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Vol.140

波乱の展開を制したマルケスが今季4勝目、ペドロサは9位

今季2度目のイタリア開催となる第13戦サンマリノGPが、ミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで行われました。イタリア有数の観光地リミニからカットリカ一帯のやや内陸部に位置している当サーキットは、おおむね毎年、さわやかな気候と爽やかな好天に恵まれた環境下でレースが行われます。今年のレースウイークも、金曜日と土曜日は例年通りの良好なコンディションで推移しましたが、日曜日の決勝レースは開始直前からわずかに雨がぱらつき始め、スタート直後に“フラッグ・トゥ・フラッグ”が宣言されました。ほどなく雨脚が強くなり、ウエットコンディションになったものの、しばらくすると雨が上がって路面は急速に乾いていきました。

ドライからウエット、そして再びドライへと変化するこの難しい状況下で、Repsol Honda Teamのマルク・マルケス選手は状況の変化を的確に判断しました。レーススタート時のスリックタイヤを装着したドライ用マシンからウエット用タイヤとセッティングのマシン、そして再びスリックタイヤのマシンへと乗り換え、最後は後続に7.288秒差をつけて独走優勝。今季4勝目を達成しました。また、チームメートのダニ・ペドロサ選手も、各陣営のピットインとピットアウトが入り乱れる状況をしっかりと乗りきり、9位でチェッカーフラッグを受けました。

今季最大ともいえる波乱のレースを、選手とスタッフ全員が総力を結集し、気持ちを一つにして立ち向かった第13戦の一部始終について、HRCチーム代表のリビオ・スッポが語ります。

―波乱の第13戦は、どんな戦略で決勝レースに臨んだのですか。

「今回はだれも雨を予測していなかったと思います。気象予報はずっと晴れという情報でしたからね。しかし、レースが始まる直前には、明らかに雨が降りそうな雲行きでした。そこでチームと選手は、雨が降ってきた場合、自分たちと異なるタイヤで走行するライバル陣営の状況をピットレーンからサインボードで選手に通知する、ということを打ち合わせました。マルクに関しては、この作戦はとてもうまくいきました。路面が乾いてきたとき、すでにスリックタイヤに履き替えた選手たちは、ウエットタイヤのまま走行し続けている選手たちよりも非常に速いラップタイムで周回している、とサインを出したのです。ダニは残念ながら、サインボードのこの表示を見落としてしまい、ピットインするタイミングが遅くなってしまいました」

―今回のレースで得た収穫と課題点を教えてください。

「第13戦は、総じて非常にいい内容でした。マルクとダニは、ウイークを通してともに高い戦闘力を発揮してくれました。特にマルクの場合は、速さに加えてレース運びが非常にクレバーでした。残念なのは、ダニのリザルトです。本来ならばもっといい順位を得ていてもおかしくない水準の走りだっただけに、それが心残りです」

―今回の決勝は、どんな気持ちでレース展開を眺めていたのですか。

「あそこまでコンディションが二転三転するレースは、ほかにはちょっと思い出せないほどですね。我々は決勝レースの間ずっと、異なるタイヤを装着した選手たちのラップタイムがどんな状況なのかを見極め、どのタイヤを選択するのが最適なのか、ライダーに通知することに集中していました」

―今回の第13戦での、特別なエピソードなどがあれば教えてください。

「決勝レースが終わった日曜日の夜、チームのホスピタリティで、故マルコ・シモンチェリ選手の父君であるパオロ・シモンチェリ氏と夕食をともにしました。彼と会うのはいつも楽しみです。今回は、イタリア選手権やFIM CEVレプソルインターナショナル選手権に参戦し、若手選手の育成を目指す氏のプロジェクトについて、興味深い話をたくさんうかがいました。また、マルコのさまざまな思い出話も尽きることがありませんでした。マルコはいつまでも、私たちの中に生き続けています。さて、次の第14戦はアラゴンGPです。そのレースでも、我々は最高の結果を目指し、チームと選手が一丸となって臨みます。皆さまもぜひ、変わらぬ熱いご声援をよろしくお願いいたします」