Livio Suppo Track Report Livio Suppo Track Report

Vol. 156

タイヤ選択が明暗を分けたレース。マルケスは底力をみせ3位表彰台をつかむ

オーストリアGPからの2連戦となった第11戦チェコGPは、今季5回目のポールポジションから決勝に挑んだマルク・マルケスが、ウエットコンディション下の難しいレースを3位でフィニッシュ。総合首位をキープしました。土曜日までは青空が広がる絶好のコンディションでした。しかし、日曜日は終日の雨。ウエットから、ライン上が徐々に乾いていく難コンディションとなり、タイヤ選択の難しいレースとなりました。

前日の予選では、ドライコンディションでサーキットレコードを更新していたマルケスは、路面が乾いていくことを予想。“フラッグ・トゥ・フラッグ”になることを前提に前後ソフトレインコンパウンドでスタートしました。しかし、思いのほか乾きが遅く、タイヤをセーブする走りに切り替えます。レースは、ハードレインを選択したカル・クラッチロー(LCR Honda MotoGP)が優勝し、リアタイヤにハードを選択したバレンティーノ・ロッシ選手(ヤマハ)が2位。ソフトコンパウドで我慢の走りとなったマルケスは、厳しい条件の中で、見事3位でフィニッシュしました。

この結果、総合2位に浮上したロッシに53点差、今大会で17位に終わり、総合3位にダウンしたホルヘ・ロレンソ選手(ヤマハ)に59点差をつけ、2年ぶりのタイトル獲得に向けて、また一歩前進しました。

一方、チームメートのダニ・ペドロサは、ドライ、ウエットともにセットアップが決まらず、厳しい走りを強いられます。9番手からスタートした決勝は、マルケスと同じ前後ソフトレインで挑みますが、思うようにペースを上げられずに12位でした。総合4位をキープするも、ペドロサにとっては得意のサーキットだけに、悔しい結果となりました。

―今回も難しいコンディションのレースとなりました。今大会のレース戦略はどういうものでしたか?

「“フラッグ・トゥ・フラッグ”になることを予想していました。そのため、2人ともにソフトのレインタイヤを選択してスタートし、マシンチェンジの準備もできていました。プランとしては、レース序盤からプッシュしていって、それからバイクをチェンジするというもの。しかし、コースがなかなか乾かず、そのため2人ともに、難しいコンディションに苦労することになりました」

―今大会も厳しいレースになりましたが、よかったところ悪かったところを教えてください。

「よかった点は、言うまでもありません。マルクがチャンピオンシップでリードを広げ、表彰台を獲得したことですね。ロッシは総合2番手に浮上しましたが、その差は53ポイント。また、ダニは12位という厳しいリザルトで、わずか4ポイントの獲得に終わりましたが、チャンピオンシップで4番手をキープすることができました。とにかく、今大会で一番よかったことは、Hondaが優勝したこと。カル・クラッチローが、自身にとっても、LCR Hondaにとっても初の優勝を達成したことです。

また、土曜日の予選では、マルクが3クラス通して最多記録となる63回目のポールポジションを記録しました。ロレンソやロッシに続き、歴史的な記録にわずか23歳で並んだことになります。これは驚異的なことです。そして、この記録を打ち立てたマルクのポールタイムは、最後のアタックでロッシを最終コーナーで抜いて達成するというすばらしさでした。しかも、サーキットベストタイム。すばらしい走りでしたね。

残念だったのは、ウエットコンディションで、ダニがいつものフィーリングを見つけられなかったことです」

―レースをピットウォールから見ていて、どんな気持ちでしたか?

「いつになったらマシンチェンジできるコース状態になるのか……。そのタイミングを見ていました。しかし、予想以上に路面は乾かず、レースが進行していく。そんな状況の中で、マルクがタイヤをセーブする走りに切り替え、そして終盤に前を走る何台かのドゥカティ勢を抜いて表彰台に上がったことは、とてもうれしいことでした。

ダニは序盤こそいいペースでしたが、タイヤのグリップが落ちてきてからはハードブレーキングができなくなり、ポジションを落としてしまったのが残念でした」

―先週日曜日のオーストリアと比較して、ここブルノでのライダーのパフォーマンスをどう感じましたか?

「マルクは2つの異なるサーキットで行われた難しいコンディションのレースで、しっかりとリードを広げることができました。これはとてもうれしいことですね。一方、ダニにとっては、この2戦でさらに難しい状況になっているので、我々としては、もう一度彼にいいRC213Vの感触を取り戻してもらえるようにがんばっていきたいです」

―今大会のサイドストーリーを教えてください?

「土曜日の夜に、他チームのみんなも一緒に『ホスピタリティ リユナイテッド』と呼ばれるスペシャルパドックパーティを開催しました。いくらかカジュアルなものでしたが、ゲストやチーム、友人、記者たちが集まってくれて、とても楽しい時間を過ごすことができました」

第11戦チェコGPの決勝日は、終日の雨になりましたが、8万2066人のファンが集まりました。前戦オーストリアGPは、スリックタイヤの選択が勝敗に影響し、今大会ではレインタイヤの選択が決勝に大きく影響しました。その難しい2連戦をマルケスはしっかり戦い抜き、総合首位をキープ。一方のペドロサは残念なレースの連続となりましたが、その悔しさを残り7戦にぶつける意気込みです。

チェコGPを終えたMotoGPは、1週間のインターバルを経て、再び、第12戦イギリスGP(9月4日決勝)、第13戦サンマリノGP(9月11日決勝)の2週連戦を迎えます。タイトル獲得に向けて重要な連戦となるだけに、Repsol Honda Teamは全力で挑むことになります。

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