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待望の日本上陸を果たしたシビックTYPE R EURO。欧州で優れた評価を獲得してきた鮮烈なデザイン誕生の背景について、モータージャーナリストの河口まなぶさんが司会を務め、デザイナーと語り合う「シビックTYPE R EURO デザイナートークショー」が、Hondaウエルカムプラザ青山にて開催されました。すでに「デザイナーズトーク」のページでご紹介した背景に加え、河口さんがさまざまな裏話を引き出してくれました。また、サプライズ企画として、デザイナーによるスケッチの実演やプレゼントも実施。立ち見の方が出るほどの大盛況となったトークショーの模様をご紹介します。
| 2009年11月23日(月) | |
| ●出演 : | シビックTYPE R EURO、エクステリアデザイン担当 吉田 浩史、インテリアデザイン担当 上本 勝彦 |
| ●司会 : | モータージャーナリスト 河口まなぶ氏 |
たくさんのお客様が見守るなか、司会を務めるモータージャーナリストの河口まなぶさんの紹介により、エクステリアデザインの吉田浩史、インテリアデザインの上本勝彦が入場。さっそく、革新のデザイン誕生についてのトークが始まりました。
| 河口: | 「シビックTYPE R EUROは、5ドアの欧州シビックがベースとなっています。その欧州シビックのコンセプトカーがデビューしたのは2005年のジュネーブショーでした。僕もその会場にいたのですが、黒山の人だかりができているので何かと思ったら、欧州シビックの発表だったんです。正直、日本の自動車メーカーのブースにあれほどたくさんの人が集まるのをジュネーブショーでは経験したことがなかったので驚きました。毎年、刺激的な展示が行われるジュネーブショーで、かつてないほど世界の自動車関係者の注目を集めるくらい欧州シビックは衝撃的なクルマだったわけです。」 |
河口さんは、このクルマのデザインの革新性をこのようなエピソードで紹介。まずはベースとなった欧州シビックのデザインが誕生した背景についての話題がスタートしました。


一度完成したデザインが、LPL(ラージ・プロジェクト・リーダー=開発責任者)の強い想いからやり直しになった欧州シビックのデザイン。
トークショーでは、欧州と日本のデザインスタジオからコンペに出された当初のスケッチをはじめ、一度承認されて見直しとなったクレイモデルまでをスクリーンに写しながら、欧州シビックのデザインができるまでの経緯が語られました。
| 吉田: | 「LPLがやり直しと言ったときには、びっくりしました。開発には日程というのが大きく決まっていて、発売日から逆算していつまでに評価を終えなければならないといった段取りがあります。そうした状況でデザインをやり直しするのですから、発売日に間に合わなくなってしまうのではないかと、かなり焦りました。」 |
| 河口: | 「それを焦りながらも一生懸命やって、このクルマがデザインをチェンジするわけですよね?」 |
| 吉田: | 「当時は戸惑いもありましたが、あの『ちょっと待った!』がなければこのデザインが出ていなかったわけですから、今思うとよかったなと思っています。」 |
| 河口: | 「インテリアはどうだったのですか?」 |
| 上本: | 「インテリアも欧州と日本のコンペで日本案が採用されたのですが、スケッチの最初の段階で『いままでにない先進感がある』と良い評価を得て、つくり込みなどいろいろと大変でしたが、開発自体はスムーズに行きましたね。」 |
| 河口: | 「先ほどジュネーブショーの話をしましたが、そのあとで雑誌とかウェブで欧州シビックの報告をしたら、ものすごくみなさんからの反応がよかったんです。そのときのことは今でもよく覚えていて、本当に良いデザインというものは国境を越えるというか、どこへ持っていっても良いデザインなのだと実感しました。そういう意味で、このクルマが日本に入らないと聞いて残念でしたね。」 |
と、河口さんが当時の想いを再び述べると、
| 吉田: | 「同感です。」 |
| 河口: | 「やっぱりそうですか。日本に入れたいという思いはあったんですね?」 |
| 吉田: | 「はい。職場でもそういう話をしていました。欧州専用車とわかっていながらデザインしたのですが、そのクルマを日本の街の中で見る機会がないというのは残念です。やはり開発者としては、お客様に喜んで乗っていただいている姿を目にしてこそ、自分のモチベーションUPにフィードバックされるところがあるので、デザインした者として、日本で乗れるようになってくれないかなと常に思っていました。」 |
続いて河口さんは、翌年のジュネーブショーの際にドイツからジュネーブまで欧州シビックで移動したときのエピソードを紹介します。
| 河口: | 「高速道路のパーキングに停めて10分くらい休憩をとって戻ってくると、クルマのまわりに人だかりができているんです。ヨーロッパで新しいクルマが出ても、そこまで人は集まってこない。なかには『座らせてくれ』と言う人もいて、みんなものすごく興味を持っていましたね。」 |




欧州シビックを経て、話題はTYPE R EUROに移っていきました。
| 河口: | 「TYPE Rをデザインするというのは、非常にプレッシャーじゃないかという気がします。最初のTYPE Rは1992年に出たNSX-Rで、そこから歴代のTYPE Rが生まれたわけですが、TYPE Rの手法というか文法といったものがあると思うんです。でも一方でデザイナーとしては自分たちの世代なりの表現をしたいなど葛藤されたりしますか?」 |
との問いに、
| 吉田: | 「Honda以上にTYPE Rはブランドとして強いものがあり、そこに文法みたいなものも多少あると思うんですけど、いかにそこで自分たちの想いだとかお客様の意見を反映させていくかということが腕の見せ所だと思います。今回のTYPE R EUROは、いわゆるボーイズレーサーにはしたくなかったし、オトナが乗っても満足できるクルマにしようという意識でデザインに取り組みました。」 |
| 上本: | 「TYPE Rとひと言で言ってもTYPE R EUROは、国内の4ドアのTYPE Rと若干考え方が違います。国内のTYPE Rはサーキットベストで“削ぎ落としていく”という考え方なんですけど、TYPE R EUROは長距離を快適に、さらにスポーティに移動できるという欧州ならではの考え方でつくりました。その使われ方をイメージしてスポーティさをどう入れていくかという考え方でデザインしたので、わりと自分の思い通りに進められました。」 |
あまりにも情熱にあふれた二人の意気込みに、開発チームから「お前たちのイメージするTYPE Rをつくってみろ」と言われたのはデザイナーズトークでもご紹介した通り。しかし実際は、もともとスポーティな欧州シビックをさらにスポーティにするにはどうするかと悩み、その苦悩を乗り越えてのデザインだったようです。「コストより、欧州でいかに際立つデザインであるか」を徹底的に優先したLPLの強い想いに支えられ、二人のデザイナーは、燃えに燃えてTYPE Rのデザインを楽しみながらつくり上げていった経緯を語っていました。
最後に、欧州でのデビュー当時からシビックTYPE R EUROに乗った経験を持つ河口さんが、走りのよさについて補足してくれました。
| 河口: | 「僕は、日本への上陸以前に、欧州でかなり長距離をこのクルマで走っています。さらに、日本へ個人輸入で手に入れた方のクルマにも乗りました。そして今回の上陸に際し、あらためて乗ってみました。その結果、やっぱり自分が以前から思っていた通り、日本で乗ってもいいクルマだと痛感しました。欧州でデビューしたときに乗ってから既に2年ほど経っていて、その間に他の欧州のホットハッチがいろいろ登場しているわけで、評価基準みたいなものが変わってきたと思うんです。そうした経験を経て今乗っても非常に乗りやすかったですし、さすがHondaだなというエキサイティングな部分ももちろんありました。1回は雨で、欧州の最新のライバルと比較しながら乗ったんですね。雨の中、欧州各車とくらべても全然負けてないですし、むしろNAで200馬力以上出しているHondaエンジンの良さを痛感しました。」 |
| 河口: | 「たまたまその時、日本の4ドア シビックTYPE Rも一緒に乗りました。雨が降っているような状況でワインディングを走ると、シビックTYPE R EUROがいろいろな道を走ることを想定してつくられたことがよくわかる仕上がりだったし、逆にそういった部分があるからこそ日本の(4ドアの)TYPE Rも異なるキャラクターとして際立つのだと思います。今までは日本のTYPE Rだけだったのですが、欧州で育まれたシビックTYPE R EUROという選択肢が増え、Hondaの持っているスポーツカーに対する懐の深さが感じられると思います。」 |
| 上本: | 「僕も日本の試乗会などでこのクルマが走っている姿を見ているのですが、実際お客様が乗っている、使っているところを見たいですね。全部で2,010台なので見る機会は限られると思いますが、お客様が喜んでくださったらうれしいですし、やりがいにも繋がっていきます。」 |
吉田も上本も、自身がデザインしたシビックTYPE R EUROが日本に投入される夢がついに叶い、みなさんが楽しまれている姿を見ることがデザイナーとして一番のよろこびであると語っていました。



欧州シビックの話題からシビックTYPE R EUROのデザインについてまで、ひとしきり語られたところでトークショーを終え、質疑応答に移りました。河口さんが問いかけるとすぐに手が挙がり、リアデザインのディテールについて、リアのスポイラーの位置の考え方、デザインとボディカラーの関係についてなど、多くの方が質問されました。
限られた時間ではありましたが、質問された5名のうち3名がすでにシビックTYPE R EUROオーナーであったことに、他の参加者の方々も驚かれていたようです。
質疑応答のあと、エクステリアデザイナーの吉田が、最近のデザイン作業で主流になっている、コンピューターを用いたデジタルスケッチワークをデモンストレーション。会場に集まった方々は、ペンタブレットを使い瞬く間にスケッチが描かれる様子に興味深げに見入っていました。
さらに、出来上がったサイン入りのスケッチをプレゼントするというサプライズも。10枚限定でしたので急遽ジャンケン大会が行われました。ジャンケンで数名にプレゼントしたあと、上本から、「オーナーの方が会場にいらっしゃっているようなので、あとはオーナーの方に差し上げたいと思います。」と提案。嬉々として立ち上がったオーナーの方に残りのスケッチが贈られました。スケッチを受け取られた方が司会を務めた河口さんにもサインをもらうなど、和やかな雰囲気のもとトークショーは終了。デザイナーの熱い姿勢が会場の参加者を巻き込み、あっという間の1時間半でした。
