Honda Riders Close Up ~ワークスマシンを駆って、世界に挑むライダー~

MotoGP ティト・ラバト Estrella Galicia 0,0 Marc VDS

MotoGP ティト・ラバト Estrella Galicia 0,0 Marc VDS
Profile
生年月日
1989/05/25
出身地
スペイン
身長・体重
178cm・63kg
チーム(マシン)
Estrella Galicia 0,0 Marc VDS(RC213V)
2016年の成績
MotoGP 総合21位
Vol.1

二輪ロードレース選手権で戦う選手は世界中に数多くいますが、その最高峰であるMotoGPを走ることを許された選手は、頂点を極めたごく一握りの20人少々だけです。それだけに、このモンスターマシンを意のままに操るのは、至難の業でもあります。昨年からその世界最高峰クラスに参戦しているティト・ラバト(Estrella Galicia 0,0 Marc VDS)は、初年度をランキング21位で終えました。この一年をラバトは「つらく、厳しく、痛みのともなう一年でした」と振り返ります。「Hondaのマシンはとても強力ですが、乗りこなすためには時間が必要です。ミスをすれば、その代償を払わなければなりません。僕の昨シーズンはまさにそんな調子で、何度も転倒してしまいました。つらく、厳しく、痛みをともなう一年だったというのは、その理由からです」

このような厳しい状態が続くと、ライダーとしての自信が揺らぎ始めると、ラバトは正直に話します。

「自分でも理由が分からないまま、フロントから転倒してしまうことが何度もありました。ときには、レースウイークの3日間で7回も転倒したこともあります。そんな状態が続くと、どうやってマシンに乗ればいいのか、どんなふうにブレーキすればいいのかと悩み始め、自信を喪失してしまいます。でも、今年のマシンは去年よりも車体や電子制御が進化しているおかげで、だいぶ意のままに乗りこなせるようになってきました。今年はさまざまな面でマシンが進歩していると思います。そしてなにより重要なのは、自分のライディングに関する自信を取り戻せた、ということです」

それにしても、自信を取り戻すまでのこのつらい時期を、ラバトはどんなふうに乗り越えてきたのでしょうか。

「マシンに乗り続けること。それに尽きます。タイヤに関する知識を高めて、あらゆるフィーリングをよくするように努力を続けてきました。そのためには、走り込むことです。走り込むことで、僕は少しずつ思い通りのラインをトレースできるようになってきました」

2017年は、開幕戦のカタールGPで15位、第2戦のアルゼンチンGPでは12位と、連続してポイント圏内で確実にフィニッシュしています。今シーズンの目標については、まずは予選の内容をよくすることだと話しました。

「予選で速く走れるようになって、順位を上げること。そして決勝レースでは、サテライト陣営のトップで終えること。それが今年の僕の目標です」

ところで、Moto2時代に王座を獲得した翌年の15年にはチャンピオンの印である1番のゼッケンをつけて走っていたラバトですが、MotoGPクラスにステップアップした16年以降は毎年、53番のマシンナンバーを選択しています。その理由を尋ねたところ、「ラッキーナンバーだから」だと説明してくれました。

「僕は12歳のときに、スペインのリエジュカップでレースを始めたのですが、その当時はマシンナンバーのことなど全く気にしていませんでした。チームメートたちと順番に51、52、53、と割り振られて、それを使っていたのです。そのあと、世界選手権の125ccクラスにデビューしたころは、時計の頂点を示す12という数字がお気に入りで、しばらくその番号を使っていました。Moto2クラスに昇格したときも、その番号で走りたかったのですが、すでにほかの選手に使用されていたので、その年はケビン・シュワンツ選手にちなんで、34番を選択しました。そのあと、子供時代からなじみのある53番を使うことにして、この番号をつけていた14年に、世界チャンピオンを獲得できました。だから、子供時代に初めてレースをしたときの番号で、しかも王座を獲得した年に使っていた53番は、僕に幸運を呼び込んでくれるラッキーナンバーというわけなのです」

そのマシンナンバー53とともに、17年のラバトはさらなる飛躍を目指します。