2017 MotoGP レギュレーション解説

1. MotoGPクラス

ピット作業がより安全に!

1-1. ピットレーンスタッフ

昨シーズン(2016年)は、公式ECUソフトウエアを全チーム全車が搭載することを義務づけられ、また、タイヤブランドが2015年までのブリヂストンからミシュランへと変更になりました。この大きな2つの変化が、ライダーのパフォーマンスやレース内容にどのような影響を与えるのか、ファンの間でも大いに注目を集めました。今シーズンは、そのような車両規則面での派手な変化はありませんが、レースのさらなる安全と公平な競技環境を目的として、ピットレーン作業に関する規定に、ある重要な変更が加えられることになりました。ルールブックのスポーティングレギュレーション内に記された[1.18 Standard Start Procedure(通常のスタート進行)]の項には、今年から以下のような取り決めが加えられています。

(原文)

[1.18.17]

・A maximum of 4 team staff per rider may assist in the machine change, other team members must remain in the pit box or signalling area.

・The 4 pit lane staff will be identified by compulsory wearing of a helmet, approved by the Technical Director.

・It is forbidden for the spare machine to be in gear before the rider changes bikes, only the rider may engage the gear (it is permitted for a team member to hold the clutch lever), the penalty for breach of this rule is disqualification.

(日本語訳)

[1.18.17]

・選手1名につき最大で4名のスタッフがマシンチェンジの手伝いをしてもよい。他チームの人物はピットボックスもしくは所定の場所にとどまっていなければならない。

・この4名のピットレーンスタッフは、テクニカルディレクターが承認するヘルメットの着用が義務づけられる。

・選手がバイクを交換する前は、スペアマシンのギアが入っていてはならない。ギアの操作はライダーのみが行える(チームメンバーがクラッチレバーを保持することは許される)。このルールに違反した場合の罰則は失格処分とする。

一読すれば分かる通り、これは降雨などによりレースがフラッグ・トゥ・フラッグになった場合のピットレーン作業の安全性、および再スタートをするマシンの状況を公平にする目的で規定されたもの、と言えるでしょう。このようにマシンが次から次へと慌ただしくピットレーンを出入りする状況は、フラッグ・トゥ・フラッグの決勝レースに限らず、土曜日午後に行われる2度にわたる各15分間の予選でも同様です。従って、[1.30 Team personnel in the pit lane(ピットレーンの作業人員)]の項には、以下の文章(太字部分)が今年から付け加えられることになりました。

[1.30.2]

The maximum number of team personnel per rider in the working area in front of the pits is limited to:

- 8 for MotoGP in free practice sessions and warm up

- 4 for MotoGP in Qualifying 1 and Qualifying 2 sessions and in case of machine changes during a race declared wet (refer to Art. 1.18.17). These 4 team personnel will be identified by the compulsory wearing of a helmet, approved by the Technical Director.

[1.30.2]

ピット前作業エリアでの担当チームの作業員の最大数は、以下の人数に限る:

・MotoGPのフリープラクティスセッションとウォームアップ時には8名。

MotoGPの予選1回目と予選2回目、また、ウエットが宣言されたレース(条項1.18.17参照)でのマシン交換の際は4名。この4名の人員は、テクニカルディレクターが承認するヘルメットの着用が義務づけられる。

ちなみに、この項に続く文言では、Moto2クラスとMoto3クラスのピット前作業人員は6名と定められています。これに関しては、昨年からの変更はありません。

- 6 for Moto3 and Moto2

・Moto3とMoto2に関しては6名とする。

走行データで観戦がもっと楽しくなる!?

1-2. 共通ECUソフトウエア&タイヤ

電子制御に関する技術については、2016年シーズンから全車両に共通のECUソフトウエアが必須となったことが大きな話題になりました。今年はさらにもう一つ、小さな部品がルール上では必須となりました。関連部分の文言はかなり長いので、ここではその一部を抜粋して紹介しましょう。

(原文)

[2.4.3.5 Electronics]

2. Tyre Sensors
Tyre Air Pressure Sensors (TAPS) to monitor and log tyre pressure and temperature are mandatory in the MotoGP Class with the following conditions:

・All wheels (front and rear) fitted with tyres must have TAPS fitted and the data logged at all times the wheels are on the motorcycle.

・The Technical Director and staff, and the Official Tyre Supplier staff may check the pressure and temperature of a tyre at any time.

・Such measurement will normally be taken using a hand-held RF receiver so only tyre data is taken. In exceptional circumstances (eg. following an incident or safety concern) the Technical Director may request the logged tyre data from the ECU/ datalogger, and teams must comply with such requests.

(日本語訳)

[2.4.3.5 電子制御]

2. タイヤセンサー
タイヤの空気圧と温度を測定し、記録するためのタイヤ空気圧センサー(TAPS)は、MotoGPクラスでは必須であり、以下の条件を満たすものとする:

・タイヤが装着されたすべての(前後)ホイールはTAPSを装備し、モーターサイクルにホイールが装着されているときは、データは常に記録されていなければならない。

・テクニカルディレクターとスタッフ、および公式タイヤサプライヤーのスタッフは、いついかなるときでもタイヤの空気圧と温度を確認してもいい。

・これらの計測は、通常は携帯計測器を用いてタイヤデータのみを取得するものとする。例外的な場合(偶発的な事象の発生や安全性に懸念がある場合など)には、テクニカルディレクターはECU/データロガーに記録されたタイヤのデータを要求できる。チームはその要求に従わなければならない。

参考までに、昨年のルールブックでは、タイヤセンサーに関する規定は以下のようになっていました。

(原文)

[2.4.3.5 Electronics]
2. Tyre Sensors
Tyre temperature/pressure sensors are permitted in all classes.

(日本語訳)

[2.4.3.5 電子制御]
2. タイヤセンサー
タイヤの温度と空気圧を計測するセンサーは、全クラスで使用していい。

この昨年までの規定からも分かる通り、空気圧/温度センサーは従来からバイクに装備されていた部品です。その一方で、この計測機器の装備の義務化にともない、空気圧を調整するような装置のコース上での使用は、厳しく禁じられています。[2.4.4.9 Tyre restrictions(タイヤに関する制約)]の項では、以下のような文言が今年から加えられています。

(原文)

The use of any device on the wheel to adjust the tyre pressure whilst on track is prohibited. The use of Tyre Air Pressure Sensors (TAPS) on all wheels, front and rear, is mandatory in the MotoGP class, including logging of TAPS data at all times.

(日本語訳)

コースでタイヤの空気圧を調節する、ホイール上のどのような装置も、使用を禁止する。すべての前後ホイールにおけるタイヤの空気圧センサー(TAPS)の使用は、MotoGPクラスで必須とする。これにはTAPSデータの常時記録を含む。

ところで、昨年末の12月21日にFIMが発行したプレスリリースには、タイヤに関するある面白い条項が記されていました。そこには、2017年に発効するテクニカルレギュレーションの追加事項のうち、[Automatic Detection of Tyre Types(タイヤ種別の自動検知)]という項目で以下のように記されています。

(原文)

In collaboration with Michelin and the MotoGP class manufacturers a new system will be implemented that will enable automatic detection of the tyres that that riders are using and to make that information available to all riders and teams as well as to the TV broadcasters.

(日本語訳)

ミシュランとMotoGPクラスのマニュファクチャラーの協業により、各選手が使用中のタイヤを自動で検知し、その情報を全選手とチームおよびテレビ放送事業者に通知できる新しいシステムを導入する。

続く条文の文言では、使用しているタイヤのデータを送信するのに、ワイヤレス技術を使用することも明記されています。選手たちが使用するタイヤの種別は、従来はタイヤサイドウオールのペイントで視認できていましたが、上記のルール改定によれば、今後は映像が捉えていない選手の情報も、個々のラップタイムなどと同様に、一目瞭然で判別できるようになっていくでしょう。2017年シーズンのレース観戦は、開示情報がさらに増えることで、今まで以上にエキサイティングで充実したものになることは間違いなさそうです。

このように、MotoGPでは公平で安全な競技環境を実現するために、スポーツ面と技術面の双方から、常にルールの見直しが図られています。重要なルールの見直しや興味深い改訂などがあったときには、今後もこのコーナーで紹介していきます。

最大の変化!? ウイングレットが禁止に!

1-3. ボディーワーク

昨年から今年にかけて、MotoGPマシンの外部装着品が大いに話題になっています。2017年シーズンから、いわゆる「ウイングレット」の使用はレギュレーションで禁止されるようになりましたが、これに関して、2016年のルールブックでボディーワークに関する条文は以下のような記述から始まっていました。

(原文)

[2.4.4.7 Bodywork]

1. The windscreen edge and the edges of all other exposed parts of the streamlining must be rounded.

2. The maximum width of bodywork must not exceed 600 mm.
The width of the seat or anything to its rear shall not be more than 450 mm (exhaust pipes excepted).

3. Bodywork must not extend beyond a line drawn vertically at the leading edge of the front tyre and a line drawn vertically at the rearward edge of the rear tyre. The suspension should be fully extended when the measurement is taken.

(日本語訳)

[2.4.4.7 ボディーワーク]

1. ウインドスクリーンの端およびその他あらゆる流線形状の露出部分は曲線状でなければならない。

2. ボディーワークの最大幅は600mmを超えてはならない。
シート幅あるいはリア部分のあらゆるものは450mmを上回るものではない(エキゾーストパイプは除く)。

3. ボディーワークはフロントタイヤの先端から鉛直方向に引いた線およびリアタイヤの後端から鉛直方向に引いた線を超えてはならない。計測時にはサスペンションは十分に伸ばした状態でなければならない。

2017年版のレギュレーションでは、2.と3.に太字の部分が追加されています。

(原文)

2. The maximum width of bodywork must not exceed 600 mm.
The width of the seat or anything to its rear shall not be more than 450 mm (exhaust pipes excepted).
The width of the windscreen must not exceed 300 mm (measured in a straight line).
The length of the windscreen must not exceed 370 mm (measured along the windscreen surface).

3. Bodywork must not extend more than 150 mm beyond a line drawn vertically from the centre of the front wheel spindle and a line drawn vertically at the rearward edge of the rear tyre. The suspension should be fully extended when the measurement is taken.

(日本語訳)

2. ボディーワークの最大幅は600mmを超えてはならない。
シート幅あるいはリア部分のあらゆるものは450mmを上回るものではない(エキゾーストパイプは除く)。
ウインドスクリーンの幅は300mmを超えてはならない(直線で計測する)。
ウインドスクリーンの長さは370mmを超えてはならない(ウインドスクリーンの表面に沿って計測する)。

3. ボディーワークはフロントホイール車軸の中心から鉛直方向に引いた線の150mm以上およびリアタイヤ後端から鉛直方向に引いた線を超えてはならない。計測時にはサスペンションは十分に伸ばした状態でなければならない。

これに続く、ボディーワークの細かい取り決めを定める条文のうち、4.項から7.項に関しては、2016年から2017年にかけて変更はありません。大きく異なるのは、その次の8.項です。昨年の文言と今年の文言を比較すると、文章が大きく書き換えられており、その意味する内容は正反対になっていることが分かります。

(原文)

[2016version]
8. Wings may be fitted provided they are an integral part of the fairing or seat and do not exceed the width of the fairing or seat or the height of the handlebars. All edges of any wings fitted must have a minimum radius of 2.5 mm. Moving aerodynamic devices are prohibited.

(日本語訳)

[2016年版]
8. ウイングは、フェアリングあるいはシートと一体をなす部分であり、フェアリングあるいはシート幅もしくはハンドルバーの高さを超えない場合に、装着してよい。どのようなウイングもあらゆる端は最低半径2.5mmでなければならない。可動空力装置は禁止する。

(原文)

[2017version]
8. Devices or shapes protruding from the fairing or bodywork and not integrated in the body streamlining (eg. wings, fins, bulges, etc.) that may provide an aerodynamic effect (eg. Providing downforce, disrupting aerodynamic wake, etc.) are no allowed.
The Technical Director will be the sole judge of whether a device or fairing design falls into the above definition.

Moving aerodynamic devices are prohibited.

(日本語訳)

[2017年版]
8. フェアリングあるいはボディーワークから突出した形状あるいは装置で本体の流線形状と一体をなしておらず(ウイング、フィン、出っ張りなど)、空力効果(ダウンフォースの供給、気流の攪乱など)を発生させうるものは許可されない。
装置やフェアリングデザインが上記の定義に属するかどうかはテクニカルディレクターが判断をする。

可動空力装置は禁止する。

続く9.項は2016年の規則が踏襲されていますが、2017年のルールブックでは、新たに10.項が設けられ、MotoGPクラスのエアロボディーの承認について長い説明がされています。プレシーズンテストから話題になっている、2017年仕様のMotoGPマシンに装着された各種カウルは、まさにこの条文が具体化したもの、と言えるでしょう。

(原文)

10. MotoGP Aero Body Homologation
The MotoGP Aero Body is defined as the portion of the motorcycle bodywork that is directly impacted by the airflow while the motorcycle is moving forward, and is not in the wake (ie. aerodynamic “shadow”) of the rider’s body or any other motorcycle body parts. Therefore the Aero Body consists of the two separate components Front Fairing and Front Fender (Mudguard), as per the diagrams the Appendix, General: Fig.4, Fig.5.

Only the external shape, excluding the windscreen, is defined in this regulation, so the following parts are not considered as part of the Aero Body: windscreen, cooling ducts, fairing supports, and any other parts inside the external profile of the bodywork.

(日本語訳)

10. MotoGPのエアロボディー承認
MotoGPのエアロボディーとは、モーターサイクルが前進する際の空気流によって直接的な影響を受けるモーターサイクルボディーワークの部分と定義する。また、それはライダーの身体やその他あらゆるモーターサイクル本体の部品によって生じる(空力的な「影」など)の気流跡を指すものではない。すなわちエアロボディーとは、2つの分離された構成部分であるフロントフェアリングとフロントフェンダー(マッドガード)からなるものである。

ウインドスクリーンを除く外形の形状のみが、この規則で定義される。従って以下の部品はエアロボディーの一部とはみなされない:ウインドスクリーン、冷却ダクト、フェアリングの支持、およびボディーワーク外装の内側にあるあらゆるほかの部品)。

さらにこの項では続くa)からg)までの細則で、エアロボディーの承認手順や同一メーカーでもライダーごとに異なるエアロボディーを使用してもいいこと、エアロボディーのアップデートに関わる取り決めなどについて詳細に記されています。

Moto2クラスとMoto3クラスでもウイング形状のエアロパーツの使用は禁止されており、MotoGPクラスの[2.4.4.7.8]と同じ文言が各クラスのテクニカルレギュレーションの[2.5.4.7.7](Moto2)と[2.6.4.7.8](Moto3)でそれぞれ明記されています。

2017年3月29日発表

1-4. 第2戦以降の改訂点

2017年開幕戦カタールGPが終了した直後の3月29日に、FIMがグランプリコミッションの最新決定を発表しました。第2戦以降のレースに対して効力を持つこれらのルールについて、以下で簡単に説明をしておきましょう。

2017年シーズンのレギュレーションでは、MotoGPクラスの走行時に各チームスタッフがピットレーンで作業にあたる場合の取り決めとして、『予選1回目と予選2回目、また、ウエットが宣言されたレース(条項1.18.17参照)でのマシン交換の際は4名。この4名の人員は、テクニカルディレクターが承認するヘルメットの着用が義務づけられる』と定められていました。

この作業人数は、今回の決定により予選1回目と予選2回目に関しては6名まで許容されることになりました(フラッグ・トゥ・フラッグ時の作業人員は従来同様)。今回発表された文章は、以下のような内容です。

(原文)

Pit Lane Safety

It was previously announced that the number of team staff working on a MotoGP class machine during bike changes in flag to flag racing and during QP1 and QP2 is limited to four, each of whom must wear a crash helmet. After representations from the teams it has been confirmed that during QP1 and QP2 a maximum of six team staff are permitted, each of whom must wear a crash helmet. The maximum number in flag to flag bike changes remains unchanged at four..

(日本語訳)

ピットレーンの安全

従来の告知では、フラッグ・トゥ・フラッグの決勝レースや予選1回目予選2回目でMotoGPクラスのマシンを作業するチームスタッフ数は4名に限定し、各スタッフは所定のヘルメットを着用しなければならないとしていた。チーム側からの意見表明により、予選1回目と予選2回目に関しては最大6名のチームスタッフが許可されることを決定した。各スタッフは所定のヘルメットを着用しなければならない。フラッグ・トゥ・フラッグのバイク交換に関する最大人数は従来のまま変更なく4名である。

さらにもうひとつ、今回は、ペナルティーポイントの廃止も発表されました。

これまでは、選手に対して科される罰則には、警告・ペナルティーポイント・罰金・順位の変更・ライドスルー・タイム加算・グリッド降格・失格・チャンピオンシップポイント剥奪・出場停止、追放処分、といった種類がありました。

これらのうち、ペナルティーポイントは、違反の程度に応じてFIM MotoGP役員団がライダーに対して付加する罰則点数(有効期限365日)で、2013年から導入されました。このペナルティーポイントとは、一定数に達すると、自動的にグリッド降格やピットレーンスタート等の処分が科されるしくみになっていました([DISCIPLINARY AND ARBITRATION CODE(懲戒および調停に関する規定)] 内3.2.1 Definition and application of penalties(罰則の定義と適用)参照)。

今回の発表内容は以下のとおりです。

(原文)

Penalty points

Taking into consideration that the FIM MotoGP Stewards have many penalties options, the penalty points were no longer necessary. The Grand Prix penalty points are now withdrawn from the list of penalties.

(日本語訳)

ペナルティーポイント

FIM MotoGP役員は多様な罰則裁量権を有していることを考慮し、ペナルティーポイントは今後、不要とする。選手権のペナルティーポイントは、今をもって各種罰則から除外する。

2017年6月28日発表

1-5. ダッシュボードメッセージ

2017年シーズン前半戦終了直前の6月28日にFIMから発表された、あるプレスリリースの内容が、関係者やファンの間で注目を集めました。

具体的には、6月24日に、オランダ・アッセンでグランプリコミッションが会合を持った際に決定した内容のうち、「ダッシュボードメッセージ」に関する部分です。当該文書では、その文言は以下のように記されています。

(原文)

Dashboard Displays and Messages

It has already been confirmed that machines in the Moto3 and MotoGP class must have the dashboard facility to display text messages, linked to the current warning lights, with effect from 2018. This will also apply to the Moto2 class from 2019. The GPC have now confirmed the precise list of messages that will be sent with the warning lights by Race Direction.
Some teams already have the facility on their machine dashboards to receive text messages and, following approval from the Safety Commission, the GPC confirmed that such teams may already use this facility as a “virtual pit board”. This does not require any amendments to existing regulations.

(日本語訳)

ダッシュボードディスプレイおよびメッセージ

MotoGPとMoto3クラスのマシンには、現状の警告灯と連動するテキストメッセージを表示できるダッシュボード機能を2018年から装備しなければならないことはすでに了承済みである。Moto2クラスについては、これを2019年から適用する。グランプリコミッションは、レースディレクションが警告灯とともに送信するメッセージの正確な文案を今回承認した。
すでに自らのマシンダッシュボードにテキストメッセージを受信できる機能を装備しているチームもあるが、セーフティコミッションの承認に従い、それらのチームはこの機能を「バーチャルピットボード」として使用してもよいことを、グランプリコミッションは承認した。
これに関しては現レギュレーションの修正を要しない。

このFIMのプレスリリースを読むと、ダッシュボード機能に搭載されるテキストメッセージには

・レースディレクションから各マシンへの警告灯とともにテキストを表示する機能

および

・各チームからマシンに対して指示を出す「バーチャルピットボード」

の2種類が存在することがわかります。

さらに、後段の「バーチャルピットボード機能」は、すでに運用を一部開始しているチームもあり、これは現行ルールを妨げるものではない、と見なされていることもまた、上記プレスリリースに銘記されています。つまり、昨年から話題になっていた、〈チームがピットボックスからライダーに指示を送信するテキストをダッシュボードに表示する機能〉は、一部ですでに試用されており、今後も少しずつ各陣営で本格的に運用されていくのであろう、ということが推測されます。

では、このプレスリリースで述べられている前段部分、「レースディレクションから各マシンへの警告とともにテキストを表示する機能」とは具体的にどのようなものを表すのでしょうか。

今回はそこに注目をしてみましょう。

 

7月14日付けで修正が施された2017年レギュレーションによると、ダッシュボードのメッセージに関わる事項は、以下のように記されています。

(原文)

General: Fig. 7: Dashboard Display Signals

The signals in the following Table may be transmitted by Race Direction using the Timekeeping transponder. All machines must have a system approved by the Technical Director to clearly display these signals to the rider.

SIGNAL INFORMATION SENT TO TRANSPONDER
Red Flag Sent to all bikes in all parts of the circuit
Black Flag Sent to individual bike in all parts of the circuit
Black Flag/Orange Disc Sent to individual bike in all parts of the circuit
Change Position Sent to individual bike in all parts of the circuit
Ride Through Sent to individual bike in all parts of the circuit
Track Limits Warning To individual bike in all parts of circuit, for limited time
Blue Flag To individual bike at specific location, for limited time

(日本語訳)

一般則:表7:ダッシュボード表示信号

以下の表組内の信号は、レースディレクションが計時用トランスポンダを使用して送信することができる。全車両は、これらの信号をライダーに対して明確に表示するために、テクニカルディレクターの裁可を受けたシステムを備えていなければならない。

信号 トランスポンダへ送信される情報
レッドフラッグ コース全域で全車両に送信
ブラックフラッグ コース全域で該当車両に送信
オレンジ丸付きブラックフラッグ コース全域で該当車両に送信
ポジション変更 コース全域で該当車両に送信
ライドスルー コース全域で該当車両に送信
走行可能箇所の限界警告 コース全域で該当車両に送信 所定回数のみ
ブルーフラッグ 特定箇所で該当車両に送信 所定回数のみ

(原文)

Note that from 2018 (MotoGP, Moto3) and 2019 (Moto2), approval of the Technical Director will only be given if the system complies with the following:

・The following text messages (TEXT in the table below) are displayed, combined with a yellow light or lights (flashing or steady). The minimum text character dimension is 5 mm in height.

・Information lights used for other purposes may not be used to also convey Race Direction signals, to ensure there is no confusion over signals.

・The signal light(s) must have adequate brightness.

SIGNAL TEXT INFORMATION SENT TO TRANSPONDER
Red Flag RED FLAG Sent to all bikes in all parts of the circuit
Black Flag BLACKFLG Sent to individual bike in all parts of the circuit
Black Flag/Orange Disc BLKORANG Sent to individual bike in all parts of the circuit
Drop Positions DROP* Sent to individual bike in all parts of the circuit
Ride Through RIDETHRO Sent to individual bike in all parts of the circuit
Track Limits Warning TRKLIMIT To individual bike in all parts of circuit , for limited time
Blue Flag BLUEFLAG To individual bike in all parts of circuit , for limited time

*it is highly recommended (but not compulsory) to display the message DROP-##, where ## is an added 2-digit field representing the number of positions to drop. GP Commission, Assen 24/06/2017

(日本語訳)

2018年(MotoGP、Moto3)と2019年(Moto2)以降は、下記に関するシステム遵守の可否は、テクニカルディレクターによる裁可のみが与えられる:

・以下のテキストメッセージ(下記表組内のTEXT)は黄色の単一もしくは複数警告灯(点滅もしくは点灯)と連動して表示される。テキストの文字は最低でも5mmの縦幅がなければならない。

・その他の目的で使用する情報表示灯を、レースディレクションの信号表示に使用をしてはならない。各信号の意図するところの混乱を避けるためである。

・信号表示は妥当な明度でなければならない。

信号 TEXT トランスポンダに送信される情報
レッドフラッグ RED FLAG コース全域で全車両に送信
ブラックフラッグ BLACKFLG コース全域で該当車両に送信
オレンジ丸付きブラックフラッグ BLKORANG コース全域で該当車両に送信
走行順位降格 DROP* コース全域で該当車両に送信
ライドスルー RIDETHRO コース全域で該当車両に送信
走行可能箇所の限界警告 TRKLIMIT コース全域で該当車両に送信 所定回数のみ
ブルーフラッグ BLUEFLAG コース全域で該当車両に送信 所定回数のみ

*順位降格のメッセージはDROP-##とし、##部分に降格すべき数字を表記する2文字用スペースを設けることを強く推奨する(義務ではない)。グランプリコミッション、アッセン 2017年6月24日

【参考:各フラッグの意味】

各フラッグの意味は、レギュレーションの[1.22 Flags and Lights]の項でそれぞれ以下のように説明されています。

(原文)

・Red Flag and Red Lights
When the race or practice is being interrupted, the red flag will be waved at each flag marshal post and the red lights around the track will be switched on. Riders must return slowly to the pits.

(日本語訳)

・レッドフラッグとレッドライト
レースやプラクティスが中断されたとき、レッドフラッグは各フラッグマーシャルポストが振られ、コース上の赤色灯が点灯される。ライダーはゆっくりとピットに戻らなければならない。

(原文)

・Black Flag
This flag is used to convey instructions to one rider only and is waved at each flag marshal post together with the rider’s number. The rider must stop at the pits at the end of the current lap and cannot restart, when this flag results from a penalty.
This flag can also be presented to a rider for a reason other than a penalty (eg. to rectify a non-dangerous technical problem such as a transponder problem).

(日本語訳)

・黒旗
この旗は特定のライダー一名のみに対する指示の伝達に使用され、各フラッグマーシャルポストでライダーの番号と共に振られる。このフラッグがペナルティによる結果である場合、ライダーは現行周回終了時にピットへ戻らなければならず、再スタートはできない。
この旗はペナルティ以外の理由でライダーに対して掲示される場合もある(トランスポンダの問題など技術的に危険性のない問題を調整する場合など)。

(原文)

・Black Flag with orange disk (φ 40 cm)
This flag is used to convey instructions to one rider only and is waved at each flag marshal post together with the rider’s number. This flag informs the rider that his motorcycle has mechanical problems likely to endanger himself or others, and that he must immediately leave the track.

(日本語訳)

・オレンジ丸(40cm)つき黒旗
この旗は一名のライダーに対する指示にのみ使用され、各フラッグマーシャルポストでライダーの番号と共に振られる。この旗は、ライダーに対し、そのモーターサイクルが機械的な問題を生じ、自身や他選手に危険を及ぼす可能性があること、それにより即座にコースを退出しなければならないことを告知する。

(原文)

・Blue Flag
Waved at the flag marshal post, this flag indicates to a rider that he is about to be overtaken.
During the practice sessions, the rider concerned must keep his line and slow down gradually to allow the faster rider to pass him.
During the race, the rider concerned is about to be lapped. He must allow the rider(s) who are lapping him to pass him at the earliest opportunity, and passing within a group of lapped riders is forbidden under the blue flag.

(日本語訳)

・青旗
フラッグマーシャルポストでこの旗が振られていた場合、この旗はライダーがまもなくオーバーテイクされることを示す。
プラクティスセッションでは、当該ライダーはラインを維持しながらゆっくりと減速し速いライダーにオーバーテイクさせなければならない。
レースでは、当該ライダーは周回遅れになる間際である。当該ライダーは追い抜きに来るライダー(たち)に対して可能な限り速やかにオーバーテイクをさせなければならない。ブルーフラッグ下では、周回遅れにされる集団内のライダー同士によるオーバーテイクは禁ずる。