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Vol.143

マルケス、最終ラップの激戦を制して今季5勝目

第16戦オーストラリアGPは、最終ラップの最終コーナーまで激しいバトルが続く、近年屈指の名勝負になりました。Repsol Honda Teamのマルク・マルケス選手は、ライバル勢3選手と何度も順位を入れ替え、最終ラップはその激戦の集大成ともいうべき手に汗握る攻防を繰り広げました。コース終盤の下りながらタイトに左へ曲がる10コーナーで、ハードブレーキングの勝負に出てトップに立ったマルケス選手は、切り返して左へ旋回する高速コーナーでもその位置を守りきって優勝。MotoGPクラスではフィリップアイランド・サーキット初勝利で、125ccクラスから数えて通算50勝という節目を飾りました。一週間前の日本GPを制した記憶が未だに新しいダニ・ペドロサ選手は5位でチェッカーフラッグ。渾身の力で戦った両選手と、彼らが全力を発揮できるマシンを仕上げるためにスタッフ全員が総力を結集して戦いきった今回のレースウイークの裏側について、HRCチーム代表のリビオ・スッポが明かします。

―第16戦オーストラリアGPの決勝は、どのようなレース戦略で臨んだのですか。

「今回のレースウイークで、マルクは非常にいいアベレージタイムを刻んでいました。しかし、ロレンソ選手も強力で、特に日曜朝のウォームアップを見る限り、彼が最大の強敵になりそうな気配でした。レースはこの2人の戦いになると予想していたのですが、ふたを開けてみると、イアンノーネ選手、ロッシ選手を交えた4名が最後まで激戦を続ける展開になりました。1分29秒2というすばらしい自己ベストタイムを刻んだ最終ラップのマルクの走りは、今思い出しても信じられない気持ちがします。あの若さで、通算50勝という記念すべき節目を見事に飾ったのは、本当にすばらしいと思います。ダニについては、今週は特にコースの最終セクターで苦戦をしていました。レース序盤にトップグループの争いに加わったところまではよかったのですが、なにかが足りなかったために彼らに食らいついていくには至りませんでした」

―今回の収穫と反省点を教えてください。

「今回の収穫は、言うまでもなく勝利を達成したことです。最高の勝ち方だったと思います。マシンについては、マルクもダニも、そしてカルも非常に高い戦闘力を発揮してくれました。反省点は、ダニが表彰台を逃してしまったことです。もてぎで見せてくれた力強い勝利を、流れに乗せて今回のリザルトにつなげられなかったのは残念ですが、次のセパンでは、必ずやダニ本来の強靱な走りを見せてくれると信じています」

―今回のレースは、どんな気持ちでピットから見ていたのですか。

「私は20年ほどこの世界にいますが、今日は今まで私が見てきた中でも屈指のレースだったと思います。最終ラップに入るコントロールラインを通過したときは『今回は2位でも仕方ないかもしれない』とも思っていたのです。ところが、マルクは前の選手を捕らえてトップでゴールラインを通過したのですから、本当に興奮しました。あのうれしさは、今後もきっと忘れることがないでしょうね」

―レース秘話のようなものがなにかあれば、教えてください。

「今年のオーストラリアGPでも、いつものようにミック・ドゥーハン氏が我々のピットを訪問してくれました。ミックはMotoGPレジェンドで、HRCの歴史でも重要な位置を占める人物ですが、彼に会うのをいつも楽しみにしているんです。だって、彼は我々にとって家族と同然の存在なのですから。今回のレースでも、皆さまの応援に支えられて我々は勝利を手にすることができました。次戦でも選手とチーム全員が一丸となって、最高の結果を得るために総力を結集して努力を続けていきます。引き続き、皆さまも力強い声援をよろしくお願いいたします」