Honda Riders Close Up ~ワークスマシンを駆って、世界に挑むライダー~

Moto3 ホアン・ミル Leopard Racing

Moto3 ホアン・ミル Leopard Racing
Profile
生年月日
1997/09/01
出身地
スペイン
身長・体重
175cm・60kg
チーム(マシン)
Leopard Racing(NSF250RW)
2016年の成績
Moto3 総合5位
Vol.2

2017年シーズンのMoto3クラスは、ホアン・ミル(Leopard Racing)がランキング首位を走り続けています。開幕戦のカタールGPで優勝して以来、前半戦の9レースで5勝を達成。その間、一度もランキングトップの座を明け渡すことなくサマーブレイクを迎えました。第9戦ドイツGPでも勝利を収めましたが、とても厳しい戦いだった、とミルは全27周のレースを振り返りました。

「長くて苛酷なレースでしたが、いい結果で終えることができてとてもハッピーです。マシンは週末を通してずっといい調子で走ってくれたので、チームに感謝しています。前戦のアッセン(第8戦オランダGP)では、ラストラップで痛恨のミスをしてしまったので、今日の勝利は、僕自身にとっても非常に大きな意味を持っています。気分よく夏休みを迎えることができるので、すごくうれしいです」

ミルは、前半戦9戦中5勝という結果にもとても満足している、と述べました。

「たくさんの勝利を挙げることができました。開幕戦で勝ったときに『これからも、もっと勝てそうだぞ』という手応えをつかむことができたんです。9戦中5勝は非常にいい結果なので、ハッピーです」

ところで、アッセンで犯した痛恨のミス、とはいったいどういうことだったのでしょうか。

「その一つ前のバルセロナ(第7戦カタルニアGP)では、勝利するのが難しそうだったので、『これは厳しいレースになるぞ』と思って臨みました(※その結果、シーズン4勝目を達成)。アッセンでは、ほかのライダーよりも調子がよく、うまくマシンに乗れていて、かなり力強いフィーリングがありました。だから、『今回のレースは勝てるな』と思ってしまったのですが、それがそもそもの間違いでした。過剰な自信が失敗を招いてしまったんです。『オーバーテイクされても、スリップストリームを使って最後は勝てる』と考えていたのですが、実際にはそうなりませんでした。僕の判断ミスです。最終ラップでこのミスを犯さなければ、勝てたかどうかはともかく、表彰台は獲得できていたと思います」

Moto3クラスでは、毎戦、トップグループの大集団の中で、大混戦が繰り広げられています。そのバトルの中で最適な戦略を練って勝利をつかむために、最も重要なことはなんなのでしょうか。

「難しいですね……。その戦略が適切だったかどうかは、チェッカーフラッグを受けるときまで分からないですから。僕の場合は、いつも集団の中であまり前に出すぎることなく、冷静に様子を見るようにしています。ほかの選手よりもいいペースで走れているときは引き離そうとトライしてみますが、そうじゃないときは、集団の中で様子を見て、『よし、ここが勝負だ』というときを見計らって最終ラップなどに勝負を仕掛けます。基本的には、それが僕の戦い方ですね」

ミルを筆頭に、今シーズンのMoto3クラスでトップ争いを繰り広げているのは大半がHonda勢の選手たちです。今シーズン、Hondaがここまで強い理由はどこにあるとミルは考えているのでしょうか。

「理由の一つは、ライダーです。今年のHonda陣営には、強い選手たちが揃っています。マシンもとてもよく走ってくれているので、ライダーはさらに速さを発揮できます。だから、全体としてのパッケージがすごくいいんです」

では、Honda勢になにか弱点はあるのでしょうか。

「もちろんです。完ぺきなバイクなんてありませんからね。長所もあれば弱点もあります。でも、僕たちの場合は長所の方が弱点を上回っているんです。たとえば、フロント周りは少し改善の余地があるのですが、現状では許容範囲内です」

長所と短所を見極める冷静な視点は、自分自身のレースキャリアにも向けられています。来シーズンのミルは、Moto2クラスへのステップアップがすでに決定しています。しかし、早い時期に来季の帰趨が決定することは害になる場合もある、とミルは考えています。

「前向きな結果になる場合と、そうではない場合がありますね。例えば、『来年の契約は決まったんだから、もうこれ以上無理をするのはやめよう』と考えてしまうことはありがちだし、実際にそういう行動に出る選手もいます。でも、それをもっと前向きに捉えて『来年の契約が決まったから、これで落ち着いて今後の戦いに集中できるぞ』と考えることも可能ですよね」

もちろん、ミル自身は後者の考え方をするタイプのライダーです。常に冷静かつポジティブにレースに向き合う姿勢で、シーズン後半戦はさらに気持ちを引き締めて、戦闘力を高めながらいい戦いをしていきたい、と話しました。

「後半戦はもっといい結果にしたいです。昨年は、シーズン前半はあまりいい走りができませんでした。でも、後半戦は得意なコースが続きます。自分でも理由はよく分からないのですが、相性がいいんです。たとえばブルノでは、ウエットコンディションでトップ争いができたし、オーストリアでは初優勝を達成して、とてもいいレースになりました。後半戦のほかのレースでも、すごくいい走りができました」

現在、ランキング首位のミルは、2位のライダーに対して37ポイントの差を開いています。このリードは、チャンピオン獲得を狙うミルにとって十分に余裕のある点差と言えそうでしょうか?

「そう言っていいと思います。でも、まだレースはたくさんあるし、特にこのカテゴリーではなにが起こっても不思議ではありません。現在の僕のアドバンテージは、約1戦半ほどのポイント差があるので、少しのミスなら大丈夫と言えるかもしれません。でも、チャンピオンを獲得するためには、もうミスはできませんよ!」