Honda Riders Close Up 〜ワークスマシンを駆って、世界に挑むライダー〜

Moto3 ヤコブ・コーンフェール Drive M7 SIC Racing Team

Moto3 ヤコブ・コーンフェール Drive M7 SIC Racing Team
Profile
生年月日
1993/04/08
出身地
チェコ
身長・体重
169cm・62kg
チーム(マシン)
Drive M7 SIC Racing Team(NSF250RW)
2015年の成績
Moto3 総合12位
Vol.1

23歳という若さににもかかわらず、ヤコブ・コーンフェールは現在のMoto3クラスの中で最も豊富な経験の持ち主の一人と言っていいでしょう。2009年にレッドブルルーキーズカップでチャンピオンを獲得した直後に、MotoGPの125ccクラスへ参戦。第13戦サンマリノGP以降の終盤5戦にエントリーし、世界選手権デビューを果たしました。以後、コーンフェールは毎年、最小排気量クラスにフル参戦を続けてきました。

 

2016年シーズンは、セパン・インターナショナルサーキットを運営母体とするDrive M7 SIC Racing Teamから参戦しています。HondaのMoto3マシンに乗るのは12年のFTR Honda以来ですが、NSF250RWは非常に乗りやすいと、コーンフェールは話します。

 

「今年のHondaのマシンはとてもいいと思います。僕はここ数年、ライバルメーカーのマシンに乗っていましたが、ストップ&ゴータイプだったそのマシンの特性と比較すると、Hondaの場合は全くの逆で、コーナリングスピードをできる限り高めて、マシンと格闘するような乗り方をしない方がいいんです。昨年Hondaのマシンに乗っていて今年からライバル陣営のものに乗り換えた選手たちよりも、ライバル陣営のマシンからHondaのマシンに乗り換えた僕の方がランキングで上にいるところに注目してもらえれば、僕の方がうまく順応できていることが分かってもらえると思いますよ」

確かに、今年のコーンフェールの成績は、過去の数シーズンと比べて安定しています。開幕以来、ほぼ毎戦でトップ10フィニッシュを果たし、ポイントを逃したのは17位で終えた第6戦イタリアGPのみです。

 

「今年は、開幕前にいくつか目標を立てていました。その一つが、難しいだろうけれども、毎戦しっかりとポイントを獲得しよう、ということです。例えば、一戦だけ目覚ましい成績を挙げてあとは全然駄目、という選手もいますが、毎戦安定して走ることができれば、最終戦のバレンシアGPを前に、かなりいい位置にいられると思います。実際に、走れば走るほど、マシンに対する理解が進んでいます。トップグループで走れるようになってきました。テレビにも結構映っていると思いますよ」

 

コーンフェールは、Moto3クラスで戦ってきた長年の経験によって、精神的なたくましさを身につけられたと話します。そして、それが今の彼の粘り強いレース運びにつながっていると、自らを分析します。

 

「僕は何度も悪運に見舞われましたが、そのたびに立ち上がってきました。上位陣を走っているときに追突されてしまう運の悪い出来事も、何度もありました。その瞬間はとてもがっかりしますが、次のレースまでには必ず気持ちを奮い立たせます。いつもそうやってきたし、それが自分の強みだと思います。でも、予選ではまだパーフェクトなラップを刻むことができていません。つまり、Hondaのマシンを完ぺきに乗りこなすすべを、僕はまだ十分に身につけていないんでしょうね。それが今の弱点かもしれません。ですから、向上しなければいけないことがたくさんあります。もちろん、レースごとに強くなっている自覚はあります。限界に来ている感じが全然ないので、もっと上達できると信じています。僕が目指しているのはもっと高い場所です」

 

ところで、Moto3クラスを戦うコーンフェールは、実はもう一つ、ユニークな選手権に参戦しています。

 

「MotoGPと同時に、ジェットサーフィンの選手権にも参戦しています。どちらかといえば、トレーニングと趣味を兼ねた参戦です。あくまでMotoGPが僕の中心で、最優先です。ジェットサーフィンは、楽しいしトレーニングにもなるし、大勢の人も観てくれるから、一石三鳥ですね」

 

では、もしもロードレースの道を選んでいなければ、コーンフェールはジェットサーフィンのプロフェッショナルライダーになっていた可能性があるのでしょうか?

 

「そうですね……。それは考えたこともありませんでした。あるいはひょっとすれば、父の仕事を手伝っていたかもしれません。父はチェコでマグロの卸販売事業を営んでいるのですが、母国語しか話せないのでその手伝いをできるでしょうし、アメリカやアジアの人たちの発想や彼らとのコミュニケーションも、僕なら少しは理解できますから」

 

さて、話題を今年のMoto3クラスに戻しましょう。コーンフェールの今シーズンの目標を、最後に語ってもらいました。

 

「一戦ずつ最善を尽くすこと。目の前のレースに集中すること。それが、今の自分に課していることです。バルセロナではバルセロナのレースに集中する。アッセンに行けば、アッセンのレースのことだけを考えるんです。そうやって取り組み続けて、リザルトを安定させられればなおいいですね。そして、最終戦バレンシアまでにトップ3につけていること。それが、今の僕の目標です」