Team Asia Report

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2017年シーズンレビュー 中上貴晶

IDEMITSU Honda Team Asiaの中上貴晶は、2017年シーズンをランキング7位で終えました。来年から2輪ロードレースの最高峰MotoGPクラスへ昇格する中上に、波瀾万丈の2017年シーズンと彼がMoto2クラスで過ごした6年間、そして来季に向けた意気込みを語ってもらいました。

  • 中上貴晶

―2017年を振り返って

「18戦を戦い終えてランキング7位。簡単に言えば、思っていたような結果を全然残せないシーズンになりました」

―今年の全18戦での、ベストレースは?

「今季初優勝したシルバーストーン(第12戦イギリスGP)です。タイミング的にもMotoGP昇格の発表をした直後のレースだったので、自分に大きな注目が集まっていることは分かっていました。メディアからも、また、ルーチョさん(ルーチョ・チェッキネロ:LCR Hondaの代表であり元GPライダー)やLCR Hondaチームからも見られているという、いつもと違った緊張感がありました。そのプレッシャーの中で後続を引き離して優勝できたのは、今シーズンベストの一戦だったと言えると思います。みんなの期待に応えることができて、自信にもなりました。ただ、シーズン中にできればもう1、2回は勝ちたかったし、勝ち星を上げられる自信もありました。なのに、そこから先は表彰台獲得数も優勝数もゼロで、獲得ポイントも少なかったのが残念です。こんなに苦戦してポイントを稼げないシーズンになるとは思いませんでした」

  • 中上貴晶

―Moto2を6年間走ってきて、最も印象に残っている出来事は?

「昨年のアッセン(第8戦オランダGP)での優勝は、世界グランプリでの初勝利でした。ライダー人生において重みのある大きな一勝で、生涯忘れることのない勝利です」

―では、一番悔しかったのは?

「母国の日本GPで優勝できなかったことが、なによりも心残りです。特に今年は予選でいい走りができて、優勝にとても近い状態だったのに、そこでポール・トゥ・ウインを達成できなかったのは本当に残念です。日本GPは、やはり自分にとって特別なレースなので、結果的に6回のチャンスの中で一度も勝てなかったのは、今考えるとものすごく悔しいです」

―6年間、Moto2で走ってきて、なにを学びましたか?

「今から振り返ると長い6年でしたし、一言で言うのは難しいのですが、イタリアのチームで2年過ごしてからTeam Asiaに移籍し、その長い期間でいろんな経験を重ね、ライダーとして技術面やメンタル面で、そして人間としても大きく成長できた実感があります。もっと成績を残さなければならない立場だったことは分かっていますが、将来に向けてたくさん勉強させてもらった6年間でした」

―ライダーとして、あるいは人間として、大きな影響を受けたのはだれですか?

「Team Asia移籍後の4年間は、監督の岡田忠之さんから技術面やメンタル面、チームやバイクのことなどを、ときに厳しく、ときに優しく、いろんなことを教えてもらいました。岡田さんは最高峰クラスの日本人最多優勝記録を持っており、ランキングでも2位までいった人物です。その人からチーム監督としていろいろ教わることができたので、このチームに移籍して本当によかったと思っています。また、もっと長い時間で考えると、全日本時代にHARC-PRO.の本田重樹さんにはロードレースの基本からライダーとしての心構えまで、有形無形の本当にたくさんのことを教えていただきました。恩人といっていい存在です」

  • 中上貴晶

―IDEMITSU Honda Team Asiaで戦った4年間、アジアという地域を意識することはありましたか?

「いつも念頭に置いていたわけではありませんが、“Team Asiaのライダーとして結果を残せば残すほどアジアの活性化にもつながっていく"ということは頭の隅にありました。自分がTeam Asiaのエースの立場であることは実感していました。そして、アジア・タレント・カップでアジア人が世界に進出する道ができてからは、その子たちが僕たちを観てくれているということを、特に去年あたりから強く肌に感じるようになりました。特に、日本とセパンの大会ではそれを強く感じますね。今まではそんなことを考える余裕もなかったので、それも自分が成長できた部分なのかなと思います」

―来年からの最高峰クラス昇格に、プレッシャーを感じますか?

「それはないですね。小さいころから夢を見てきた目標に到達できたうれしさのほうが優っています。緊張も不安もなく、とにかく今は楽しみで、早く走りたい気持ちが強いです。2018年シーズンはまったく新しいチャレンジで、バイク、タイヤ、電子制御など、なにもかもが未知のことばかりです。だから、まずはバイクに慣れて理解をすることが第一目標です。そして、世界最高のトップライダーたちと一緒に走れることが、今はなによりも楽しみです」