HRCチーム代表 リビオ・スッポ 現場レポート

2017.08.17 Vol.174 Round 11
HRCチーム代表 リビオ・スッポ 現場レポート

不安定な天候のレースウイークを乗りきり、マルケスが4度目のタイトルへ前進

チェコGPからの連戦となった第11戦オーストリアGPは、ドライコンディションの中で決勝レースが行われ、3戦連続5度目のポールポジション(PP)を獲得したマルク・マルケスが、トップグループに加わり2位でフィニッシュしました。これでマルケスは、第7戦カタルニアGPから5戦連続で表彰台に登壇。総合首位をキープしました。

今大会もレースウイークを通じて不安定な天候となり、金曜日には雨が降りました。土曜日と日曜日はドライコンディションになりましたが、気温の変化が大きく、チームにとってはセットアップ、タイヤの選択が難しいレースとなりました。

そうした状況の中、マルケスは史上最多記録を更新中である、通算70回目のPPを獲得。そしてフリー走行、予選に比べて気温の上がった決勝では、中盤まで7台に膨れあがったトップグループに加わり、終盤はアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ)との一騎打ちとなります。先行したのはドヴィツィオーゾと、それを激しく追うマルケスの戦いは、最終ラップの最終コーナーまで続きますが、惜しくも届かず。マルケスは2位でフィニッシュしました。

最終ラップの最終コーナーの攻防は、今季最もエキサイティングな戦いとなり、サーキットに集まった9万を超える大観衆を大いに喜ばせました。

一方、フリー走行でダイレクトでのQ2進出を逃し、予選8番手と厳しいグリッドから決勝に挑んだダニ・ペドロサは、序盤はフルタンクの操縦性に苦しんでペースを上げられませんでしたが、中盤以降は快調にラップを刻み、トップの2人を猛追しました。終盤になると、優勝争いをするマルケスとドヴィツィオーゾの背後に迫りましたが、ペドロサ自身もタイヤの消耗に苦しみ、ペースを上げられずに3位でフィニッシュ。今季2勝目は果たせずも、3戦連続今季7度目の表彰台に立ち、再びチャンピオン争いに加わることになりました。

第10戦チェコGPに続き、連戦となったオーストリアGPでも、Repsol Honda Teamの両選手が表彰台に立つ活躍。そんなチームを率いるリビオ・スッポ監督が、今大会を振り返ります。

―チェコGPからの2連戦となったオーストリアGPのレースの戦略はどういうものでしたか?

「難しいレースウイークになりました。連日、気温がかなり変化し、決勝日は金曜日、土曜日と比べて暖かい一日になりました。そういう状況の中で、マルクは週末を通してとてもいいペースをみせ、土曜日の予選では70回目のポールポジションを獲得。決勝に向けて、彼のペースが非常に快適なものだと感じていました。と同時に、我々はドヴィツィオーゾが非常にいいペースで走っていることも把握していました。そのため、今大会のレース戦略としては、マルクとダニともに、レース前半にタイヤと燃料を節約し、最後にアタックしようというものでした。最終的に両選手ともがすばらしいレースをしてくれたし、今回のレースは完ぺきでした」

―今大会のポジティブポイントと、もしネガティブポイントがあれば教えてください。

「ポジティブなことは、Repsol Honda Teamの2選手が表彰台に立ったことですね。昨年の大会は両選手ともに表彰台に立てず、我々にとって非常に難しいサーキットになっていましたからね。そこから分かることは、RC213Vがますますよくなってきているということです。私たちは、工場でもサーキットでも、エンジニアの仕事を誇りに思っています。残念だったのは…最終コーナーでした。いつだって、あのようなすごいバトルを目にできるのはすばらしいのですが、ときには勝利を手にし、ときにはそれを逃します。ただそういう戦いで、マルクは今回も“勝つまで決してあきらめない姿勢”をみせてくれました」

―レース中、ピットウオールから見ていた感想は?

「マルクが優勝争いをし、ダニが3番手までポジションを上げてきたのはうれしいことでした。最後ラップの戦いはすばらしいショーだったし、世界のすべてのMotoGPファンが、それを見て喜んだと思います。ピットウオールからはさらにエキサイティングでしたけれどね…。というよりも、たいへんなレースでした」

―新たなエアロダイナミクス戦争が始まりました。監督の印象をお聞かせください?

「ここ数年は、すべてのメーカーがエアロダイナミクスを追求するために、これまでにないほど働いてきました。今シーズンは「ウイングレット」の使用が禁止となり、新しいルールが施行されました。そのため、すべてのエンジニアが新しいフェアリングにより新たなメリットを見いだそうとしています。MotoGPはロードレースの頂点であり、エアロダイナミクスを含む多くの分野で、ライバルメーカーを含め、さまざまなソリューションを見ることができます。シーズン終盤には、さまざまなフェアリングが登場することになると思います」

―今大会のインサイドストーリーを教えてください。

「ブルノ(オートモトドラム・ブルノ・サーキット)とレッドブル・リンクの間に、レッドブルのビデオ撮影をするためダニとザルツブルクへ行きました。ダニが“スペシャルエージェント026”に扮したのです。まだご覧になっていないのであれば、ビデオをぜひ見ていただきたいですね」

映画『007』シリーズの主人公、ジェームス・ボンドに扮したペドロサが、ザルツブルクのカジノやレッドブル・ハンガー7などを訪問。レッドブル・リンク上空からのスカイダイビングにも挑戦した。

後半戦のスタートとなった2連戦を終えて、総合首位のマルク・マルケスは、2年連続4度目のタイトル獲得に向けて、また一歩前進しました。今大会の勝利により総合2位に浮上したドヴィツィオーゾには、21点差を16点差に縮められましたが、総合3位のマーベリック・ビニャーレス(ヤマハ)との差は14点から24点へ拡大。総合4位のバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)とは、22点差が33点差となりました。一方、今大会で3位になったペドロサは、総合3位のビニャーレスに11点差、総合4位のロッシに2点差まで迫り、再び、チャンピオン争いに加わりました。

次はシルバーストン・サーキットで開催される第12戦イギリスGP。この大会も不安定な天候との戦いになることが予想されます。チームの総合力が問われる重要な一戦です。

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マルク・マルケス
ダニ・ペドロサ
マルク・マルケス
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