Honda Riders Close Up ~ワークスマシンを駆って、世界に挑むライダー~

Moto3 ロマーノ・フェナティ Marinelli Rivacold Snipers

Moto3 ロマーノ・フェナティ Marinelli Rivacold Snipers
Profile
生年月日
1996/1/15
出身地
イタリア
身長・体重
165cm・62kg
チーム(マシン)
Marinelli Rivacold Snipers(NSF250RW)
2016年の成績
Moto3 総合10位
Vol.1

2017年シーズンからHonda陣営に加わったMarinelli Rivacold Snipersのロマーノ・フェナティは、Moto3クラスで最も高い資質を備えた選手の一人です。毎戦激しい優勝争いを繰り広げて期待に違わぬ活躍を披露し、第7戦カタルニアGPが終了した段階でランキング2位につけています。

ライバルメーカーとHondaの双方で優勝を経験しているフェナティは、両陣営のマシンの差を最も的確に捉えることのできるライダーと言えるでしょう。

「最大の違いは、車体にあると思います。動力性能はライバル陣営のほうが勝っていますが、Hondaの車体は僕にすごく合っています。ライバルメーカーのマシンはすごくいい性能で、僕も何勝も挙げましたが、セットアップを見つけるのが少し難しかった印象があります。あるレースではよくても、次のレースになるといいセットアップを見つけにくかったりしたので、僕には少し繊細な特性だったのかもしれません。

Hondaの場合は、パワーだけを比較するなら、ライバルよりも少し劣っているかもしれません。でも、全体的なまとまりが完璧なんです。ブレーキがよく、加速もよく、リアのスタビリティもいい。マシンを理解してセッティングの方向性を見いだすことが、すごくやりやすいんです。

1周のタイムアタックで0.01秒を詰めるのは、僕の場合、確かにHondaではまだ少し難しいです。ライバルメーカーのマシンで走っていたときは、少し課題を抱えていても、一発タイムなら0.6秒を簡単に削り取っていけましたから。でもその反面で、安定性には少し欠けていました。その点で、Hondaはとても安定して走ることができるんです。Hondaのマシンが優れているのは特に驚くことではないとはいえ、ライバル陣営も巻き返しに必死でしょうから、きっとすぐにHonda陣営に追いついてくると思います」

フェナティが話す通り、今シーズンのMoto3クラスはHonda勢が優勢で、第5戦までは表彰台をHonda陣営の選手たちが独占していました。しかし、第6戦イタリアGPでは、今季初めてライバル陣営の選手が優勝を飾りました。第7戦カタルニアGPでは、再びHonda勢がトップスリーを独占。ホアン・ミル(Leopard Racing)が優勝し、2位がフェナティ、3位にホルヘ・マルティン(Del Conca Gresini Racing Moto3)と、上位陣の常連が表彰台に登壇しました。

しかし、このように高い戦闘力を持つフェナティは、昨シーズンの後半戦は諸事情により所属していたチームを離れたために、レースには参戦していませんでした。この困難な時期を、彼はどのように過ごしていたのでしょう。

「チームを離れたことは、僕にとってそれほど大きな出来事ではありませんでした。というのも、その直後に大きな地震があって、僕の住む街も大きな被害に遭ったからです」

2016年8月24日に発生したイタリア中部地震では、フェナティの故郷アスコリ・ピチェーノも大きな被害を受けました。

「地震で町が破壊され、両親や家族、友人たちとずっと一緒にいて、生活を立て直すことで精一杯だったので、レースどころではありませんでした。それまでは命の大切さなんて真剣に考えたこともなかったのですが、あの地震で僕の価値観は大きく変わりました。人間なんて、大自然を前にしたらとてもちっぽけな存在なんだ、と心の底から思い知らされました。人生に対する考え方が変わったんです。あれ以来、『今日が人生で最後だったらどうする?』ということを念頭に置きながら、あらゆることに全力で立ち向かい、一日一日を大切に生きるようになりました」

その辛い経験が、フェナティをライダーとして、また人間としてさらに成長させることになったのかもしれません。現在、ランキング2位につけているランキング争いに関しても、悔いのないよう全力で戦う、とフェナティは力強い口調で語りました。

「もちろん、チャンピオンを狙っていきます。速くて力のあるライダーたちがひしめいているので簡単ではないことは分かっています。だからこそ、僕たちも一生懸命に努力を続けて、全力でがんばりますよ」