Livio Suppo Track Report Livio Suppo Track Report

Vol. 150

苦手なサーキットで見えたマシンの課題とライダーのがんばり

第5戦フランスGPは、Repsol Honda Teamにとって、今季最も厳しい結果となりました。予選2番手から決勝に挑んだマルク・マルケスは、4番手を走行していた16周目に転倒を喫し、最後尾へとポジションを落としました。その後は再スタートを切り、13位に終わりました。また、予選11番手から決勝に挑んだダニ・ペドロサは、終盤に追い上げをみせて4位でフィニッシュしましたが、Repsol Honda Teamにとっては、両選手ともに表彰台に立てない厳しい結末となりました。Repsol Honda Teamのライダーが一人も表彰台に立てなかったのは今季初。雨に見舞われた昨年のイギリスGP以来、10戦ぶりのワーストレースとなりました。

今年のフランスGPは、3日間を通じて好天に恵まれました。過去10年で5度の“フラッグ・トゥ・フラッグ”を経験している大会ですが、今年は青空が広がる絶好のコンディションとなりました。そんな中でRepsol Honda Teamは、予選でペドロサが転倒、決勝でマルケスが転倒と、厳しい戦いを強いられるレースウイークとなりました。

MotoGPクラスにステップアップし、過去3年のフランスGPでポールポジションを獲得してきたマルケスは、フリー走行を終えて4番手。順調にセットアップを進めるも、4回のセッションで一度もトップタイムをマークできませんでした。タイムロスの要因となったのは、今季の課題となっているコーナーからの脱出速度と加速で、ストップ&ゴーのレイアウトとなるル・マン・サーキットでは、RC213Vのパフォーマンスをフルに発揮することができませんでした。

しかしマルケスは、予選では2番グリッドを獲得しました。決勝でも好スタートを切ると、中盤まではバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)、アンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ)と2番手を争いました。後半に入るとドヴィツィオーゾとの3番手争いとなりますが、16周目の7コーナーの進入で転倒。このとき、ドヴィツィオーゾもほぼ同時に転倒しました。

この日、MotoGPクラスの決勝では8選手が転倒していますが、そのうち4人が7コーナーで転倒しています。最大の原因の一つは、フロントのグリップを引き出すのが難しいコーナーだったことであり、マルケスもブレーキングでフロントから転倒しました。

転倒したマルケスは、マシンを起こして再スタート。そして、13位でフィニッシュし、貴重な3ポイントを獲得しました。総合では、今大会のウイナーであるホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)に5点差をつけられての2位へとダウンしましたが、2年ぶりのタイトル獲得に向けて、厳しい戦いの中で踏ん張りをみせました。

ル・マンを得意とするチームメートのペドロサも、思うような走りができずにフラストレーションをためることになりました。フリー走行は総合6番手。予選では転倒を喫し、セカンドマシンで2度目のアタックに挑むことになり、その結果、11番グリッドがやっとでした。追い上げのレースとなった決勝は、中盤まで混戦を抜け出せず苦戦しますが、後半は6番手に浮上。終盤は3番手を走るマーベリック・ビニャーレス(スズキ)を猛追しますが、今季2度目の表彰台獲得は果たせませんでした。

今季最悪の結果に終わったRepsol Honda Team。ライダー、スタッフともに、次戦イタリアGP以降での巻き返しに闘志を燃やすことになりました。その厳しい戦いを、リビオ・スッポHRCチーム代表に振り返ってもらいました。

―最初に、第5戦フランスGPはどんな戦いを予想していましたか? 振り返ってみてどうですか?

「レースウイークを通して、厳しい状況の中ですばらしい仕事をこなしてくれたマルクの戦略は、表彰台争いをすることでした。ホルヘ(ロレンソ)のペースが非常に速いことは分かっていたので、今大会は、普通の状況で彼に勝つことは難しいと思っていました。マルクもがんばってくれましたが、残念ながら小さなミスが大きく影響してしまいました。ダニは、土曜日の予選が難しいものとなったので、序盤になるべく追い上げて、ポジションを上げることが目標でした。彼はすばらしい仕事をこなし、4位に入賞できました」

―今大会は、マルクもダニも表彰台に立つことができませんでした。厳しい戦いとなりましたが、レースを終えて、ポジティブな点とネガティブな点はどんなところでしたか?

「マルクについてのポジティブな点は、転倒があったにもかかわらず、レースですばらしい姿勢をみせたことですね。マシンを起こしてレースを完走したことです。彼は3ポイントを獲得。このような難しいチャンピオンシップでは、これは非常に重要なことです。ダニの4位も、もちろんポジティブです。ネガティブなことは、このサーキットでは特に重要となる加速で、かなり苦戦したこと。データを検証して、マシンを改善できるようにベストを尽くします」

―今季最も厳しい展開だったと言えると思いますが、ピットから見ていて感じたことを教えてください。

「マルクが転倒を喫する中で、それでもうまく切り抜けたことをうれしく思っています。彼が転倒したとき、同時にドヴィツィオーゾも転倒しました。コースになにか問題があったように見えましたが、レース後、マルクがコースにはなにも問題がなかったと言っていました。2人のライダーは、同じ瞬間に、同じように転倒しただけです。終盤、ダニのペースが上がったのはいいポイントでした。彼が貴重なポイントを獲得できてうれしいです」

―前戦スペインGPのあとにヘレスで行われたテストは、とてもいい結果だったと思います。今回はその成果を生かせませんでした。

「マシンをよくするために一生懸命がんばっています。そして、確実によくなってきていますが、残念ながら現時点では、ル・マンのサーキットの特徴とは相性が最悪です。あるエリアでは、加速が非常に重要ですからね。引き続きがんばって取り組みます」

―今大会、なにかおもしろいサイドストーリーはありましたか?

「予選が行われた土曜日には、マルクもダニもファンと交流するためにパブリックエリアを訪れました。たくさんの人がいて、ファンからライダーに質問を投げかけられました。一人の男性がマイクを受け取ったあと、彼はマルクと話せることに感激して泣き出しそうになりました。これこそが、本当の“passion”ですね!」

次戦のイタリアGPは、昨年、マルケスがリタイアに終わり、右腕の手術から復帰したばかりのペドロサが4位という、厳しい結果の大会でした。しかし、マルケスにとってイタリアGPが開催されるムジェロ・サーキットは、125ccクラスに出場していた2010年にGP初優勝を達成し、11年にMoto2クラスで優勝、MotoGPクラスでは、14年にポール・トゥ・ウインを達成しているサーキットです。ペドロサも2005年に250ccクラスで、MotoGPクラスでは10年に優勝しています。今大会の悔しさをバネに、両選手の巻き返しが期待されます。

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