9月3日(土)、シャーロット・モーター・スピードウェイにおいて、モトクロス世界選手権の第17戦アメリカズGPが開催されました。MXGPクラスは、ルーキーシーズンにCRF450RWを駆り、チャンピオンを獲得したスロベニア出身の19歳、ティム・ガイザー(Team Honda Gariboldi Racing)が、タイトル決定戦となった今大会を表彰台で締めくくりました。
ティム・ガイザー
Team Honda Gariboldi Racing
今大会を2位に65ポイントの差をつけて臨んだガイザーは、勝利を信じていましたが、栄光の瞬間は想定よりも早く、ハラハラし通しのレース1が終了した時点で訪れました。シリーズポイントの計算上、ライバルのアントニオ・カイローリ(KTM)を10ポイント上回る必要があったガイザーは、好スタートを切って4番手につけました。ジェレミー・バン・ホービーク(ヤマハ)を相手に3番手争いを続ける反面、グレン・コルデンホフ(KTM)とクレモン・デサール(カワサキ)に追われる展開となりました。一方でタイトル争いの当事者であるカイローリは、15番手と出遅れました。その後のばん回で13位となったカイローリですが、ガイザーは4位でフィニッシュ。この段階で両者のポイント差は75となり、残りの3レース(最大可能得点=75)でガイザーがノーポイントを喫しても同点になるため、優勝回数でカイローリを上回るガイザーのタイトル獲得が確定しました。15年のMX2クラスのチャンピオンに続き、ガイザーはルーキーシーズンで16年のMXGPクラスのチャンピオンに輝きました。
ティム・ガイザー
Team Honda Gariboldi Racing
続くレース2では、タイトル争いのプレッシャーから解放されたガイザーは、全力でのアタックを敢行。好スタート直後の1コーナーではトップに立ち、2番手のイーライ・トーマック(カワサキ)を5周にわたってリードしたガイザーでしたが、小さなミスでトーマックに先行を許しました。それでも2位でフィニッシュしたガイザーは、大会総合2位の座を確保し、今シーズン17戦を消化したこの時点で、15度目となるポディウム登壇を果たしました。
Team HRCのイブジェニー・バブリシェフは、オールニューのCRF450RWをデビューさせ、有望なパフォーマンスを披露しました。
イブジェニー・バブリシェフ
イブジェニー・バブリシェフ
レース1は試運転のようなものになったことは否めませんが、ニューマシンを本番で初めて走らせたバブリシェフは、自分自身の成績に対する歯がゆさをレース2にぶつけ、終始ポディウムをかける戦いを演じました。
スタートの段階でうまく飛び出したバブリシェフは、序盤から2番手争いに加わりました。レースが進行すると、このバトルは3番手争いへと変化しましたが、バブリシェフとチームは、今回のデビュー戦でみせたニューマシンの有望なポテンシャルに自信を深めることになりました。
イブジェニー・バブリシェフ
イブジェニー・バブリシェフ
一方、チームメートのゴーティエ・ポーリンは、この日のフリープラクティスとタイムドプラクティスの時点でトップレベルの走りを披露していましたが、残念ながらレースでは運がなかったようでした。レースでは2度とも、スタートで出遅れ、混戦に飲み込まれてしまいました。レース2では、わだちに足を取られて転倒した際に、足首をひねってしまいました。
イブジェニー・バブリシェフ
ゴーティエ・ポーリン
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 3 | E.トーマック | カワサキ | 18 | 35'10.508 |
2 | 51 | J.バルシア | ヤマハ | 18 | +22.813 |
3 | 89 | J.バン・ホービーク | ヤマハ | 18 | +24.273 |
4 | 243 | ティム・ガイザー | 18 | +25.080 | |
5 | 25 | C.デサール | カワサキ | 18 | +27.325 |
6 | 259 | G.コルデンホフ | KTM | 18 | +29.443 |
8 | 21 | ゴーティエ・ポーリン | 18 | +31.620 | |
11 | 777 | イブジェニー・バブリシェフ | 18 | +55.212 | |
18 | 77 | アレッサンドロ・ルピーノ | 17 | +1Lap | |
20 | 400 | 山本鯨 | 17 | +1Lap | |
25 | 595 | アンドレス・ベネナウラ | 16 | +2Laps | |
26 | 315 | ニクラス・グスタフソン | 16 | +2Laps | |
28 | 655 | ジョン・パウク | 15 | +3Laps | |
31 | 316 | ドリュー・クレイヴン | 15 | +3Laps | |
36 | 462 | マイケル・スタラーチェ | 1 | +17Laps |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 3 | E.トーマック | カワサキ | 18 | 35'21.042 |
2 | 243 | ティム・ガイザー | 18 | +05.984 | |
3 | 259 | G.コルデンホフ | KTM | 18 | +08.704 |
4 | 777 | イブジェニー・バブリシェフ | 18 | +11.509 | |
5 | 89 | J.バン・ホービーク | ヤマハ | 18 | +12.470 |
6 | 461 | R.フェーヴル | ヤマハ | 18 | +19.778 |
17 | 77 | アレッサンドロ・ルピーノ | 18 | +1'29.961 | |
18 | 400 | 山本鯨 | 17 | +1Lap | |
21 | 595 | アンドレス・ベネナウラ | 17 | +1Lap | |
22 | 315 | ニクラス・グスタフソン | 16 | +2Laps | |
25 | 655 | ジョン・パウク | 15 | +3Laps | |
29 | 316 | ドリュー・クレイヴン | 14 | +4Laps | |
30 | 21 | ゴーティエ・ポーリン | 9 | +9Laps | |
34 | 462 | マイケル・スタラーチェ | 1 | +17Laps |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 84 | J.ハーリングス | KTM | 18 | 35'14.964 |
2 | 17 | C.ウェブ | ヤマハ | 18 | +04.489 |
3 | 214 | A.フォークナー | カワサキ | 18 | +29.218 |
4 | 64 | T.コビントン | ハスクバーナ | 18 | +51.237 |
5 | 10 | C.ブラーンデレン | KTM | 18 | +1'01.275 |
6 | 99 | M.アンスティ | ハスクバーナ | 18 | +1'03.744 |
20 | 216 | ヴァン・マーティン | 17 | +1Lap |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 17 | C.ウェブ | ヤマハ | 18 | 35'23.073 |
2 | 214 | A.フォークナー | カワサキ | 18 | +03.876 |
3 | 84 | J.ハーリングス | KTM | 18 | +05.424 |
4 | 64 | T.コビントン | ハスクバーナ | 18 | +50.870 |
5 | 91 | J.シーワー | スズキ | 18 | +54.056 |
6 | 6 | B.パテュレル | ヤマハ | 18 | +55.139 |
18 | 216 | ヴァン・マーティン | 17 | +1Lap |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント | |
---|---|---|---|---|
- | 1 | ティム・ガイザー | 693 | |
- | 2 | A.カイローリ | KTM | 603 |
- | 3 | M.ナグル | ハスクバーナ | 565 |
- | 4 | R.フェーヴル | ヤマハ | 549 |
- | 5 | イブジェニー・バブリシェフ | 522 | |
- | 6 | J.バン・ホービーク | ヤマハ | 513 |
- | 13 | ゴーティエ・ポーリン | 243 | |
- | 20 | アレッサンドロ・ルピーノ | 111 | |
▼ | 27 | スティーヴン・ルノワ | 38 | |
▼ | 28 | 山本鯨 | 38 | |
▼ | 32 | デイモン・グラウルス | 16 | |
▼ | 33 | プリット・ラトセップ | 15 | |
▼ | 34 | ゲート・クレスティノフ | 13 | |
▼ | 45 | ヴァレンティン・テイレット | 5 | |
▼ | 55 | ニコラス・カレンツァ | 1 | |
▼ | 59 | タンナラ・ペンジャン | 1 |
順位 | マニュファクチャラー | 総合ポイント | |
---|---|---|---|
- | 1 | 729 | |
- | 2 | ヤマハ | 666 |
- | 3 | KTM | 652 |
- | 4 | ハスクバーナ | 580 |
- | 5 | カワサキ | 503 |
- | 6 | スズキ | 357 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント | |
---|---|---|---|---|
- | 1 | J.ハーリングス | KTM | 689 |
- | 2 | J.シーワー | スズキ | 595 |
- | 3 | B.パテュレル | ヤマハ | 485 |
- | 4 | M.アンスティ | ハスクバーナ | 473 |
- | 5 | P.ヨナス | KTM | 403 |
- | 6 | D.フェランディス | カワサキ | 378 |
- | 16 | ミケーレ・セルベリン | 165 | |
▼ | 20 | ホルヘ・ザラゴザ | 126 | |
▼ | 23 | ヘンリー・ヤコービ | 94 | |
- | 28 | ダヴィド・エーブルトゥ | 54 | |
▼ | 31 | デイモン・グラウルス | 43 | |
▼ | 40 | ギウセッペ・トロペペ | 25 | |
▼ | 58 | ハビエル・バスケス | 5 | |
- | 62 | ヴァン・マーティン | 4 | |
▼ | 64 | イグニアシオ・トーヤ | 2 |
順位 | マニュファクチャラー | 総合ポイント | |
---|---|---|---|
- | 1 | KTM | 785 |
▲ | 2 | カワサキ | 611 |
▼ | 3 | スズキ | 606 |
- | 4 | ヤマハ | 599 |
- | 5 | ハスクバーナ | 585 |
- | 6 | TM | 358 |
- | 7 | 297 |
ティム・ガイザー(MXGP 4位/2位 総合2位)
「すごいことです。このタイトルを獲得できたことが信じられません。状況がまだ理解できません。先週のアッセンは不運な週末でした。決勝の2レースとも散々な結果だったので、ひどく落ち込みました。だからここ2〜3日は自分のことを強く信じて、気持ちを切り替える必要がありました。我々のシーズンはここまですばらしく順調だったため、"このままでは終われない。今シーズン貫いてきた我々のベストパターンで締めくくらなければならない。しっかりと走りきって、タイトルを獲得して、ポディウムに立つことができたら完璧だ"と、自分に言い聞かせました。感謝したい相手が大勢います。Honda、Team HRC、Team Honda Gariboldi Racing、家族、特に父親。我々はこの目標に向かって、絶えず努力を惜しみませんでした。その成果が2年連続の世界チャンピオンです。これ以上はない最高の結果を手に入れました。ファンの応援も今年はすごかったです。もちろん去年から絶大なサポートを受けていましたが、今年はそれを上回るものがありました。スロベニアにおけるモトクロス人気の向上に貢献できたと思うし、このスポーツの成長を手助けできる人間になれたことは誇りであり喜びでもあります。カタールで2勝を挙げたことは、もちろんびっくりする幕開けでしたが、あの時点では長いシーズンの始まりに過ぎませんでした。チャンピオンの可能性が見えてきたのは、第9戦スペインGPのころでした。スペインからマントバ(第12戦イタリア)までの8レースで7勝したことで、現実的なものになりました。この走りをシーズン終盤までキープできたら、去年のMX2クラスに続いて、MXGPクラスでもチャンピオンになれると思いました。このタイトルがすごく欲しかったです。そのために今まで以上のトレーニングを続けてきたし、チームとしても今まで以上に努力を続けてきました。MX2クラスでチャンピオンになって一年もしないうちに、我々はMXGPクラスでもチャンピオンになりました。こんなにすごいことを達成するために、すべてを注ぎ込んでくれた、Hondaとチームに感謝したいです。どれほど感謝すればいいか分からないくらいです。マシンはとてもすばらしかったです。マシンと良好な関係を築いて意気投合しなければならないとき、マシンはライダーの身体の一部になります。我々はマシンのことを"ベイビー"と呼んでいます。2人目の彼女みたいにかわいいんです。今年もCRFは完ぺきでした。これ以上のマシンはあり得ないし、要求することはなにもなかったです。我々には今年もチャンピオンになるという強い信念がありました。僕は体制に恵まれたし、勝てる特権を与えられていました。今シーズンが終わってから、ライダーとしても人間としても成長している自分に気づくと思います。まだ実感がないし、今の段階ですべてをかみしめることは難しいです。もしかしたら、明日の朝目覚めときに、本当に実感することになるのかもしれません。どんな夢であっても、信じて努力を続ければかなう。今日は僕にとってもう一つの夢が実現しました」
イブジェニー・バブリシェフ(MXGP 11位/4位 総合6位)
「今日は自分なりにとても楽しめました。コースはよかったし、2017年モデルのCRF450RWはすばらしかったです。最初はニューマシンがレース中にどんな動きをするのか確かめながら走ったので、本当に慣れるには少々時間がかかりました。レース2ではさらに感触がよく、好スタートを切ったあとは終始3番手争いをしながら4番手のポジションをキープしました。スピード差がなかったので抜けなかったですが、ニューマシンに表彰台に上がれるペースがあったことは確かです。とても気持ちよく走れたし、ライディングを楽しめました。このマシンならもっと上のリザルトを残せると確信しています」
ゴーティエ・ポーリン(MXGP 8位/リタイア 総合15位)
「シャーロット・モーター・スピードウェイはとてもいい施設で、コースもすばらしかったです。昨日の雨でかなり影響を受けたはずですが、スタッフの尽力によって、レース時にはコースコンディションがすっかり回復しました。残念ながら、今日は2度もスタートに失敗し、難しいレースになってしまいました。ライディング自体はよかったのに、スタートだけは納得がいきません。コースレイアウトはとてもテクニカルで、スピードを保てるいい流れがありました。もしスタートに成功していたら、トップ争いに絡めていたはずです。レース2では足首をひねってしまったので、リタイアしなければならなかったです。あるコーナーのイン側でぬかるみに足を取られて、それが原因でフロントを滑らせて転倒。その際にひねってしまいました。チームスタッフが処置してくれたので痛みは引いてきましたが、転倒した直後は、痛みで走り続けることができませんでした」