モータースポーツ > ロードレース世界選手権 > HRCチーム代表 リビオ・スッポ 現場レポート > vol.130 ラスト2周で勝負を分けたアルゼンチンGP

Vol.130

ラスト2周で勝負を分けたアルゼンチンGP

2015年MotoGP第3戦アルゼンチンGPが、首都ブエノスアイレスの北西1000kmに位置するアウトドルモ・テルマス・デ・リオ・オンドで開催されました。2014年からカレンダーに組み込まれた当コースでは、昨年のレースでRepsol Honda Teamのマルク・マルケス選手がポール・トゥ・ウインを獲得、チームメートのダニ・ペドロサ選手が2位というリザルトでした。今年もマルケス選手は圧倒的な速さを披露してポールポジションを獲得。日曜の決勝レースでも序盤から独走態勢を築き上げましたが、終盤に追い上げてきたライバル選手とバトルになり、ラスト2周で接触が発生。マルケス選手は残念ながら転倒を喫して、リタイアとなってしまいました。

ペドロサ選手の代役として前戦に引き続き参戦したHRCテストライダーの青山博一選手は、5列目15番手スタートしたものの、22番手と順位を下げました。そこから着々とポジションを回復。落ち着いた粘り強い走りで最終ラップには11番手へと追い上げます。ところが、ライバル陣営の選手に接触されて残念ながら転倒を喫し、リタイアとなってしまいました。

レースリザルトには結びつかない結末になってしまいましたが、両選手とも高いレベルの走りを披露した今回の第3戦の戦いについて、HRCチーム代表のリビオ・スッポが振り返ります。

―アルゼンチンGP決勝のレース戦略はどんなふうに想定し、組み立てていたのですか?

「決勝レースで、マルクはリア用にハードコンパウンドのタイヤを装着して臨みました。エクストラハードコンパウンドでは優勝を目指して十分に速いペースで走行することは難しそうだ、と判断したからです。ロッシ選手はエクストラハードを選択していたので、我々の戦略はレース序盤で差を開き、そのアドバンテージを最後まで維持する、というものでした。
この戦略はうまく運び、マルクは後ろに4秒以上の差を築き上げてくれたのですが、レース終盤にロッシ選手が追い上げてきました。両選手は激しいバトルを繰り広げ、その結果として接触が発生し、残念ながらマルクは転倒を喫してしまいました。
青山選手はスタートに失敗したものの、そこから着実に順位を回復し、最終ラップには11番手まで追い上げていました。しかし、彼も残念ながらペトルッチ選手と接触し、転倒をしてしまったのです」

―今回のレースでの、良かった点と反省点はそれぞれ何になるでしょうか。

「マルクは予選でポールポジションを獲得し、非常に力強い速さを発揮してくれました。決勝レースでも序盤から大きなリードを築き、終盤まで独走状態でした。マルクとRC213Vの組み合わせは非常に強力なパッケージだと今回も証明してくれたことは、ポジティブな点だといえるでしょう。これは、青山選手のたくましい順位回復についても、あてはまりますね。反省点は、両選手のこの力強い走りを、結果として残せなかったことです」

―ピットボックスから決勝レースを見ていて、どんな気持ちでしたか?

「ロッシ選手がレース終盤に速さを発揮することは、我々にも分かっていました。だから、レース序盤にマルクが差を広げてくれたことを、我々はうなずきながら見ていました。ロッシ選手が追い上げてきたときは、このマージンを維持できればいいと思ったのですが、残念ながらラスト2周で両選手の接触が発生してしまったために、マルクが勝てたかどうかは分からずじまいになってしまいました。一方、青山選手がラップタイムを上げて順位をどんどん回復してゆく姿は、いい調子だぞと思って見ていました。それだけに、最終ラップでの出来事は本当に残念でなりません」

―今回のレースウイークのインサイドストーリーを教えてください。

「アルゼンチンに来るたびに、ここの観客の方々の情熱に圧倒される思いがします。決勝日の朝、我々はかなり早い時間にホテルを出発したのですが、大勢のファンの人たちがマルクがホテルから出てくるのを待っていてくださり、警察官が出動してその場を整理する状況でした。MotoGPがこんなに人気があることを目の当たりにできて、うれしく思います」