モトクロス世界選手権第2戦タイの会場となったスパンブリー・モータースポーツランドは、気温37℃、湿度58%の蒸し暑さに覆われました。そんな中で行われた決勝当日は、Team HRCのイブジェニー・バブリシェフとゴーティエ・ポーリンにとってフラストレーションの溜まる一日となりました。開幕戦で衝撃的なデビューを果たしたティム・ガイザー(Team Honda Gariboldi Racing)は、またしても彼の本質を披露し、表彰台登壇を成し遂げました。
ティム・ガイザー
ティム・ガイザー
レース1のスタートでは、上位に多くのHonda勢がいる中、バブリシェフは8番手、ポーリンは14番手と集団に飲み込まれましたが、ガイザーは2番手と好位置につけました。ガイザーの前を走るのは、Hondaマシン「CRF450R」を駆る日本人ライダーの山本鯨(Team Honda Redmoto Assomotor)。好スタートを決め、自身初のホールショットを奪いました。ガイザーは、過酷なレース状況下の中でも、前戦から続く勢いそのままに、レース1を3位でフィニッシュ。Team HRCの両ライダーも、酷暑の中を勇敢に躍進し、バブリシェフは4位、ポーリンは終盤に最速ラップを刻み、7位でチェッカーフラッグを受けました。
レース2では、1コーナーの立ち上がりでポーリンが4番手につけるスタートを決めました。しかし不運なことに、最終コーナーでコントロールを失ったライバルのマシンのリアが、ポーリンのマシンの前輪に衝突し、転倒。ここで大きく順位を落としました。バブリシェフは、1コーナーで10番手につけると、徐々に順位を上げ、7位でフィニッシュ。2ポイント差でポディアム登壇を逃しましたが、総合4位となりました。ポーリンは9位までばん回したものの、もっと上位が望めたはずのレースだっただけに、悔いの残る結果となりました。
ガイザーは1コーナーでエンストしたマシンとの接触を避けるため順位を落としましたが、その後は5位までばん回し、総合2位。見事2戦連続となる表彰台登壇を果たしました。
イブジェニー・バブリシェフ
イブジェニー・バブリシェフ
過酷な大会を終えて、次戦は3週間後の3月28日(月)にサンドの難所として知られるオランダのファルケンスワードで、ヨーロッパグランプリが開催されます。
イブジェニー・バブリシェフ
ゴーティエ・ポーリン
CRF250RWを駆るホルヘ・ザラゴザ(Team Honda Gariboldi Racing)は、レース2でもう少しでホールショットという見事なスタートを決めました。1コーナーを3番手で立ち上がり、終始5番手を走行していました。しかし、初参戦となるタイの酷暑に体力を消耗し、11位まで後退してフィニッシュとなりました。
ホルヘ・ザラゴザ
ホルヘ・ザラゴザ(MXGP 12位/11位 総合11位)
「レース2ではとてもいいスタートが切れて、終始トップ5で走れたので満足しています。ただし終盤に暑さやいろいろな条件が重なり疲れてしまいました。上位を走行することにあまり慣れていないので、それがさらによくない方に作用したと思います。最後はあと1周あるのにチェッカーだと勘違いして、7番手から11番手まで下がってしまいました。レースごとに上達している実感があるので、この流れを続けたいです。今日途中まで走っていたポジションが、自分の目指している順位です」
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 461 | R.フェーヴル | ヤマハ | 19 | 34'04.313 |
2 | 222 | A.カイローリ | KTM | 19 | +02.775 |
3 | 243 | ティム・ガイザー | 19 | +05.871 | |
4 | 777 | イブジェニー・バブリシェフ | 19 | +18.040 | |
5 | 89 | J.バン・ホービーク | ヤマハ | 19 | +21.958 |
6 | 100 | T.サール | カワサキ | 19 | +33.137 |
7 | 21 | ゴーティエ・ポーリン | 19 | +36.125 | |
14 | 77 | アレッサンドロ・ルピーノ | 19 | +1'16.599 | |
18 | 400 | 山本鯨 | 18 | +1Lap | |
20 | 171 | タンナラ・ペンジャン | 16 | +3Laps |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 461 | R.フェーヴル | ヤマハ | 19 | 34'41.154 |
2 | 8 | B.タウンリー | スズキ | 19 | +06.038 |
3 | 12 | M.ナグル | ハスクバーナ | 19 | +07.876 |
4 | 89 | J.バン・ホービーク | ヤマハ | 19 | +10.723 |
5 | 243 | ティム・ガイザー | 19 | +20.508 | |
6 | 24 | S.シンプソン | KTM | 19 | +23.325 |
7 | 777 | イブジェニー・バブリシェフ | 19 | +32.355 | |
9 | 21 | ゴーティエ・ポーリン | 19 | +38.176 | |
13 | 77 | アレッサンドロ・ルピーノ | 19 | +50.244 | |
18 | 400 | 山本鯨 | 19 | +2'02.034 | |
23 | 171 | タンナラ・ペンジャン | 14 | +5Laps |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 84 | J.ハーリングス | KTM | 19 | 34'33.241 |
2 | 59 | A.トンコフ | ヤマハ | 19 | +32.233 |
3 | 91 | J.シーワー | スズキ | 19 | +37.283 |
4 | 6 | B.パテュレル | ヤマハ | 19 | +41.235 |
5 | 64 | T.コビントン | ハスクバーナ | 19 | +59.709 |
6 | 152 | P.ペトロフ | カワサキ | 19 | +1'12.586 |
12 | 101 | ホルヘ・ザラゴザ | 18 | +1Lap | |
17 | 71 | デイモン・グラウルス | 18 | +1Lap | |
28 | 29 | ヘンリー・ヤコービ | 0 | +19Laps |
順位 | No. | ライダー | マシン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 84 | J.ハーリングス | KTM | 19 | 34'48.194 |
2 | 99 | M.アンスティ | ハスクバーナ | 19 | +24.954 |
3 | 91 | J.シーワー | スズキ | 19 | +26.854 |
4 | 59 | A.トンコフ | ヤマハ | 19 | +39.636 |
5 | 41 | P.ヨナス | KTM | 19 | +43.934 |
6 | 6 | B.パテュレル | ヤマハ | 19 | +50.686 |
11 | 101 | ホルヘ・ザラゴザ | 19 | +2'05.574 | |
17 | 71 | デイモン・グラウルス | 18 | +1Lap |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント | |
---|---|---|---|---|
▲ | 1 | R.フェーヴル | ヤマハ | 92 |
▼ | 2 | ティム・ガイザー | 86 | |
- | 3 | イブジェニー・バブリシェフ | 74 | |
- | 4 | J.バン・ホービーク | ヤマハ | 68 |
- | 5 | A.カイローリ | KTM | 64 |
- | 6 | S.シンプソン | KTM | 57 |
▲ | 11 | ゴーティエ・ポーリン | 37 | |
- | 17 | アレッサンドロ・ルピーノ | 23 | |
- | 19 | 山本鯨 | 11 | |
- | 22 | タンナラ・ペンジャン | 1 |
順位 | マニュファクチャラー | 総合ポイント | |
---|---|---|---|
▲ | 1 | ヤマハ | 92 |
▼ | 2 | 86 | |
- | 3 | KTM | 71 |
▲ | 4 | スズキ | 60 |
▲ | 5 | ハスクバーナ | 55 |
▼ | 6 | カワサキ | 47 |
ティム・ガイザー(MXGP 3位/5位 総合2位)
「シーズンの中で最も厳しいといわれるレースを終え、今回の結果にはとても満足しています。レース2ではあまりいいスタートが切れず、1コーナーで自分の目の前にいた(アントニオ)カイローリ(KTM)がエンストして、追突しそうになりました。それでも5位までばん回してフィニッシュできたのはよかったです。2戦連続で表彰台に立てたのはこの上ない喜びです。すばらしいマシンを仕上げてくれたチームとHRCスタッフ全員に感謝したいです。それからシーズンオフにトレーニングを見てくれた父親にも感謝しています。冬の間の努力が報われました。今大会は前戦のカタールほどではないが、悪くない大会でした。体調もマシンも申し分ありません。2戦連続表彰台というリザルトは、シーズンの入り方として最高だと思います」
イブジェニー・バブリシェフ(MXGP 4位/7位 総合4位)
「今大会はここまでの自分にとって最も辛いレースでした。コースも気候条件も厳しかったです。なかなかコースを攻略できませんでした。特にコーナリングがうまくいかず、スピードを維持することができませんでした。それでも今日のコースは、昨日ほどワダチが多くはなかったです。主催者とコース設営担当者が夜通しで作業してくれたおかげだと思います。レース1は4位をキープできたので、その結果には満足しています。ただライン取りに苦労して、思いきり攻められなかったことは確かです。レース2ではスタートに失敗して、9番手からの追い上げとなりました。(ショーン)シンプソン(KTM)の直後に到達してからは、無理にアタックすることができず彼を抜くことができませんでした。1年前のタイグランプリと比較すると、今年の自分はかなり違ったと思います。シーズンオフの取り組みや、暑さの対処法を変えた成果が出たと思います。客観的に見てもその点に気付いてもらえたと思います。とても暑くて辛い大会でしたが、ライダーだけでなくメカニックたちにとっても同じことです。酷暑の中で重要な仕事をこなしてくれた彼らに感謝したいです」
ゴーティエ・ポーリン(MXGP 7位/9位 総合7位)
「コースと暑さの影響で決して簡単ではない大会になりましたが、それも我々が愛するモトクロスの側面です。レース2では好スタートを切ることができたし、走行するごとにコースを覚えてうまく走れるようになっていました。1周目の終わりに(バランタン)ギヨー(ヤマハ)がグリップを失い、左から右に大きく滑り出しました。彼のマシンに直撃されて、僕はどうすることもできませんでした。マシンと離ればなれになり放り出されました。レースではよくあることで、決して彼のせいではないのですが、恐ろしかったのは地面に倒れている間に砂塵の中からなにが現れるか見えないことでした。それでもなんとか起き上がって、何周かいいペースで走るうちに、カイローリや(ケビン)ストライボス(ヤマハ)を抜いたし、最後まで攻めることができました。同じことだけど、がんばり続けるだけです。最終戦まで長い道のりですが、徐々にリズムに乗ってきている感じがします。ここまでたった2週間の間に我々の勢いを止めるようなことが起きて、ちょっとフラストレーションを感じますが、前を向いて行かなければなりません。もしレースで先頭に立っていたら、他のライダーからなにも影響を受けなかったはずなので、攻めるだけです。自分もチームもがんばってきたので、今回のようなことはフラストレーションになりますが、自分が今どこにいるか把握しているし、次のレースを見据えて前向きに行動するのみです」