Livio Suppo Track Report Livio Suppo Track Report

Vol. 153

“ダッチウェザー”による難コンディション。冷静に戦いポイント差を広げる

第8戦オランダGPは、土曜日の予選、そして日曜日の決勝ともに、断続的に雨が降る不安定な天候の中で行われました。突然降ってくる雨、かと思えば、雲の切れ間から青空がのぞく。もう降らないのかな?と思った途端に一段と雨が激しくなるなど、これぞ”ダッチウェザー”という天候に、選手もチームも翻弄されました。

決勝レースはウエットコンディションで始まりましたが、ライン上がだんだん乾いていくという状況。このためレースは”フラッグ・トゥ・フラッグ”となりましたが、再び、雨が激しくなり、14周を終えて赤旗中断。そしてレースは、残り周回数の12周で再開されることになりました。

中断された14周目時点の順位でグリッドに並び、第2レースが行われます。路面コンディションは依然としてウエット。12周というスプリントレースとなり、ただひとり、ハードレインを選択したジャック・ミラー(Estrella Galicia 0,0 Marc VDS)が優勝。総合首位でミスのないレースを要求されたマルク・マルケス(Repsol Honda Team)は、予選4番手から着実にトップグループに加わり、2位でチェッカーを受けました。

このレースで、総合2位のホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)は10位、総合3位のバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)が転倒リタイアに終わり、マルケスは総合2位以下にリードを広げてポイントリーダーの座をキープしました。

スタート前にチームスタッフからしつこいほどに「ミスをしないで完走すること」と言われたというマルケス。2年ぶり3回目のタイトル獲得に向けて、大きなピンチを切り抜け、チャンピオン争いを考えれば、まさに勝利に等しい順位でフィニッシュしました。

フリー走行でセットアップに苦戦、ウエットコンディションとなった予選で15番手と厳しいグリッドから決勝に挑んだダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)は、雨で中断になるまでの第1レースですばらしい走りを見せました。第2レースは6番グリッドから優勝争いへの期待が膨らみましたが、オープニングラップに転倒。最後尾から追い上げることになり、12位でフィニッシュと、ペドロサにとっては悔しいレースとなりましたが、総合4位をキープしました。

―今回はウエットコンディションのレース。レースが赤旗中断になるなど難しいレースになりました。今日のレースの戦略は?

「今日は、最初から”フラッグ・トゥ・フラッグ”になるのは間違いないと思っていました。しかし、現実はさらに上をいく難しいレースになりました。最初のレースは、明らかにウエットコンディションでしたが、雨は止んでいるように見えました。このレースで、ダニはリアタイヤにソフトを選び、対して、マルクはリアタイヤにハードを選択しました。

その結果、雨が激しくなってきてから赤旗中断になる前まで、ダニはその状況でトップグループとの差を縮めるなど、とても素早く反応していました。一方、他の選手たちは、あわててガレージに戻って来なければいけない状況でしたね。

第2レースは12周だったので、全員ソフトタイヤを選ぶことになりました。このような短いレースでは戦略などありません。ミスをしないように、そして、最初からできる限りプッシュしていくだけですからね」

―とても難しいレースでした。今回のよかったところ、そして、悪かった点は?

「よかったのはジャックがMotoGPで初優勝をしたことですね。そして、マルクも、チャンピオンシップに向けて難しいレースを優位にうまく進めたと思います。悪かったというか、残念だったのは、第1レースはすばらしい走りで追い上げていたダニが、第2レースで転倒してしまったことです」

―ハラハラドキドキのレースでしたが、レースをピットウォールから、どう見ていましたか?

「第1レースは雨が激しくなり赤旗中断になりましたが、レースディレクションの判断は正しかったと思います。第2レースに関しては、あまりにもトリッキーな路面で、ミスをしやすいコンディションだったので、選手たちも集中するのが難しかったと思います。

そういう状況の中で、マルクが手堅く走ってくれたし、2位でフィニッシュしてくれたことにとても喜んでいます。シーズンを通しても、今日の2位はとても重要だったと思います。そして、なによりも、シーズン序盤にケガで苦しんでいたジャックが、こんなにすばらしいレースをしてくれたことがうれしいですね」

―今大会、何かサイドストーリーはありましたか?

「レース後のプレスカンファレンスで、ジャーナリストが『パルクフェルメでジャックがなにを言ったのか』ということを尋ねていましたが、ジャックは第2レースの自分の走りを称えるものだったと言っていました。とにかく、彼はヘルメットの中で声が枯れるまで叫んでいましたからね」

―ジャックの優勝について、印象を教えてください。

「昨年、ジャックはMoto3からMotoGPへ直接ジャンプアップすることを決めました。そして、契約する際に、それがどれだけ難しいことなのか、ということを分かっていましたが、その難しいことを彼はやりとげる素質があると信じて契約しました。今日の優勝は到着点ではなく、彼にとってはスタート地点になりました。今回の結果が彼の自信となり、彼が成長する助けになると信じています。Marc VDSと同じように彼をサポートできることがとてもうれしいです」

次戦ドイツGPは、2週間のインターバルを経て、ザクセンリンクで行われます。昨年の大会では、マルケスがポール・トゥ・ウインを達成、ペドロサが予選2番手、決勝でも2位でフィニッシュして、Repsol Honda Teamが完ぺきなレースを行いました。

今年は2年連続で大会1-2フィニッシュを目指す戦い。総合首位のマルケスはシーズン3勝目と、チャンピオンシップでのリードをさらに広げる戦いに挑みます。そして、今大会では転倒再スタートという悔しい結果に終わったペドロサも、調子を上げているだけに、今季初優勝を目指します。

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