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2016.10.27 ロードレース世界選手権 第17戦 マレーシア マレーシアGP プレビュー

マレーシアGP プレビュー

MotoGP レポート

日本GP、オーストラリアGPに続く3連戦最後の戦いとなる第17戦マレーシアGPが、10月28日(金)〜30日(日)の3日間、クアラルンプール郊外のセパン・サーキットで開催されます。マレーシアGPは、1991年にシャーアラムでスタートしました。その後、ジョホールへと舞台を移し、99年からはクアラルンプール国際空港に近い、セパンで開催されるようになりました。マレーシアGPは今年で26度目、セパンでは18度目の開催となります。

セパンは一周5.543km。2本の長いストレートとバラエティーに富んだコーナーが組み合わさったレイアウトで、MotoGPマシンのテストに適していることから、ウインターテストの舞台として定着しました。マレーシアは熱帯地方であり気候が安定しているため、一年中走行することができます。今年は2月上旬に公式テストが行われました。

チームや選手にとって、セパンはシーズンを通して最もデータが豊富なサーキットと言えます。ECU(エンジン・コントロール・ユニット)の共通ソフトウエアの採用とブリヂストンからミシュランへのタイヤ変更が行われた今年は、シーズン最初のテストがセパンで開催されています。テストから8カ月。選手たちにとって、マシンのセットアップなどがどう進化したのか確かめられる大会となります。

前戦オーストラリアで今季7度目、歴代1位となる65度目のポールポジション(PP)を獲得したマルク・マルケス(Repsol Honda Team)。決勝でもトップを快走しながら、時間を追うごとに冷えていく路面でのブレーキングミスで転倒を喫しました。今大会ではシーズン6勝目に挑みます。

すでに3連戦最初の大会となった第15戦日本GPで最高峰クラス3度目のタイトルを獲得したマルケス。オーストラリアGPではチャンピオンらしい走りを存分にみせてくれたものの、結果につなげられませでした。今大会では2年ぶりのPP獲得と大会制覇を目指します。

マルケスはオーストラリアGPの後にインドネシアで行われたイベントに参加。大勢のファンにチャンピオン獲得の報告をしました。今大会ではマレーシアのファンに、チャンピオンの走りを見てもらうことになります。

チームメートのダニ・ペドロサは、日本GPのフリー走行で右鎖骨を負傷して今大会も欠場。代役として青山博一が出場します。日本GPでは土曜日のFP3から代役出場し、厳しい条件の中で15位フィニッシュ。Repsol Honda Teamにとって貴重な1ポイントを獲得しました。

大会開幕前の10月25日に35歳の誕生日を迎えた青山は、250ccクラス時代の2007年と09年に優勝。08年には2位になり、表彰台に立っています。また、MotoGPでは10年に7位という成績を残しています。Repsol Honda Teamにとって、セパンはウインターテストでもしっかり走り込んでいるサーキット。青山は今大会でもペドロサの代役をしっかりこなし、チームタイトル獲得に向けてポイントを重ねる意気込み。今季2度目の代役出場に注目です。

前戦オーストラリアGPで今季2勝目を挙げたカル・クラッチロー(LCR Honda)は、シーズン3勝目と今季5度目の表彰台獲得を狙います。フィリップアイランドとは違い、これまでセパンではあまりよい成績を残していません。しかし、シーズン後半戦に入ってから安定した走りとリザルトを残しているだけに、今大会でも活躍が期待されます。16戦を終えて総合6位で、欠場しているペドロサとのポイント差は14点。総合4位も視野に入ってきました。

オーストラリアで行われた前戦で10位だったジャック・ミラー(Estrella Galicia 0,0 Marc VDS)は、マレーシアGPに向けて気合いを入れています。シーズン後半戦はケガのために思うような結果を残せませんでしたが、ホームグランプリの前戦オーストラリアGPでは予選5番手。決勝では7番手争いの大集団で走り、10位でフィニッシュ。完全復調を感じさせました。今大会も引き続き上位フィニッシュを目指します。

チームメートのティト・ラバトは、得意とするマレーシアGPを楽しみにしています。今大会は、ウインターテストからの自身の成長を知る絶好のチャンス。今季ベストを狙います。

Moto2 レポート

し烈なタイトル争いが続くMoto2クラスでは、2戦を残してチャンピオンの可能性がある選手が上位4人に絞られました。総合首位のヨハン・ザルコ(Ajo Motorsport)が226点、前戦オーストラリアGPで今季3勝目を挙げて総合2位に浮上したトーマス・ルティ(Garage Plus Interwetten)が204点、総合3位のアレックス・リンス(Paginas Amarillas HP 40)が201点、そして総合4位のフランコ・モルビデリ(Estrella Galicia 0,0 Marc VDS)が177点となっています。

事実上、チャンピオン争いはザルコ、ルティ、リンスの3人に絞られた格好。タイトルに王手をかけて今大会を迎えるザルコの走りに注目が集まります。チャンピオン決定の条件は、ルティとリンスに先着して総合ポイントで25点差以上をつけること。大きなアドバンテージを持っているザルコが、初のMoto2クラス2連覇を狙います。

一方で最終戦での決着に持ち込みたいルティは、日本GPとオーストラリアGPに続く3連勝を狙います。「いつもと同じ戦略で大会に挑む」とコメントしたルティ。プレッシャーのない思いきりのよい走りが大きな武器となりそうです。対照的に、日本GPとオーストラリアGPでは転倒などによりノーポイントだったリンス。チャンピオン争いから大きく後退しましたが、ルティと同じく逆転チャンピオンを狙います。

総合4位のモルビデリは、過去3戦、連続で表彰台を獲得し勢いに乗っているだけに今大会は念願の初優勝を目指します。総合5位のサム・ロース(Federal Oil Gresini Moto2)は、後半戦に入って転倒が続いていますが、今大会はシーズン3勝目を目指します。総合6位の中上貴晶(IDEMITSU Honda Team Asia)は、前戦オーストラリアGPでは予選で右肩を負傷。厳しい状態の中、5位でフィニッシュしました。右肩の状態は日を追うごとに回復しているだけに、今大会はシーズン2勝目と今季5度目の表彰台を目指します。

Moto3 レポート

Moto3クラスは、コンストラクターズタイトルの争いが大詰めを迎え、KTMと24点差で迎えるHonda勢の活躍に期待されます。

前戦オーストラリアGPで前者の転倒を避けきれず多重クラッシュの影響を受けた一人、エネア・バスティアニーニ(Gresini Racing Moto3)は椎骨にクラックが入っているため、今大会はドクターチェックを受けることになります。出場できれば今季2勝目を目指します。

総合3位のホルヘ・ナバロ(Estrella Galicia 0,0)もオーストラリアGPでは転倒リタイアに終わり、その雪辱に挑みます。対照的に前戦オーストラリアGPで3位初表彰台を獲得したチームメートのアーロン・カネットは2戦連続の表彰台を目指します。

ルーキーながら今季2勝を上げているカイルール・イダム・パウィ(Honda Team Asia)がホームグランプリを迎えます。マレーシア人選手としては初のグランプリ制覇。そして2勝目を挙げたパウィに地元ファンが大きな声援を送ることになります。同じくルーキーのアダム・ノロディン(Drive M7 SIC Racing Team)も、日本GPで12位、オーストラリアGPで11位と調子を上げています。今大会、ホームグランプリで今季ベストを狙います。

尾野弘樹(Honda Team Asia)は、前戦オーストラリアGPでは、3番手争いの大集団の中で8位でフィニッシュ。その勢いをキープ、今大会は初表彰台に挑みます。セパンは走り慣れているサーキット。3位表彰台に登壇するも失格に終わった日本GPの雪辱に挑みます。

MotoGP コメント

マルク・マルケス(MotoGP 総合1位)
「オーストラリアはすばらしいレースにしようとがんばりました。うまくはいきませんでしたが、いつも前向きに考えています。今回もたくさんのことを学ぶことができました。今後同じような状況になったときには注意深く走ります。しかし、フィーリングがよくて、走行を楽しんでいるときには、自身をコントロールするのはとても難しいことです。しかし、前回はいい教訓になりました。 今いるセパンは2月に毎回テストをするところで、よく知っています。ウインターテストでは、まだマシンのセットアップの方向性に苦戦していました。さらにテスト後に、路面が完全に再舗装されました。そのため今週末はどんな状態なのかを見たいと思います。どれだけ路面がスムーズになったのか、どれだけ速く走れるのか、改修されたコースに関してはとても興味があります」

カル・クラッチロー(MotoGP 総合6位)
「マレーシアGPがとても楽しみです。モーターサイクル産業と僕たちのスポンサーにおいてもとても大事な場所です。MotoGPとLCR Hondaのファンに会えるのがとても楽しみです。過去のリザルトからは、このサーキットではあまり戦闘的になれないかもしれませんが、最近のペースはとてもいいので、ここでもいい仕事ができることを願っています。シーズン序盤に新しいアスファルトでテストをしています。今週末、自分の力を試すのが楽しみです」

ジャック・ミラー(MotoGP 総合18位)
「今年初めのウインターテストはケガのために走行していませんが、大きな不利益にはならないと思います。なぜなら路面が新しくなっているからです。路面がかなりバンピーになっていたので新しいアスファルトになりうれしいです。どのように変わったのか見るのが楽しみですが、いずれにしても早く攻略しなけばいけません。フィリップアイランドはいいレースでした。今回もエキサイティングなバトルをして、さらにいい結果が出せることを願っています」

ティト・ラバト(MotoGP 総合20位)
「マレーシアの天気がオーストラリアよりもよくなることを願っています。新しい路面を攻略し、いくつかのコーナーがどのように変わったのかを理解するために、ドライコンディションでしっかり走る必要があります。2月にセパンでMotoGPマシンをテストしました。新しいアスファルトのセットアップのためにどれだけのインフォメーションを使えるかを把握しなければなりません。このマシンでどうすれば速く走れるのか早く理解し、一歩前進できるようにがんばります」

青山博一(MotoGP 総合27位)
「再びRepsol Honda Teamから走るチャンスをいただきとてもうれしく思っています。日本GPでは土曜日の午前中のFP3からスタートとなり、マシンに合わせ、リズムをつかむのが少し難しかったです。今回は最初からいいフィーリングをつかんでうまくいくことを願っています。だれもがダニ(ペドロサ)の一日も早い復帰を願っていますが、彼が回復するまでHonda、そしてRepsol Honda Teamのためにベストを尽くします。今週の火曜日は僕の35歳の誕生日でした。大好きな国の一つであるマレーシアで祝えてもらい、うれしいです。セパンサーキットでのレースが楽しみにしています」

Moto2 コメント

ヨハン・ザルコ(Moto2 総合1位)
「残り2戦となりました。先週は残念な結果でしたが、今週末はトップグループに戻らなければいけません。(トーマス)ルティに対してポイントのアドバンテージはありますが、Moto2クラスでは決して気が抜けません。今年の目標はMoto2のタイトルを守る最初のライダーになることです。そのためにセパンでは引き続きがんばります。このすばらしいサーキットはこれまでもずっと楽しんできました。新しい路面がどう変わったのか楽しみです」

トーマス・ルティ(Moto2 総合2位)
「日本やオーストラリアと同じ戦略で戦います。とにかく、自分自身、そしてレースごとに集中することを心がけています。Moto2クラスではどんなことでも起こり得ます。僕のチャンピオンシップのゲームはまだ続いています。だれも僕に期待していませんが、マレーシアでも同じ戦略で、自分自身の戦いに集中します。それがベストだと思います。ヨハン(ザルコ)とアレックス(リンス)は今回も強いと思います。簡単なレースにはならないでしょう。新しい路面での初めての走行になります。どうなるのか楽しみです」

アレックス・リンス(Moto2 総合3位)
「オーストラリアで起きたような転倒は時々起こります。栄光が常にあるわけではありません。(ヨハン)ザルコとの差はわずか25ポイントです。そしてシーズン終盤にきて(トーマス)ルティがすばらしいレースをしています。マレーシアの目標は同じです。一番のライバルであるザルコに対してできる限りポイントを取り戻したいと思います。セパンが楽しみです」

中上貴晶(Moto2 総合6位)
「右肩の状態は少しずつよくなっているので、いいレースができると思います。さらにここマレーシアGPは、出光の方々が応援に来てくれるので結果で応えたいです。シンガポールでは、出光主催の壮行会に(カイルール・イダム)パウィと行ってきました。サイン会なども行い、現地の出光の方々もすごく喜んでくれたのでマレーシアGPに向けてモチベーションが上がりました」

Moto3 コメント

エネア・バスティアニーニ(Moto3 総合2位)
「フィリップアイランドでのアクシデントは大変でした。僕のせいではありませんでしたが、このようなことは時々レースでは起きます。もちろん、走れるかどうかはドクターが決めることですが、ドクターチェックを受け、出場できることになったら、プラクティスと決勝レースに集中したいと思います」

ホルヘ・ナバロ(Moto3 総合3位)
「日本、オーストラリアでポイントを獲得できなかったので、今大会はそのばん回をしたいです。このサーキットは好きです。昨シーズンは最初のフリープラクティスからとてもうまく走ることができました。決勝では3位表彰台に立っています。今年も少しでも多くポイントを獲得できるようにがんばります。暑くて厳しいレースになると思いますが、日曜日の決勝へ向けてしっかり準備を整えたいと思います」

ファビオ・ディ・ジャンアントニオ(Moto3 総合6位)
「セパンは初めてなので今週末がとても楽しみです。このサーキットのこともよく話に聞いています。このサーキットは今年路面が再舗装されているので、だれにとっても初めて経験することになります。先週は転倒リタイアでした。僕のミスではなかったですが、今回は転倒に巻き込まれないように注意してベストを尽くします」

尾野弘樹(Moto3 総合23位)
「マレーシアはアジア・ドリーム・カップのころから成績も印象もよく、昨年の決勝でもトップグループに加わることができました。結果は転倒リタイアでしたが、今年はしっかりと表彰台、そして優勝を狙いたいと思います。チームメートがホームグランプリということで注目されていますが、チームメートに負けないぐらい目立てるレースをしたいです」