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優れた技術を用いて、人にとって役立つ、人の気持ちをわくわくさせる「新しい道具」を創造する。
それが、4ストロークエンジンの船外機やハイブリッド除雪機、インバーター発電機など、
独創的な汎用製品を生み出してきたHondaの想いであり、ポリシーです。
「趣味で農作業を楽しむ人のための身近なパートナー」をコンセプトとし、家庭用のカセットガスボンベを
燃料として動く耕うん機「ピアンタ」も、そんな「新しい道具」のひとつとして誕生しました。

汎用製品は「土を耕す」「雪を飛ばす」「電気を起こす」など単機能の「道具」であるため、デザイナーが機構や機能も含めて一から考え出すことになります。
デザインを担当した東はこれまで船外機などを主に手がけてきていたため、耕うん機のデザインを担当するのは初めてのことでしたが、船外機ならば港で、除雪機ならば雪国にこもってデザインをするのと同じように、ピアンタのデザインもまずはデザイナー自身がオーナーになりきるところからスタートです。
ピアンタのオーナーになりきるための場所は、もちろん畑。研究所の近くにある畑に出かけ、耕うん機を使って土を耕します。鋤や鍬を使ったときとは比べものにならないほど「フカフカ」になった土を踏みしめる感覚は新鮮で、野菜も強く、大きく育ちそう。耕うん機はプロの作業機械としてだけでなく、趣味で使っても楽しい道具なのだという新たな発見がそこにはありました。
この楽しさや便利さを、もっとたくさんの人に知ってもらうために、もっとやさしく、かわいらしく、使いやすいデザインを徹底的に追求しよう。それが、ピアンタのデザインのスタート地点になりました。



めざしたのは、仕事を終えたときに、「思わず撫でたくなるような耕うん機」というまったく新しいコンセプトの実現。
「耕うん機が初めて」であったことは、従来の概念にとらわれない製品をつくり出すためにはかえって好都合だったとも言えます。
まず、大豆の色をイメージしたやさしいホワイトのカラーリング、丸みを帯びたやわらかいフォルムでエンジンなどの機械部分をしっかりとカバーしました。
これらは「土を耕す性能」にはほとんど関係がないため、これまでは採用されてこなかったものですが、実際に機械部分をすっぽり隠してみると、安心感が段違い。左右対称のフォルムは作業をするときの安定感にも寄与することがわかりました。
ちなみに、「赤」がイメージカラーだったHondaの耕うん機にあえてホワイトというカラーリングを採用したのは、畑でひときわ輝き、多くの人に愛される存在になってほしいと考えたから。これまでの耕うん機にはない、高級感のあるエンブレムをワンポイントとしてあしらったのも、その想いからです。
また、正面から見たときにはまるで2頭身であるかのように見える「頭」と「体」のバランスも、「プロ用の作業機械」ではなく「身近なパートナー」であるピアンタにとって「土を耕す性能」と同じくらい大切な要素。
本来は風に当てて冷やす必要のあるエンジンはカバーによってすっかり隠れてしまいますが、設計を担当するスタッフと協力して、ボディの下部に風の通り道を設けることで、「熱」の問題をクリアしています。
そのままセットするのではなく、白と黒のツートンカラーの専用ケースに収めて使う燃料のカセットガスボンベは、セットするときの方向のわかりやすさと、見た目の優しさを両立させたもの。
信頼性や安全性、土を耕す性能といった、耕うん機にとって必要不可欠な機能には、Hondaが長年にわたって培ってきたノウハウを余すことなく注ぎ込みながらも、まったく新しいデザインを試みたということが、おわかりいただけはないでしょうか。



いかにコンパクトサイズといえどもピアンタの重量は約20kg。一人で持ち上げて運ぶことも可能な重さではありますが、使う人に負担をかけず、気軽に使ってもらうためには「重さを気にせず使えるデザイン」も不可欠でした。
たとえば作業に向かうとき、農園から帰るときには、着脱式の車輪が活躍しますし、ボンベケースを守る役割も兼ねたキャリーハンドルは、左右から二人一緒に持ちやすい形状にしてあります。
さらに、クルマのラゲッジスペースに土を落として汚してしまわないよう採用した、作業後に耕うん爪をカバーする専用ケースは、本体を持ち上げなくても下から半回転させるだけで収納できる仕組みです。
最終的にはプランターをイメージしたやわらかい形状に仕上げてありますが、そのルーツは現物を目の前にしながらスタッフ全員で作った、手作りの「段ボール細工」。
先進の技術を核にした製品でも、特に「使いやすさ」に関するデザインは、いまだ現場でのこんなに泥臭いデザインが行われているのです。
こうして、ピアンタは、従来の「プロ用の作業機械」といったイメージを覆す、思わず撫でたくなるようなルックスはもちろんのこと、燃料の保管・運搬が簡単で持ち運びも楽、作業をするときにも安心感があって使いやすいという、趣味で農作業を楽しむ人のための耕うん機としてのひとつの理想とも言えるデザインを実現することができました。
Hondaはこれからも、動力を使って人のくらしを楽にしたい、楽しくしたいと考えた創業者、本田宗一郎の時代から変わることのない「原点」ともいえる想いを大切にしながら、ピアンタのような「新しい道具」の創造に挑み続けます。