゲストが入り、意見交換。テーブルごと真剣に議論し、時には笑いを交え、メモを取る姿も見られた。「ずっと聞きたかったんですけど…」「本当のところどうなんですか!?」終了時間を知らせるアナウンスがあっても熱い議論がなかなか終わらないグループもあった。

WORK 04.

各自まとめ&グループ内発表

スピーチや講演、グループディスカッションとラウンドテーブルミーティングでの「気づき」、そして自分が「職場で実施すること」の2点について各自シートに記入。「職場で実施すること」については付箋にも書き出し、会場に貼り出された。

参加者の声

  • 多様性の受容は、相手を知ることから。意見交換をすることで、意識改革につながっていくのでは
  • 主任層の方々の悩み等を共有できて良かったのと同時に、勇気づけられました
  • チャンス・気づきの機会提供に感謝。このイベントが「女性限定」でなくなることを楽しみにしています

16:45 16:45

人事・コーポレートガバナンス
本部長 
尾高執行役員 総評

「本気です!」 「本気です!」

参加への感謝を伝えるとともに、参加者の反応について不安と緊張のなか開催したフォーラムの成功に安堵していると語った。ラウンドテーブルミーティングでは、「本当に女性活躍を進めていくんですか?会社は本気なんですか?」と詰め寄られる場面もあったとか。「本気です、とお答えしました」と改めて固い決意を示していた。

17:30 17:30

懇親会

その後、ネットワークをさらに深めるため、懇親会を実施。
八郷社長はすべてのテーブルを周り、参加者との親睦を深めた。

乾杯挨拶 國井取締役

大変素晴らしいイベントでした。八郷さん、倉石さんをはじめ多くの役員の方がご出席だったことも、とても良かったと思います。私にとってもラウンドテーブルミーティングで直接女性主任とお話しできたのはとても有意義でした。現状が肌で感じられました。何人かから女性活躍の継続性について心配する声があがっていました。今回は何としても継続する必要がありますね!

閉会挨拶 倉石副社長

参加者から多く聞かれたのが「これだけいろいろな事業所・領域の人たちと一緒になったのは初めてで、とても刺激になった」という声でした。わずか数時間でしたが、各領域から集まったメンバーが様々な意見を交わすことで、新しいアイデアや意見が次々と生まれてくるのを、私もそばで見ました。このように部門を跨いだコミュニケーションは皆さんを元気にする。と同時に日本Honda、そして世界のHondaをより強くすると思います。

19:00 19:00

役員による見送り

盛況のうちに「Honda Diversity Forum 2017」は閉幕。15名の役員たちが出口の両サイドに並び、退場する参加者たちに声をかけ握手を交わしたり、記念撮影をしたりして見送った。

外部ゲストの声

日経BP社 執行役員 麓 幸子氏

今回のフォーラムを通じて、参加されていた女性の意識が変わっただけでなく、役員の意識も確実に変わったはず。Hondaの歴史的なイベントに参加させていただくことができました。一記者としてこのような経験は何よりの宝となります。ありがとうございました。

(株)キャリアバランス 創業者 弓 ちひろ氏

Hondaの多様性推進の取り組みへの熱い想いと誠実な想いがひしひしと伝わって来るフォーラムでした。参加者の皆様の終了後の笑顔が印象的でした。参加者の声から職場内の上司からのコミュニケーションの重要性をあらためて感じ、今後も研修等を通じてお役に立ちたいと思いました。

(株)アントレプレナーセンター
代表取締役社長
福島 正伸氏

すごくいいイベント。みんな待ってたと思う。これがどこまで続いていくのか、やり続けるのかという様子を見る人もいるのだろうが、やっていくのであれば自分も頑張るという人がHondaは多いはず。この後は火がついて「自分の出番」と思い頑張る人を、しっかり応援していくことが重要。

中央大学大学院
戦略経営研究科 教授
佐藤 博樹氏

素晴らしいフォーラムで、皆さんの熱意に感動しました。Hondaにおける女性活躍支援の本気度が、参加された主任の皆さんに伝わったことと思います。フォーラムへの参加経験は主任の皆さんの今後の仕事や生活におけるエネルギー源になるでしょう。ぜひ400人のエネルギーを次の飛躍につなげてください。今後の意欲的かつ持続的な取り組みに期待しています。

人事部多様性推進室より

フォーラムの成果と
これから

  • 参加率82%
  • 満足度86%

対象者469人中参加者384人で参加率は約82%。
フォーラム後の参加者アンケートでは満足度86%だった

Honda Diversity Forum 2017 事務局
多様性推進室 主任 
伊藤 智惠子
想定を上回る参加表明を受け、「皆さんに笑顔で帰ってもらう」をコンセプトに役員にもアイデアをいただき、当日は人事部門全体で運営しました。参加者から、これほど多くの女性主任がHondaにいること、同じ想いで働く仲間の存在に勇気をもらったという声をもらい嬉しく思いました。当日の様子やアンケート結果から、領域や世代間の違いを理解し、お互いをリスペクトし合っていることが伝わってきました。イベントを終え、今後はマネジメント層を含めた男性への多様性推進のさらなる浸透を図る必要があると感じています。継続して取り組んでいくとともに、今回の参加者の方々が各職場で多様性進化の取り組みをしていただくことを期待・応援しています。
  • NIKKEI STYLE 日経新聞(2018年1月22日朝刊・女性面)にHonda多様化進化の取り組みが掲載されました [記事を読む]

八郷社長 オープニングメッセージ

私の仕事観と働く女性観

 皆さん、こんにちは。八郷です。今日は、このように多くの皆さんに、ダイバーシティーフォーラムに参加してもらい、本当にうれしく思っています。今回のようなフォーラムは、Hondaとして初めての開催になるので、どのようになるか楽しみにしています。最後の懇親会まで、今日1日、皆さんにとって充実した日になればと思っています。Hondaが取り組んでいる多様性の施策については、この後、向後さんから話をしてもらうので、社長の立場からというより、私自身の人生から学んだことを話したいと思います。

 1つ目は生まれてからHondaに入るまで、2つ目はHondaに入ってから学んだことです。私が幼少の頃はまだ女性が運転免許を取ることが少なかった時代でしたが、私の母は働きながら免許を取り、いろいろな所に連れていってくれました。それが、クルマを好きになったきっかけで、クルマの会社に入ったのは母の影響だったと思います。その母は私が物心ついた頃から70歳までずっと働いていました。働く母は、いつもニコニコ楽しそうにしていたので、それを見た私は「仕事は楽しいものなのだろうな」と思うようになりました。子どもは「父親の背中を見て育つ」と言いますが、私は母の背中を見て育ったように思います。母は、今でも「隆弘、仕事は楽しいか?」と聞きます。「楽しいよ」と答えると喜んでくれます。これが「仕事は楽しくするもの」という私の仕事観と、働く女性観のベースとなりました。

 Hondaに入ってからの私のキャリアは商品・技術開発の現場にいた20年とマネジメントの15年の大きく2つにわかれます。その中で一番大切な経験は「つながり」を作ったことです。現場での「お取引先・社外とのつながり」「部門を超えたつながり」、マネジメントでの「部門とのつながり」「海外とのつながり」の4つです。

 まず、お取引先・社外とのつながりです。入社後、ブレーキ設計を担当した時「割の合わない」仕事だと思いました。うまくいってあたり前、少しでも失敗すると大変な問題を起こしてしまう部門でした。ただ、入社して間もない時期に、ブレーキに関わる多くのお取引先・社外の方々と一緒に仕事をする機会に恵まれたことは、その後のキャリア形成において非常に良い経験になりました。

 次に、部門を越えたつながりです。その後、自分の夢だった機種開発のプロジェクトの仕事を13年やりました。ここでは、開発だけでなく、営業、生産、購買といった部門を超えたプロジェクトになるので、部門を超えた「つながり」を作ることができました。同時に、プロジェクトに対する、部門の冷たさというものも学びました。この時期は、部門との戦いも、もう1つの大きな経験でした。でも開発責任者(LPL)は、楽しかったです。

 そしてマネジメントする立場になった後、部門とのつながりを経験しました。部門のマネジメントを初めて経験し、部門の大変さもよくわかりました。ただ、私はHondaの良いところは、プロジェクトが活き活きと活動し良いものを生み出すことだと思っていますから、部門をマネジメントするにあたっては、プロジェクトも大切にするマネジメントを心掛けていました。

 最後に、海外とのつながりについてです。私は、アメリカ、イギリス、中国の3ヵ国に、マネジメントする立場で駐在し、そこで海外の人達との「つながり」を作ることができました。これは、本当に良い経験でした。アメリカの研究所に駐在した時、デザイン部門を見ていたのですが、全てを現地化しようと、現地の人にそれを伝えると 「それは良くない。現地の人と日本人それぞれ違う文化が融合して、新しい価値が生まれる。アメリカ人だけでやれば、いつかアメリカ企業と同じになってしまう。」と言われたことを覚えています。現地の人の言う通りで、Hondaの強みは、文化や部門を越えつながり、議論する事で、新しい価値を生み出すところ。これこそが、多様性だと思います。

 今日は、是非このDiversity Forumを通して、皆さんも新しい「つながり」を作って、仕事を楽しんでほしいと思います。

多様性推進室 向後室長 スピーチ

女性活躍に取り組む理由

 多様性なのに「なぜ女性?」、そして管理職の数値目標を出したことで「数ありきなのか?」「女性にゲタを履かせるのか?」など、社内で違和感を持つ声が聞かれました。日本Hondaの女性活躍は地域間の格差だけにとどまらず、同業他社と比べてもHondaは決して、進んでいるとはいえません。なぜこうなってしまったのか。

 私は学生時代、男女平等の中で学び、社会で出ても同じ、いえもっと貢献出来ると思っていました。ところが、会社では驚くほど女性の地位が低かったんです。仕事の付与においても当時は男女の差を感じました。ただ、なぜその差をおかしいと声を上げなかったのか。会社や組織に、もちろん問題があったとは思いますが、今振り返れば、そういうことは口に出すべきではないという前近代的な「男尊女卑」という暗黙のルールに従っていたのだと思います。一方で、マネジメントから過剰な配慮をされ、居心地のよい環境に依存するという甘えが私にあったことも確かです。若手の皆さんは「なんて時代錯誤」と思うかもしれませんが、このような積み重ねで男女の役割分業が出来上がり、今のHondaの女性活躍の状況を招いたのではないかと思います。そんな時代には戻ってはいけない。だから、敢えてこのような話をさせていただきました。これは私、個人の事例としてお話しましたが、Hondaだけではなく日本の社会全体で起こっていたことです。

 世界からみた日本の男女格差、ジェンダーギャプ指数はずっと100位以下に低迷したままです。このような経過もあり、日本では女性活躍推進法も施行され、ポジティブアクションに取り組んでいます。これは決して個人の業績にゲタを履かせたり、優遇するということではなく、男女の格差をなくし、社会全体や組織を活性化するために、女性にチャレンジの機会を与え、積極的に育成するということであり、過渡期の措置としてのポジティブアクションであることをご理解いただければと思います。

 Hondaにおける女性活躍は女性の就業継続を目的とした、福利厚生の充実ではなく、経営戦略として取り組むものであり、女性から始めるものの、人間尊重に立脚し、女性にとどまらず、国籍、障がいの有無、年齢などの多様性を進めていきます。

チャレンジとネットワークの重要性

 3年前、私は営業領域から人事部に異動しました。人事の専門性もなく、この歳になってからのキャリアチェンジに戸惑うことも多くありました。その中で新たな方々との出会い、またこれまでの仕事を通してのネットワークが私の財産になっていることに気づきました。ダイバーシティの取り組みは社会全体の問題なので、本日のゲストの皆さまにも、また他の企業の方からもノウハウを教えていただき、お互い励まし合って進めることが出来ました。社内においてもこれまでの仕事でつながりのあった方々が味方になりサポートしてくれました。これにより、私は出番が来たら逃げないでチャレンジする覚悟を持つことが出来ました。

 昨年のHonda Diversity Forum 2016 を開催したときも、女性管理職の皆さんが積極的な姿勢でディスカッションや発表をして頂きました。このイベントでは女性管理職の皆さんをエンカレッジするはずでしたが、逆に皆さんからパワーをいただきました。私たちが、仕事で達成感を得るためには、まず大きな夢を持ち、それを目標に置き換え日々不断の努力をすること、そして人との出会いやネットワークが不可欠だと思います。キャリアについても目指すところは人それぞれ違い、誰にも自分らしい多様なゴールがあると思います。

 今回のHonda Diversity Forum 2017 では同じHondaで働く主任や研究員の皆さんが議論し交流することで、目標を明確にしたり、お互いをエンカレッジする仲間との出会いがあると思います。Hondaが多様性の進化を実現するためには、皆さんの力が必要です。皆さんがご自身の夢を持ち、努力することがHondaにとっての原動力になると私は信じています。皆さんの姿を見て、後輩もまた、勇気づけられるはずです。

 このイベントを通して皆さんが、ご自身の目標を明確しチャレンジするきっかけにして頂ければと思います。完璧でなくて良いんです。自分らしいキャリアを描いて貰いたいと思います。今日の主役は皆さんです。どうぞ楽しく語り合ってください。そして明日からの元気につなげてください。

日経BP社 執行役員 麓氏 基調講演(一部抜粋)

「人生100年時代を自分らしく」

 参加者の皆さん、すごく幸せですよ。立派な会場で、社長をはじめ役員の方々も勢揃い。普通の会社は最初に挨拶したら役員の方帰っちゃいますから(笑)。

 女性活躍といわれて斜に構えている人、いませんか?国も会社も後押ししてくれているこの機会は千載一遇のチャンス。思う存分利用してください。チャンスはいつまでも転がっているものではありません。そうしたらチャンスって言わないですよね。期限付きです。女性活躍推進法も10年間の時限立法。もし斜めに見ていて行動しない人がいたなら、もったいない。皆さんは変わることができる、変えることができる。部門を会社を家庭を地域を、そして社会を変える「Change Maker」になってほしいと思います。

 皆さんはキャリアのオーナーシップを持っていますか?キャリアを描くうえで、大切な2つのことをお話ししたいと思います。それは「キャリアの原点」と「キャリアの転機」です。まずは「なぜ、Hondaに入ったのか?」自動車業界のこの会社でどんなことを成し遂げたいと思っていたか。意外と忘れがちです。もうひとつ「成長を感じられているか?」ストレスもない、居心地のいい場所は一見良さそうですが、成長が望めない場所でもあります。例えば女性はチャレンジの機会を与えられたとき、自分にはできないと尻込みしがちですが、でもそれはチャンスを逃してるということなんです。チャレンジによってもたらされる変化こそ新しい自分への可能性を拓きます。

 そして「私なんてこんなもの、この程度」「きっと失敗するに違いない」「もう年だから」こんな考え方を捨ててください。自分をリスペクトしてください。人生100年時代、遅すぎることはありません。生涯を通じてキャリアは変化し続けます。