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Vol.131

マルケス、ケガを跳ね返し2位表彰台を獲得

2015年シーズンの戦いは本格的な欧州ラウンドへ舞台を移し、第4戦スペインGPが同国南部のヘレスサーキットで開催されました。全18戦中でも最も盛り上がる会場の一つであるヘレスサーキットには、レースウイークの3日間総計で24万3570人の観客が詰めかけました。Repsol Honda Teamのマルク・マルケス選手は、レースウイーク前週のトレーニングの際に左手小指を骨折するケガを負ってしまいましたが、冷静に目標を見据えた取り組みでプラクティスセッションに臨み、予選ではフロントロー2番グリッドを獲得。決勝レースには鎮痛剤を使用して臨み、負傷を思わせない力強い走りで2位表彰台を獲得しました。

腕上がりの手術から回復中のダニ・ペドロサ選手に替わって今回も代役参戦した青山博一選手は、安定感の高い走りで予選は6列目16番グリッド。決勝レースでは後半の追い上げを狙った戦略でしたが、作戦が功を奏する前に残念ながら転倒を喫し、リタイアとなってしまいました。

厳しい試練を乗り越え、勇敢な走りで目の肥えた地元ファンの期待に応えて好成績を残した選手と、その高い目標を実現するために総力を結集して全チームスタッフが戦った今回のスペインGPについて、HRCチーム代表のリビオ・スッポが振り返ります。

―今回のスペインGPはどのようなレース戦略で戦ったのでしょうか。

「マルクに関しては、可能な限りチャンピオンシップポイントを獲得することを目標とし、チャンスがあれば表彰台も目指す、という姿勢で臨みました。指を骨折した状態で、27周という長丁場を戦い抜くのは容易なことではありません。理想からはほど遠いそんな体調だったにもかかわらず、マルクはすばらしい走りで2位表彰台を獲得してくれました。ランキング首位のロッシ選手の前でフィニッシュしたことにより、彼とのポイント差も4点縮めることができました。一方、青山選手は決勝でリアタイヤにハードコンパウンドを選択しており、レース終盤に有利さを引き出して追い上げようという戦略でした。序盤から安定したすばらしい走りを続けていたのですが、ハードの長所を引き出す前に残念ながら転倒を喫し、リタイアを余儀なくされてしまいました」

―今回のレースではどのような収穫がありましたか。また改善すべき点があれば教えてください。

「骨折の手術からたった1週間後にもかかわらず、マルクが力強い走りで2位を獲得してくれたことが、もちろん、今回の最大の収穫です。残念なのは、青山選手が完走できなかったことです。ダニの代役として急きょ、3レースに参戦をしてくれて、今回もしっかりと任務を果たしてくれただけに、彼の貢献にふさわしい結果を残せなかったことは第4戦の反省材料です」

―今回の決勝レースをピットボックスから眺めていて、どんな心境でしたか。

「レース序盤に、マルクがロレンソ選手にピタリとつけていたのは、本当に驚くべき光景でした。中盤になると、骨折した左小指へ負担がかからないように右手でかばっていたために、右腕の疲労感が大きくなってきました。やがて後方からロッシ選手が追い上げてきたので、これはひょっとしたら前戦アルゼンチンGPの再現になるのかもしれない、という思いが脳裏をよぎりました。しかし、その後もマルクは全力で走り続け、縮まりかけたロッシ選手との差を再び大きく広げていったのです」

―今回のレースウイークで、何か秘話のようなものがあれば教えてください。

「月曜の事後テストでは新しいスイングアームを試しました。我々は当初、過酷な日曜のレースの直後だけに、マルクにテストをしてもらうのは難しいかもしれない、と考えていました。しかし、決勝レースが終わると、マルク自身が、『僕のフィードバックが必要だとHRCのエンジニアの人たちが考えているなら、テストをしてもかまわないよ』と言ってくれたのです。多くの周回を走り込んだわけではないのですが、貴重な情報を得ることができました。万全の体調ではなかったのに、テストに積極的に参加してくれたマルクには感謝の気持ちでいっぱいです。彼の貢献と、そしてファンの皆さまの期待にこたえるためにも、我々は次戦以降のレースも全力で戦っていきます。次戦も応援をよろしくお願いいたします」