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Vol.145

Repsol Honda Team、ダブル表彰台で2015年を締めくくる

第18戦バレンシアGPは、2015年シーズンの最後を飾るにふさわしい、熱く激しい戦いになりました。シーズン4回目となるスペイン開催の今大会は、Repsol Honda Teamのマルク・マルケス、ダニ・ペドロサ両選手のホームグランプリでもあるだけに、ぜひともいいリザルトを獲得して一年を締めくくりたいところです。両選手を応援しにリカルド・トルモ・サーキットへ詰めかけた大勢の地元ファンの前で、マルケス選手とペドロサ選手はともに力強い走りを披露し、満場の観客を大いに沸かせました

土曜の予選ではマルケス選手が2番グリッド、ペドロサ選手は3番グリッドと、そろってフロントローを獲得。日曜午後2時(日本時間午後10時)から30周で争われた決勝レースでも、両選手は序盤からトップグループを構成し、力強いペースで周回を重ねました。マルケス選手はトップを走る選手にピタリと張り付いて、オーバーテイクのチャンスを狙い続けました。ペドロサ選手はレース中盤にタイヤの温存を図ったために、そこから少し離れてしまいましたが、やがて本来のペースを取り戻してマルケス選手に肉薄。最終ラップまで激しいバトルを続けました。最後はマルケス選手が2位、僅差の3位でペドロサ選手がゴールし、その結果、Repsol Honda Teamはダブル表彰台で一年の戦いを締めくくりました。最後まで緊迫感に満ちた戦いが繰り広げられたこの第18戦と波瀾万丈の2015年シーズンを、HRCチーム代表のリビオ・スッポが振り返ります。

―最終戦のバレンシアGPは、どのようなレース戦略で臨んだのですか?

「ダニとマルクは、ともにいいレースができる仕上がりで、勝つ可能性も十分にありました。しかしながらロレンソ選手が非常に手強く、レコードを更新した彼のポールポジションタイムを見てもそれは明らかでした。レースウイークの温度条件は、我々が想定していたよりも高く、今回のブリヂストンのアロケーションは、我々のマシン特性では特にフロントタイヤのコンパウンドが少し柔らかすぎてしまう傾向になりました。
したがって、レースでは序盤周回からロレンソ選手にしっかりついていきながらも無理をしすぎず、終盤で攻撃を仕掛ける、という組み立てが最善の戦略であろうと考えました。実際に、マルクとダニはその戦略通りにレースを運んでくれたました。しかし、今日のロレンソ選手はあまりに強く、いま一歩かないませんでした」


―レースで得た収穫と課題を教えてください。

「収穫はいうまでもなく、マルクとダニが優勝争いを繰り広げてともに表彰台を獲得してくれたことです。しかし、一年間最後の戦いを1-2フィニッシュで飾るという夢は、残念ながら実現できませんでした。レース終盤にダニがマルクをオーバーテイクした際には、ややワイド気味にはらんでしまってそこをマルクが突いて抜き返したのですが、その間にロレンソ選手との差がわずかに開いてしまい、彼の優勝を許してしまう結果になりました。
残念なのは、マルクがロレンソ選手に勝てなかったことを一部の方々に信じてもらえず、その結果、過去数戦の雰囲気がまたもや蒸し返されてしまったことです。
もし勝つチャンスがあったのならば、マルクは必ずやロレンソ選手をパスしていたでしょう。しかし、今日のロレンソ選手は我々よりも間違いなく速かったのです。それを一部の方々に信じていただけないのは、本当に残念です。マルクは、ただひたすらベストを尽くすためにいつもレースをしています。そして、それを証明するの最善の方法はロレンソ選手に打ち勝つことだ、と一番よく分かっているのはマルク自身なのです」

―今回のレース展開を、ピットボックスからどんな気持ちで眺めていたのですか。

「我々は最後まで1-2フィニッシュを狙っていました。レース終盤にダニがマルクとロレンソ選手に迫っていったときは、本当に興奮しました。ダニがわずかにミスをしてしまったことで、マルクのロレンソ選手追撃にも影響が出てしまいましたが、それもレースです。マルクとダニは、ともにシーズン最終戦で優勝を狙っていたのですから。
今回のレースで優勝し、チャンピオンを獲得したロレンソ選手に対しては、心からの祝福を贈ります。シーズン7勝という実績は、今季の彼の速さと高い安定感をなによりもよく示しています。また、グリッド最後尾から猛烈な追い上げで4位フィニッシュを達成したロッシ選手にも、その力強い走りと長いシーズンを戦いぬいた強靱さに祝福を贈ります。願わくば、マルクがいつも懸命にレースをしていることを彼に理解してほしいと思います」

―第18戦の秘話のようなものがあれば、教えてください。

「今回のレースには、Hondaカナダの方々をゲストにお招きしました。Hondaと選手たちを応援するためにいつも遠路はるばる駆けつけてくださるのは、感謝の念にたえません。来年こそ、皆でタイトル獲得の喜びを分かち合いたいと思います。
2015年も、我々Hondaと選手を応援していただき、ありがとうございました。我々は、来年こそ王座奪還を賭けて、新たな長いシーズンに臨みます。これからも変わらぬ応援を宜しくお願いいたします」