Honda Riders Close Up ~ワークスマシンを駆って、世界に挑むライダー~

Moto3 ジュール・ダニーロ Marinelli Rivacold Snipers

Moto3 ジュール・ダニーロ Marinelli Rivacold Snipers
Profile
生年月日
1995/5/18
出身地
フランス
身長・体重
175cm・58kg
チーム(マシン)
Marinelli Rivacold Snipers(NSF250RW)
2016年の成績
Moto3 総合20位

ジュール・ダニーロは、負傷した選手の代役として、2013年のフランスGPでロードレース世界選手権のMoto3クラスデビューを果たしました。フル参戦は14年に開始。15年からは、現在のチームでHonda NSF250RWを駆り、参戦しています。今年の第5戦フランスGPの走行が始まる前日の木曜日、つまり5月18日に、ダニーロは22歳の誕生日を迎えました。

「誕生日はいつも、ル・マンのレースウイーク前になることが多かったんですが、今年はレースウイークに重なり、たくさんの人が祝ってくれました。まるでスターになった気分ですよ」

そしてダニーロは、週末のレースに向けた抱負に確固たるものがある、とも語りました。「ここは大好きなコースですが、今まで完走できたことがないんです。昨年とおととしは大きな転倒になってしまい、本当に残念でした。でも、今年はバースデーウイークのレースだから、ぜひいい結果にしたいと思っています」。ダニーロのこの強い意気込みが物語るように、このホームグランプリに向けて、彼のリザルトは上昇傾向にありました。開幕戦と第2戦はポイント圏外のフィニッシュでしたが、第3戦アメリカズGPでは13位、第4戦スペインGPでは12位と、確実に向上していました。

「序盤の2戦は苦労しました。いいフィーリングを得られず、自分にとても腹が立ちました。2戦ともHonda勢が表彰台を独占しているのだから、マシンがいいことは明らかです。“きっと僕たちにもできる、絶対になにかを見つけられるはずだ”と思いました。テキサス(第3戦)で、セットアップを大きく振って、フィーリングが一気によくなりました。“これでいけるぞ”と思ったのですが、次のヘレスではまたもや予選で失敗して、後方からのスタートになってしまいました。トップグループと同じラップタイムで走れていただけに、それが残念です。速さには自信があるので、今の課題は予選から決勝までの流れをうまく一つにまとめることです」

そう話した2日後のフランスGPの予選では、16番グリッドを獲得。今シーズンの予選における、ベストグリッドとなりました。ダニーロは翌日の決勝レースでも、最後まで粘り強い走りを続けて7位でゴール。今まで完走できなかったホームグランプリで、2017シーズンのベストリザルトを獲得しました。このレースでは、スタート直後にマルチクラッシュが発生して、赤旗中断になりました。ダニーロも転倒に巻き込まれましたが、チームが迅速な作業でマシンを修復し、ライダーとスタッフ全員が一丸となって、この困難を乗り越えました。
「今朝のウォームアップでは、決勝に向けていい手応えを得て、調子よく走れました。16番グリッドからのスタートはいいポジションではありませんが、序盤で何台もオーバーテイクしました。やがて前方で何台も転倒しているのが見えて、オイルが漏れているのも分かったのですが、避けきれずに自分も転倒してしまいました。ピットボックスに戻ってきてからは、チームがすばらしい手際でマシンを修復してくれました」

その後のレースで、ダニーロは予選のパフォーマンスを改善し、第6戦イタリアGPでは11番手タイムを記録。2周連続の開催となった第7戦カタルニアGPでは、21番手タイムと苦戦し、レースでは残念ながら、転倒リタイアとなってしまいました。

ライダーとしての自分の長所と短所は、同じ事柄が表裏に作用していると、ダニーロは分析します。

「自分の長所は、意志が強く努力家なところです。成功したいと心から思っているんです。今年はMoto3クラスでフル参戦4年目ですが、まだ思うような結果を残せていません。Moto2クラスにステップアップするためには、もっと高いレベルで力を発揮しなければいけませんが、やってみせる自信はあります。今年のHondaはすごくいいパッケージで、マシンがとてもよく走っています。表彰台はほとんどHonda勢が独占しているので、この調子で努力を続ければ、僕にもきっとできると信じています。でも、自分の努力家の面が反対に作用することもあるんです。考えすぎて、頭が先走ってしまうのかもしれません。頭で考えたことにとらわれすぎて、自由に走れなくなってしまうんでしょうね。分析することと学び取ることのいい妥協点を見つけられれば、あれこれ考えすぎずに改善していけるようになると思うんです」

中国の武将である孫子の言葉に『知彼知己百戰不殆』(彼を知り己を知れば百戦危うからず)というものがあります。ライバルたちを分析し、己の弱点も理解するダニーロが、さらなる強さを発揮するのは時間の問題と言えるでしょう。