2016年シーズンの幕開けを告げる公式テストが、2月1日(月)〜3日(水)の3日間、マレーシアのセパン・サーキットで行われました。ルールにより、12月1日〜1月31日は、レギュラーライダーによるテストが禁止されています。そのため、レギュラーライダーの今季初テストに向けて、1月30日(土)、31日(日)の2日間、テストライダーによる予備テストが行われた上で、2月1日から公式テストが始まりました。
マルク・マルケス(#93)、ダニ・ペドロサ(#26)
マルク・マルケス
今季初のテストに参加したのは、Repsol Honda Teamのマルク・マルケスとダニ・ペドロサ、LCR Hondaのカル・クラッチロー、Estrella Galicia 0,0 Marc VDSのティト・ラバトの4選手。今季、MotoGPクラスに参戦するHonda勢は5選手ですが、MARC VDS Racing Teamから参戦するジャック・ミラーは、モトクロストレーニング中に右脚を負傷したため、今回のテストへの参加を見送りました。
連日、30℃を超える猛暑で、1日目と2日目は青空が広がりました。3日目は何度かスコールとなりましたが、予定していた周回数をほぼこなし、3日間のテストを終了しました。
マルク・マルケス
ダニ・ペドロサ
今年は、2つの大きなルールの変更があります。一つは、14年に採用されたECU(エンジン・コントロール・ユニット、エンジン制御を司るコンピューター)の共通ハードウエアに続き、今年から全車共通のソフトウエアが採用されること。もう一つは、MotoGPクラスに供給されるタイヤが、ブリヂストンからミシュランへと変わったことです。そのため今年のウインターテストは、マシン作りに大きな影響を及ぼすこの2つの変更点を確認しながら、マシンの調整を行う必要があります。マレーシア、オーストラリア、カタールと続く3度のテストは、これまでになく重要なものになります。
13年に史上最年少記録で世界チャンピオンに輝き、14年にシーズン史上最多優勝記録を更新して2連覇を果たしたマルケスは、昨年はシーズン5勝を挙げて総合3位という結果でした。今年はタイトル奪還と、3度目のチャンピオン獲得を目指すことになります。
マルケスは今回のテストで、16年型RC213Vに新しい電子制御を組み込んで、3日間のテストに取り組みました。スペックが少し異なるエンジンを搭載した2台のマシンを使い、新しい電子制御を調整。同時に、ミシュランタイヤのフィーリングを確かめながら、3日間で147ラップをこなし、集中したテストを行いました。
昨年のテストでは、1分58秒台という前人未踏のスーパーラップを叩き出したマルケスですが、今年は変更された2つのルールを確認しながらのテストとなり、ベストタイムは2分00秒843。3日間の総合では5番手となりました。RC213Vのパフォーマンスを十分に引き出したとは言えませんが、次回のテストに向けて、多くのデータ収集に成功しました。
マルク・マルケス
ダニ・ペドロサ
チームメートのペドロサは、3日間で合計118ラップを周回しました。Repsol Honda Teamで11年目のシーズンを迎えるペドロサは、これまでの経験を生かし、セットアップに多くの時間を割きました。最も多くの時間を割いたのは、新しい電子制御への取り組みでした。2日目には、軽い転倒を喫しましたが、マルケス同様、多くのデータを収集することに成功。次のオーストラリアテストで、このデータを生かすことになります。
ペドロサは3日間の総合では11番手。セットアップに重点を置いたためにスロースタートとなりましたが、念願のタイトル獲得に向けて、気合満点のシーズンインとなっています。昨年は右腕の手術のためにシーズン2勝、総合4位でしたが、今年は念願のタイトル獲得に挑みます。
ダニ・ペドロサ
カル・クラッチロー
LCR Hondaに移籍して2年目のシーズンを迎えるクラッチローは、2015年型エンジンに新しいソフトウエアを搭載したマシンでテストを開始しました。3日目には16年型エンジンのテストを行い、着実にタイムを上げることに成功しました。昨年は表彰台に1度登壇して総合8位。クラッチローにとっては不本意なリザルトに終わった前年の雪辱に向けて、闘志を燃やしています。今回の初テストでは、3日間で139ラップ、総合ではマルケスに続く6番手。次回のオーストラリアテストでは、さらに上位を狙います。
14年のMoto2チャンピオンで、昨年総合3位のラバトが、今年は念願のMotoGPクラスにチャレンジします。初テストとなった今回は、3日間で164ラップを刻み、総合17番手。今回のテストでは、MotoGPマシンに慣れるための慣熟走行が最大の目的で、本格的なテストはそれ以降になります。
ティト・ラバト
次回のテストは、2月17日(水)〜19日(金)の3日間で、オーストラリアのフィリップアイランドで行われます。次回のテストには、ミラーも参加する予定で、Honda勢5選手がそろうことになります。
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム/差 |
---|---|---|---|---|
1 | 99 | J.ロレンソ | ヤマハ | 1'59.580 |
2 | 9 | D.ペトルッチ | ドゥカティ | +0.515 |
3 | 8 | H.バルベラ | ドゥカティ | +0.807 |
4 | 46 | V.ロッシ | ヤマハ | +0.976 |
5 | 93 | マルク・マルケス | +1.263 | |
6 | 35 | カル・クラッチロー | +1.319 | |
7 | 45 | S.レディング | ドゥカティ | +1.469 |
8 | 29 | A.イアンノーネ | ドゥカティ | +1.472 |
9 | 27 | C.ストーナー | ドゥカティ | +1.490 |
10 | 38 | B.スミス | ヤマハ | +1.527 |
11 | 26 | ダニ・ペドロサ | +1.581 | |
12 | 25 | M.ビニャーレス | スズキ | +1.664 |
13 | 41 | A.エスパルガロ | スズキ | +2.043 |
14 | 68 | Y.ヘルナンデス | ドゥカティ | +2.064 |
15 | 4 | A.ドヴィツィオーゾ | ドゥカティ | +2.095 |
16 | 44 | P.エスパルガロ | ヤマハ | +2.290 |
17 | 53 | ティト・ラバト | +2.748 | |
18 | 6 | S.ブラドル | アプリリア | +2.792 |
19 | 76 | L.バズ | ドゥカティ | +2.961 |
20 | 21 | 中須賀克行 | ヤマハ | +3.111 |
21 | 19 | A.バウティスタ | アプリリア | +3.296 |
22 | 51 | M.ピロ | ドゥカティ | +3.623 |
23 | 50 | E.ラバティ | ドゥカティ | +3.939 |
マルク・マルケス(総合5番手 2分00秒843)
「全体的に一発の速さはありませんでしたが、多くの周回をこなし、リズムを作ることでいくつか進歩できました。最終日は時折雨が落ちて作業が止まることがありましたが、ある程度高いレベルでペースを維持できるようになってきました。まだ望んでいるものとは隔たりがありますが、これは重要な進展だと思っています。自分にとって一番の問題は電子制御です。正しいレベルとは程遠い感じがします。昨年11月のテストは、間違った方向に進んでしまった気がしますが、現在は正しい方向で進んでいます。ポジティブな部分は、前回のテストよりもかなり前進したことです」
ダニ・ペドロサ(総合11番手 2分01秒161)
「マシンに関してすべきことが多く、タフな数日間でした。まだポテンシャルのすべてを発揮できているとは言えないですし、マシンに対して改善すべき点がたくさん残っています。ともあれ、マシンと我々の仕事ぶりには満足しています。現時点では、コーナー出口でタイムをロスしています。電子制御とタイヤの変更は、だれにとっても全く新しい取り組みですが、シャシーとライダーは変わっていませんし、だからこそ、それほど遠くはない開幕戦に向けて、できる限り素早く対応しなければなりません」
カル・クラッチロー(総合6番手 2分00秒899)
「全体的には、この3日間のテストは満足いくものでした。我々はメニューをしっかり消化できましたし、3日目には、2016年のエンジンを与えられて、多くのことをテストできました。ダニとマルクが使っているものと同じ、最新式であり、うれしくて自分のベストラップを更新できました。いい点はもちろん、いくつかネガティブな点はありますが、HRCに対してもいいフィードバックができたと思います。そこまでハードにはプッシュしていなかったですし、もっと速くなれるだろうと楽観視していますが、電子制御の改善は、最大の課題です。HRCのハードワークのおかげで、我々LCRは、いい仕事ができたと思います」
ティト・ラバト(総合17番手 2分02秒328)
「2日目から、リアタイヤをハードにしてテストを行いましたが、いいフィーリングを得られず苦労しました。最終日はその点に着目し、大きな変更を施しました。その結果、フィーリングがよくなり、ラップタイムにも反映されました。第5コーナーで転倒しました。アウトラップで、それほどプッシュしていなかったのですが、フロントから滑って転倒してしまいました。スペアのマシンで再度コースインしましたが、サーキットのコンディションがあまりよくなく、最終コーナーでまた転倒してしまいました。2度の転倒により、我々がテストを切り上げようと決めたあと、コースのコンディションが改善されたので悔しいです。今回はとても疲れました。次のフィリップアイランドでは、RC213Vに乗って、いろいろと改善できるようがんばりたいです」