Honda Riders Close Up ~ワークスマシンを駆って、世界に挑むライダー~

MotoGP カル・クラッチロー LCR Honda

MotoGP カル・クラッチロー LCR Honda
Profile
生年月日
1985/10/29
出身地
イギリス
身長・体重
170cm・70kg
チーム(マシン)
LCR Honda(RC213V)
2016年の成績
MotoGP 総合7位
Vol.1

MotoGP全ライダーの中でも、カル・クラッチロー(LCR Honda)は間違いなく最も人気のある選手のひとりです。彼のユーモラスで機知に富んだなコメントは、いつも多くの人を魅了してやみません。

開幕戦のカタールGPでは残念ながら転倒リタイアとなってしまいましたが、第2戦アルゼンチンGPではホンダ勢の最上位の3位でゴールして今季初表彰台。続く第3戦のアメリカズGPでも表彰台に迫る4位でチェッカーフラッグを受けました。

欧州外で行われたこれら3戦の推移を、クラッチローは以下のように振り返ります。

「開幕戦のカタールは、(タイヤ選択に)失敗していいリザルトを得ることができませんでしたが、アルゼンチンとテキサスはとてもうまくいきました。2戦で非常にいいリザルトを獲得できたので、とても満足しています。LCR HondaチームがHondaとうまく連携してくれているのもいいことで、彼らは今年型エンジンの理解を大いに助けてくれています。エンジン制御などがまだ完ぺきではないのも事実なのですが、いい方向に進んでいるし、これからのヨーロッパラウンドでさらに改善していけると確信していますよ」

クラッチローは、いいリザルトを獲得できたアルゼンチン(第2戦)やオースティン(第3戦)のレースでも、Hondaのバイクの難しさをたびたび口にしています。その原因はどこから来ると彼は考えているのでしょうか。また、その扱いにくさは、レースを経ても通底し続けている課題なのか、それとも、1戦ごとに少しずつでも改良のステップを踏んでいるのでしょうか。

「昨年は電子制御やタイヤなどいろんな要素が変化しましたが、総じて今年はかなりよく対応できるようになったと思います。バイクはまだ乗りにくい部分が少しあるけれども、Hondaは全力で戦闘力の高いマシンに仕上げてくれています。レースウイークのたびに改善されているし、厳しいウイークになったときでも必ずどこかはよくなっているんです。一概にどこと特定できるわけではないのですが、たとえば電子制御であったり、セッティング面の何かだったり、必ずどこかにポジティブなところがあります。それを見つけてフィードバックしていくのは、ライダーとして非常に重要な仕事なんですよ」

「今シーズンここまで、Honda勢はがんばっていると思います。僕もマルク (マルケス)もダニ (ペドロサ)も表彰台を獲得していますからね。カタールでは、僕とマルクはタイヤ選択で厳しいレースになり、ダニも苦戦しましたが、アルゼンチンは3人ともいい走りをしたし、次のテキサスでは3人とも高い戦闘力を発揮しました。これはいい方向に進んでいることの証だと僕は思います。バイクのフィーリングがよく、チームもがんばってくれるおかげで、高いレベルで戦えているんですが、それでもまだ改良は必要です。チャンピオンシップで100ポイントのリードをしていたとしても、それでもまだ改善の余地はある。レースとは、そういうものですよね」


クラッチローの活躍に象徴されるように、近年はふたたびイギリス人選手がめざましい活躍をみせるようになりました。MotoGPクラスにはクラッチローを含め4名のイギリス人選手がおり、Moto3クラスではBritish Talent Teamのジョン・マクフィが大活躍しています。

「イギリスのレースファンにはとてもいいことだと思いますよ。正直なところ、MotoGPクラスのコース上で出会ったときには、たとえイギリス人選手であっても打ち負かす対象ですが、ジョン(のBritish Talent Team)についてはとてもいいことだと思って喜んでいます。彼はMoto3クラスでアルベルト(プーチ)やジェレミー(マクウィリアムス)の指導を受けながら、いい走りをしていますね。彼ら指導者たちもジョンをチャンピオンにするために全力でがんばっていますよ。彼らなら、きっと達成できると思うな」

さらに、来年からはブリティッシュ・タレント・カップという育成選手権もスタートします。これから世界を目指すイギリス人のヤングライダーにとっては、願ってもない好機といえるでしょう。

「イギリスから世界に飛躍できた選手は必ずしも多くないので、このプログラムはとても楽しみなんです。僕自身はがんばってここまでやって来たし、BSBからSBKへステップアップしていった選手も確かにいますが、若くて才能がありながらチャンスに巡りあえない若いライダーたちもたくさんいるんです。これがいいきっかけになればいいし、それをHondaとDORNAが支援してくれていることもうれしいですね」

では、クラッチロー自身が、将来的にこのようなプログラムにコーチやアドバイザーとして参加する可能性はあるのでしょうか?

「Hondaがもし要請してくれるならば、やりますよ」

そう言ってクラッチローは微笑みました。

「僕自身、長年、若い選手たちを助けてきましたし、自分の経験を伝えるためにそれなりの時間も費やしてきました。今の自分は、若い選手たちの指導にあたるいい時期なのかもしれませんね。ブリティッシュ・タレント・カップで才能のある選手たちが登場してくるのは楽しみだし、そのときが来れば力になりますよ。そして彼らのなかから、いつか世界チャンピオンが誕生してほしいですね」