Vol.190 Round 09

マルケスがドイツGPで9連勝達成。3年連続のタイトル獲得に向けて前進

シーズン前半戦のしめくくりとなる第9戦ドイツGPは、今季3回目のポールポジション(PP)から決勝を迎えたマルク・マルケスが今季5勝目を挙げました。前戦オランダGPに引き続き、3日間ともに快晴となったことで、フリー走行と予選でマルケスは、タイヤテストに集中しました。フリー走行3では、トップから1秒差に16人がひしめく厳しい戦いとなりましたが、その中でマルケスはソフト、ミディアム、ハードのタイヤを組み合わせてロングランを実施。一度もアタックせず総合6番手で予選Q2に進出。その後、予選前に行われるフリー走行4でマルケスは、ユーズドタイヤで1分21秒台の好タイムを連発して優勝候補の筆頭にいることをアピールしました。

フリー走行でロングランを重点的に行ったことでタイヤに余裕があったマルケスは、予選Q2で3セットの新品タイヤでアタックしました。その3セットのタイヤでコースインする毎に着実にタイムを更新して6年連続PPを獲得。125cc、Moto2時代を含めて9年連続PP獲得という偉業を達成、決勝でも9連勝の偉業達成に期待が集まりました。

迎えた決勝レースは、レースウイークでもっとも気温が高い27℃。路面温度も48℃ともっとも厳しい条件となりました。しかし、決勝に向けて準備を整えてきたマルケスは、フロントにハード、リアにソフトを選択してレースに挑みました。

序盤はホルヘ・ロレンソ(ドゥカティ)、ダニーロ・ペトルッチ(ドゥカティ)の2人が先行しますが、5周目にペトルッチ、13周目にロレンソをかわし首位に浮上してリードを広げます。その後、バレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)がドゥカティ勢の2人を抜いてマルケスとの差をじりじりと縮めてきました。後半、その差が0.6秒に縮まったところで、マルケスはスパート。タイヤを温存していたマルケスは、22周目にファステストラップを刻むと一気に引き離します。その後もリードを広げ終盤には約4秒のリードを築き、悠々の独走優勝を成し遂げました。

これで最高峰クラスではアメリカズGPに続き、2度目となる同一サーキットの6連勝達成、ドイツGPでは125cc、250ccを含めて9連勝というすばらしい記録を樹立しました。同一サーキットでの連勝記録は、ジャコモ・アゴスチーニが1960年代から70年代にかけてフィンランドGPで達成した11連勝という記録があります。その記録にはまだ届きませんが、予選の記録が残る1974年以降では、ケーシー・ストーナーがオーストラリアGPで達成した5年連続ポール・トゥ・ウインをブレイクしました。マルケスは今年のアメリカズGPでも6年連続ポール・トゥ・ウインを達成していますが、このときは、走路妨害のペナルティで4番グリッドから決勝を迎えました。記録上では2度目の6年連続ポール・トゥ・ウインですが、トップグリッドから決勝に挑んだレースとしては初の記録達成となりました。

今季末を最後に引退を表明したダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)が予選10番手から8位でフィニッシュ。代役出場のステファン・ブラドル(Estrella Galicia 0,0 Marc VDS)が16位、チームメートのトーマス・ルティ17位。カル・クラッチロー(LCR Honda CASTROL)と中上貴晶(LCR Honda IDEMITSU)はともに転倒リタイアでした。

シーズン前半締めくくりのレースでマルケスが今季5勝目。3年連続チャンピオン獲得にまた一歩前進したレースをアルベルト・プーチ監督が振り返ります。

―ドイツGPの戦略はどういうものでしたか?

「マルクの戦略は、いいスタートを切って、数周は慎重に走り、それからタイヤをセーブするというものでした。後半になればライバルたちに比べて強い走りができることをわかっていました。その通りの展開となりました。彼はとても戦術的なレースをしました。一方、ダニは厳しいレースウイークとなりましたが、彼の戦略は、スタートからゴールまで走りを改善しようと努力することでした」

―今大会のポジティブポイントとネガティブポイントを教えてください。

「ポジティブなことはマルクがドイツGPで9連勝を達成したこと。そして、チャンピオンシップで重要な25ポイントを、再び、獲得したことです。この結果、マルクが総合2位の選手にリードを広げ、46ポイント差としました。ネガティブポイントは、ダニが苦戦したこと。そして、LCR Hondaの2人がともにリタイアしたことです」

―レース中、ピットウォールから見ていた感想をお聞かせください。

「難しいレースでした。レース前半は多くのライダーがトップグループに加わるだろうということはわかっていました。しかし、マルクは冷静に状況を見ていたし、いつ、スパートすればいいのかということも正確に把握していました」

―今大会のサイドストーリーを教えてください。

「優勝したときは、レース終了後に表彰台に上がるスタッフを決めるのですが、今回はドイツGPということで、唯一のドイツ人スタッフのゲアオールド・ブーハにあがってもらいました。彼は自身のホームレースで特別な瞬間を楽しんでいました」

こうしてシーズン前半戦の締めくくりのレースで3年連続タイトル獲得に向けて一歩前進のマルケス。過去の戦いを振り返れば、16年シーズンは、第9戦ドイツGPを終えて総合2位に48ポイント差(3勝)。厳しい戦いを強いられた昨年は、第9戦ドイツGPを終えて総合2位に5ポイント差(2勝)でしたが、いずれにしても、ドイツGPの優勝でいい流れに乗ることに成功しました。今年もドイツGPで優勝し、総合2位に46ポイント差(5勝)とまずまずの内容でシーズンを折り返すことになりました。

後半戦はマルケスとHondaにとって十分に優勝を狙えるサーキットが続きます。次戦チェコGPは、ドイツGPの前にテストを行い準備を終えています。2週間という短いサマーブレイクですが、この2週間で疲れを取り、リフレッシュした状態で後半戦を迎えるRepsol Honda Teamの戦いに注目です。

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