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Vol.138

チェコの大観衆の前でマルケスが2位表彰台

第11戦チェコGPの開催地ブルノサーキットは、シーズン全18戦の中でも屈指の動員数を誇るサーキットです。今年の大会も、レースウィークの3日間総計で24万8434人の大観衆が観戦に訪れました。日曜の決勝レースは大勢のファンが見守る中で熱戦が繰り広げられ、Repsol Honda Teamのマルク・マルケス選手はレース序盤から安定した速さを発揮。22周の難しい戦いを最後まで安定したペースで走りきって、2位表彰台を獲得しました。一方、チームメートのダニ・ペドロサ選手は、金曜のフリープラクティスで転倒を喫し、左足首を強打してしまいました。以前に傷めた部位だけに、日曜の決勝レースは厳しいレースになることも予想されましたが、ペドロサ選手は強靱な精神力と高い技術でマシンの性能を存分に発揮し、ライバル選手とのバトルを制して5位でチェッカーフラッグを受けました。

けっして順風満帆には進まない状況を、選手とチームスタッフが気持ちをひとつにして乗り切り、考えられる最高の結果を得た今回の戦いについて、HRCチーム代表のリビオ・スッポが語ります。

―チェコGPの決勝レースは、どんな戦略で臨んだのですか?

「今回のブルノ・サーキットでは、ロレンソ選手が非常に速いであろうことは充分に予測をしていました。したがって、マルクの戦略は可能な限りロレンソ選手にピタリとつけてプレッシャーを与え、可能ならばインディアナポリスのときのようにオーバーテイクを仕掛ける、というものでした。しかし、そのような展開に持ち込むには、残念ながら今日のロレンソ選手は強すぎました。そのような状況下でも、マルクは最善を尽くして可能な限り最上のリザルトを獲得し、チャンピオンシップポイントでもトップに対して4点を詰めてくれました。
ダニは、金曜のプラクティスで転倒して左足を傷めてしまったために、厳しいレースでした。しかし、そのような体調でも彼はすばらしいレースをしてくれました。1周目1コーナーで他選手に阻まれて順位を落とすことがなければ、きっとロッシ選手を相手に3位争いもできていたはずです 」

―今日のレースでの、よかったところと改善点を教えてください。

「両選手とも非常によい走りをしてくれました。改善点を挙げるならば、レースに勝てなかったことです。レースでは、いつも勝てるとは限りません。ときには負けることもあります。今回の反省点は、ダニが負傷をしてしまったことです。ただ、もっとひどい怪我になる可能性もあったと考えれば、あの程度の負傷で済んでくれてよかったとも言えるでしょう。そのような状態の中でもダニは決勝レースで健闘してくれたので、我々としてはとてもうれしく思っています」

―では、その決勝レースはどんな思いでピットボックスから見ていたのですか?

「レース序盤に、マルクがロレンソ選手の背後につけているときは、リア用にマルクが選択したハードコンパウンドタイヤが終盤になって有利になるかもしれない、と思ってレース展開を見ていました。中盤になってロレンソ選手にはついていけなくなりましたが、ロッシ選手との間には充分なマージンを築いていたので、安心してレースを観ることができました。ダニもエキサイティングなレースをしてくれました。力強い走りを最後まで維持して、終盤にドヴィツィオーゾ選手をオーバーテイクする姿はとても印象的でした。右腕に何の問題も生じなかったことも、よかったと思います」

―今回のレース秘話があれば教えてください。

「金曜午後のFP2で転倒したあと、ダニは非常に強い痛みを感じていました。しかし、土曜の走行では一切痛み止めを使用せずにすべてのセッションを走りきりました。土曜に鎮痛剤を使用すれば、左足首の痛みを感じなくなってもっと攻めの走りをして、予選でもよいグリッドポジションを獲得できていたかもしれません。しかし、痛みを感じずに酷使をすれば、日曜に向けて足の状態はさらに悪くなっていたでしょう。激しい痛みをこらえて、速いラップタイムを刻むくらい、ダニは強靱な精神力の持ち主なのです。そんな選手たちの頑張りに応えることができるように、次のレースでも我々は全員が一丸となって力を合わせ、最高の結果を目指して戦います。次戦のイギリスGPでも、力強い応援を是非ともよろしくお願いいたします」