Honda Riders Close Up ~ワークスマシンを駆って、世界に挑むライダー~

Moto3 鈴木竜生 SIC58 Squadra Corse

Moto3 鈴木竜生 SIC58 Squadra Corse
Profile
生年月日
1997/09/24
出身地
千葉県(日本)
身長・体重
170cm・59kg
チーム(マシン)
SIC58 Squadra Corse(NSF250RW)
2016年の成績
Moto3 総合27位
Vol.2

SIC58 Squadra CorseでMoto3クラスを戦う19歳の鈴木竜生は、3年目のシーズン前半戦9戦をランキング14位で折り返しました。順位はともかく、レース内容自体はまずまずで悪くはなかった、と振り返ります。

「開幕戦のカタールは少し気負ってしまったので納得できないレースでしたが、次戦のアルゼンチンは予選で初めてトップ10に入り、レースも第2集団とはいえ、自己ベストの8位で終えました。そのあとも、レース内容では少しずつ前進してきました。今年からチームが変わって、初めてHondaのマシンになり、いろいろと状況が変わった中で、チームとの仕事にも慣れ、オーナーのパオロ(・シモンチェリ)さんともいい関係を築けていると思います」

現在のランキングが14位になってしまったのは、第3戦アメリカズGPから4戦連続で転倒し、ノーポイントに終わったことが大きく響いています。しかし、それらの苦い経験は、鈴木がライダーとして成長するための重要な学習材料になりました。

「シモンチェリお父さんにも『おまえはトップ集団でレースをできる』とずっと言われていたんですが、実はあまり自信がなかったんですよ。それまでトップを走ったこともなかったし、周りの選手たちも今年はとても速いですから。でも、ムジェロ(第6戦イタリアGP)で初めて終盤までトップ争いをして、しかも一時は前に出る戦い方をできたことが、大きな自信につながりました。最終ラップに転倒をしてしまいましたが、自分の目標だったことはしっかりとやりきったレースだったので、よかったと思います」

鈴木の走りはチームからも高く評価され、すでに来季の契約合意にも達しています。

「余計なことを考えずに、これでレースに集中して戦っていくことができます。シモンチェリお父さんはいつも冷静に僕の走りを見てくれていて、レース後の指摘もすごく的確です。8位で終えたアッセン(第8戦オランダGP)のレース後には、『いいレースだったと思うけれども、ムジェロのアグレッシブさと今回の冷静さをミックスできていれば、ひょっとしたら表彰台に上れていたかもしれない』と言われ、本当にその通りだと思いました。頭の中は冷静でも、攻められるときには自分とマシンを信頼して攻めていくのが、自分自身に対する今後の課題です」

冷静さを保ちながら戦況を見極める戦い方を知ったことが、今シーズンの前半戦で大きく学べたことだと鈴木は話します。

「昨年までは前についていくことだけで精一杯で、ほかのことを考える余裕が全くありませんでした。でも、今年はマシンがいいので、ずっと80%程度の力で走り、残りの20%をレースの組み立てや前の選手の研究に使えています。そこは、昨年から大きく変わったところですね。レース中に前のライダーとの違いを研究することで、予選よりタイムがよくなることもありました。

今までは、全力で行かなければほかのライダーたちについていけないと勝手に想像していたんですが、意外とそうではない、ということも分かってきました。100%ではなく、余力を持って走りながら自分の位置を確保するのが、トップ集団でうまく戦っていくコツですね」

8月から始まるシーズン後半戦では、この上位グループでの戦い方をさらに自分のものにしていくことが、なによりも重要な課題です。それを身につけることができたときこそ、鈴木竜生は表彰台争いを自分の手元にたぐり寄せていることでしょう。

「予選ではトップ10のグリッドを確保し、決勝レースでも先頭グループで走れるようになってきたので、あとはこの位置をいかに自分のものにできるか。たとえセッティングが合わないときでも、自分の走りでカバーして、トップ集団にいることが今後の自分の課題です。そこにさえつけていれば、チャンスも巡ってくるし、好機も狙えると思います。だから、最低でも必ずそこにいること。それが後半戦の目標ですね」