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2016.08.11 ロードレース世界選手権 第10戦 オーストリア オーストリアGP プレビュー

オーストリアGP プレビュー

MotoGP レポート

後半戦のスタートとなる第10戦オーストリアGPが、8月12日(金)から14日(日)までの3日間、レッドブル・リンクで開催されます。レッドブル・リンクは、1969年に完成したサーキットで、当初はエステルライヒリンクという名称でしたが、1995年にA1リンクとなり、2010年からはレッドブル・リンクへと改称されました。

オーストリアGPは、1971年にザルツブルグで初めて開催され、94年までの24年間で22回行われました。その後、A1リンクで行われた2回を加えて、今年で25回目の開催となります。

レッドブル・リンクは、ウイーンから南西約200kmのシュピールベルクにあり、オーストリアのほぼ中央に位置します。一周、4.326kmのコースは、アップダウンに富んだハイスピードコースで、コーナー数は10(右7/左3)とシンプルなレイアウトです。MotoGPは、A1リンク時代の96年と97年に開催されており、今大会は19年ぶりのMotoGP開催となります。

96年と97年はHonda勢が2年連続で、125cc、250cc、500ccの3クラスを制しています。最高峰クラスでは、96年にアレックス・クリビーレ(99年のチャンピオン)、97年にミック・ドゥーハン(94年から98年までの5年連続チャンピオン)とHondaでチャンピオンに輝き、MotoGPレジェンドに名前を連ねる両選手が優勝しています。そして19年ぶりの開催となった今年も、Honda勢の優勝が期待されます。

前半の9戦を終えて総合首位のマルク・マルケス(Repsol Honda Team)は、サマーブレイクで休息を取り、トレーニングもしっかりこなして後半戦に挑みます。Repsol Honda Teamは、前半戦の締めくくりとなった第9戦ドイツGPの後に行われたレッドブル・リンクの合同テストには参加していませんが、マルケスはプロモーションビデオの撮影で同サーキットを市販車のRC213V-Sで走行。下見を終えています。アップダウンの多いチャレンジングなコース。ハードブレーキングのポイントもあり、マルケスにとっては得意のコースレイアウト。MotoGPクラスにデビューして4年目。初開催のサーキットでは高い勝率を誇っているマルケスだけに、今季4勝目に大きな期待が寄せられています。

チームメートのダニ・ペドロサも、7月の公式テストには参加していませんが、マルケス同様、プロモーションビデオの撮影で同コースを走っています。独特なコースレイアウトで、丘陵地帯に作られた美しいサーキットでのレースを楽しみにしています。前半戦は9戦を終えて総合4位。表彰台獲得は、第2戦アルゼンチンGPの3位、第7戦カタルニアGPの3位の2回だけと厳しい戦いが続いていますが、後半戦の巻き返しに闘志を燃やしています。

第8戦オランダGPでMotoGP初優勝を達成。モチベーションの高いジャック・ミラー(Estrella Galicia 0,0 Marc VDS)は、ほとんどの選手が初体験となる今大会に気合を入れています。7月の公式テストでコースの攻略を済ませているので、あとは本番を待つばかり。レースをこなすごとに成長している選手だけに今大会の走りに注目されます。

前半戦の締めくくりとなるドイツGPで今季初表彰台の2位になったカル・クラッチロー(LCR Honda)は、2戦連続表彰台に闘志を燃やしています。今季最高のレースとなったドイツGPの後には、娘が誕生して2重の喜びとなりました。7月の合同テストに参加して、準備万端。勢いに乗るクラッチローの活躍に熱い視線が注がれています。

MotoGPルーキーのティト・ラバト(Estrella Galicia 0,0 Marc VDS)も初体験となるレッドブル・リンクの開幕を待ちきれない様子です。前半戦はケガもあり、パフォーマンスを十分に発揮することができませんでした。しかし、着実に前進し、サマーブレイクで万全の体調に戻っているだけに、後半戦の走りに大きな期待が寄せられています。

Moto2 レポート

Moto2クラスは、総合首位のヨハン・ザルコ(Ajo Motorsport)が、今季5勝目に挑みます。ドイツGP後に行われたレッドブル・リンクの合同テストでは、コース攻略を済ませ、セットアップにも着手しています。「とてもおもしろいコース」と開幕を楽しみにしており、2年連続タイトル獲得に向けてモチベーションを高めています。

ザルコを25点差で追う総合2位のアレックス・リンス(Paginas Amarillas HP 40)は、前半戦の締めくくりとなるドイツGPで痛恨の転倒リタイア。この転倒でザルコに大きなリードを許しているだけに、巻き返しに闘志を燃やしています。

総合3位で30点差でトップを追うサム・ロース(Federal Oil Gresini Moto2)も、前戦ドイツGPで転倒リタイアに終わっています。リンス同様、ドイツGPで冒したミスのリカバリーに全力を尽くすことになります。

総合4位のトーマス・ルティ(Garage Plus Interwetten)も前戦ドイツGPで転倒リタイア。総合首位のザルコから58点差と大きく遅れてしまっただけに、後半戦の巻き返しに気合を入れています。

総合5位の中上貴晶(IDEMITSU Honda Team Asia)は、第8戦オランダGPで初優勝を達成。第9戦ドイツGPではポールポジション(PP)を獲得しました。決勝では転倒を喫し、再スタートを切るも11位。3戦連続表彰台、2戦連続優勝は果たせませんでしたが、好調をキープしているだけに、Moto2クラスの全員が初体験となるレッドブル・リンクの戦いに気合を入れています。

Moto3 レポート

Moto3クラスは、ホルヘ・ナバロ(Estrella Galicia 0,0)が9戦を終えて総合2位につけています。前半戦はトレーニング中のケガで第8戦オランダGPを欠場、復帰戦となった雨の第9戦ドイツGPでは慎重に走って7位でした。総合首位のブラッド・ビンダー(KTM)との差は47点。後半戦は、その差を削り取っていく戦いとなります。

総合6位にはエネア・バスティアニーニ(Gresini Racing Moto3)。前半戦はマシンのセットアップに苦しみ、ケガもあって思うような結果を残せませんでした。しかし、第7戦カタルニアGPで3位、第8戦オランダGPは転倒リタイアも、予選では今季初PP、第9戦ドイツGPでは3位と、確実に調子を上げて来ました。今大会は、今季初優勝の期待が膨らみます。

総合7位にはニッコロ・アントネッリ(Ongetta-Rivacold)がつけています。前半戦最後のドイツGPでは、予選で左鎖骨を骨折して決勝をキャンセルしています。復帰戦となる今大会は、まずは体調を確認しながらの走行となります。

前半戦の締めくくりとなるドイツGPで今季2勝目。すばらしいリザルトを残しているルーキーのカイルール・イダム・パウィ(Honda Team Asia)は、9戦を終えて総合10位。ウエットコンディションではライバルを圧倒しているだけに、荒れた天候になれば今季3度目の優勝に期待が膨らみます。チームメートの尾野弘樹は、前戦ドイツGPでパウィとランデブー走行を見せるも転倒リタイア。後半戦のスタートとなる今大会は、第2戦アルゼンチンGPと第6イタリアGPの6位をしのぐベストリザルトに挑みます。

MotoGP コメント

マルク・マルケス(MotoGP 総合1位)
「チームやHondaとともにシーズン前半戦を全力がんばったおかげで、とてもいい休暇になりました。少しですが、友人とビーチでリラックスした時間を過ごせました。これから、厳しく難しいシーズン後半戦が始まろうとしています。集中し全力で取り組むことが必要になるので、サイクリングやスーパーモタードのトレーニングで準備をしてきました。今は自分のマシンで、再びレッドルブ・リンクを走ることを楽しみにしています。このすばらしいサーキットは、2回走ったことがあります。自分のファクトリーマシンではなかったし、思ったようにプッシュすることもできませんでしたが、とても楽しいサーキットでした。ハードブレーキングが必要なポイントもあり、マシンを止めて素早く曲がらなければならないコーナーもあり、少しオースティンに似ています。でも最後の部分は高速区間が続きます。世界チャンピオンシップにはいいサーキットだと思います。自分のMotoGPマシンで走ることが楽しみです。新しいサーキットは、いつもとは違います。なるべく早くコースに合わせなければなりません。僕のファンクラブがオーストリアのファンと合流することになっていて、ここでレースをすることを誇りに思います。すばらしい週末になることは間違いないと思います。天気がいいことを願っています」

ダニ・ペドロサ(MotoGP 総合4位)
「友人とともに少し休暇を過ごすことができて、とてもよかったです。そして、次の仕事に向けて再び集中するときがやってきました。6月に撮影のため、レッドブルリングでRC213V-Sで数周走ることができました。RC213V-Sは、とてもすばらしくて、速いマシンでした。サーキットは森の中にあり、美しいところです。コース全長は短いですが、コース幅に変化があって、とてもおもしろく感じました。一番難しいのはラインが1本しかなく、オーバーテイクが難しいことです。2、3カ所、かなりハードブレーキングを要求されるポイントがありますが、この部分はコース幅が広いのでオーバーテイクが可能です。右コーナーが多いサーキットで、流れるように走っている時間が長いです。新しいサーキットなので、走るのが楽しみです。いい仕事をして、いい週末になることを願っています」

ジャック・ミラー(MotoGP 総合13位)
「リラックスした夏休みが終わりました。オーストリアで再びレースが始まることを楽しみにしています。前半戦の終盤でのパフォーマンスを生かし、さらに前進したいです。この勢いをキープすることはとても重要なことです。前戦ドイツGPの後、このサーキットでテストができてよかったです。とても力強いリズムで走ることができました。ミシュランから供給されるタイヤを待ってみなくてはわかりませんが、テストでは、タイヤライフに問題はありませんでした。エンジンサーキットなのでおもしろいレースになると思います。僕たちのパッケージより赤いマシンの方が有利かもしれませんが、いつものように準備は整っています。そして、モチベーションは高まっています。マシンのいい感触と100%の体調で挑むことができる、今年最初のレースになります。とても楽しみです」

カル・クラッチロー(MotoGP 総合14位)
「ドイツGPを終えて、すばらしいときを過ごしていました。シーズン最初の表彰台を祝う時間がほとんどないままにオーストリアのテストに向かいました。そしてマン島の家に帰って、妻のルーシーの第一子誕生に備えました。娘のウィローは8月2日の火曜日に生まれました。最高の気分でした。そして今からサーキットに戻り、レースに挑みます。前回の成功を継続するためにがんばります。Hondaは一生懸命がんばっています。僕たちも前進し続けるので、楽観的です。シーズン後半はもっとうまくいくと思っています」

ティト・ラバト(MotoGP 総合20位)
「いい夏休みになりました。完全に充電するために1週間休みました。後半戦に向けて準備は整っています。オーストリアで走るのが楽しみです。このサーキットでテストをしましたが、とても好きなコースでした。コースのレイアウトを経験しているのは気持ちも楽です。部分的には、このコースではドゥカティが強そうですが、ほかのHonda勢のパフォーマンスもしっかり見て、自分のレベルをさらに理解しなければなりません。テストは自分のシーズンベストとなりました。モチベーションを高めて向かいます。シーズン前半でかなり経験を積みました。後半戦の目標はすべての面において前進することです。予選でさらに強くなり、Q2に近付けることを願っています。また、ポイント圏内のフィニッシュを増やし、すべてのレースで完走したいと思います」

Moto2 コメント

ヨハン・ザルコ(Moto2 総合1位)
「シーズン前半はいい終わり方となりました。しかし、ポイントを大きくリードしている理由の一つは、最後のレースで2人のライバルが転倒して僕が優勝したからであり、これからも厳しい戦いは続きます。夏休み中には、レッドブル・リンクでポジティブなテストができました。このサーキットはとてもおもしろく、高速かつ、コーナーが10しかありません。ラップタイムも速く、いいペースもありました。しかし、コーナーがとても少ないので改善するところを探すのが難しいです。テストは興味深いものでした。また、マシンを準備してセットアップやサスペンションを試すためには重要なテストでした」

アレックス・リンス(Moto2 総合2位)
「ドイツGPを終えてから、1週間の休暇がありました。その後オーストリアのテストへ行き、それ以降はサイクリングをしたり、スーパーモタードに乗ったり、ジムに通ったりしていました。シーズン前半はポジティブでした。しかし、昨年ほどコンスタントではなかったので、残りの9レースではそこに集中して取り組む必要があります。そしてヨハンとのギャップを縮めていきたいです」

サム・ロース(Moto2 総合3位)
「オーストリアがとても楽しみです。ドイツはあまりよくなかったので、チャンピオン争いに戻らなければなりません。とても集中していますし、準備はできています。7月のMotoGPテストはいい経験になりました。サーキットは楽しかったですし、Moto2マシンで走らなくてもコースを学ぶことができました。とてもいいレイアウトでした。週末に力強い走りをするのが楽しみです。目標はとてもシンプルです。ヨハン・ザルコとのポイント差を縮め、レースに勝つことです。夏休み中はあまりたくさんのことはしませんでした。とにかく一生懸命トレーニングをして残りの9レースに備えました。自信はあります。オーストリアに行くのが楽しみです」

中上貴晶(Moto2 総合5位)
「レッドブル・リンクは、初開催のコースで、初めて走ることになります。残念だったのは、テストに参加できなかったことです。20チーム以上が参加したと聞いているし、Moto2クラスは差がないクラスなので、正直、出遅れた感じはあります。それだけにレースに向けて集中するしかありません。レイアウトは、見る限り難しそうではありません。おそらく、攻略もそれほど難しくはないと思います。短い夏休みでしたが、リフレッシュすることができました。ドイツの結果は残念でしたが、モチベーションは上がっているし、調子は引き続きいいです。いつも通り集中して、この数戦の好調をアピールして、表彰台、そして優勝を狙いたいです」

Moto3 コメント

ホルヘ・ナバロ(Moto3 総合2位)
「この3週間は、とても実りあるものでした。次のオーストリアとチェコの2連戦でいい結果を残すためにトレーニングに励みました。ドイツの時よりも体力的にはレベルが上がっていると思います。まだ、ケガは完全に回復はしていませんが、日を追うごとによくなっているのを感じます。ほとんどのMoto3クラスのライダーにとってレッドブル・リンクは、未知の世界です。目標はレースでいい結果を出せるように最初から一生懸命取り組むことです。そしてチャンピオンシップリーダーとのギャップを縮めることです」

エネア・バスティアニーニ(Moto3 総合6位)
「レッドブル・リンクは行ったことがありません。ここでテストをした何人かのライダーから話を聞きましたが、とても速くて、いいサーキットだと聞いています。すぐに大好きになると思います。今回は、早くコースを学び、最初から速く走ることが大事です。ドイツでは速く走ることができました。ウエットでもいい結果を出すことができました。今はすべてのコンディションで力強い走りができるようになってきたと思います。自信をもってオーストリアに向かいます。また、チェコGPの行われるブルノでのテストでは、今回のレースでも役に立つような、セットアップを見つけることができました。いいレースができると思います」

ニッコロ・アントネッリ(Moto3 総合7位)
「夏休みを終えて、後半戦が始まります。このサーキットはみんなにとって新しいサーキットです。サーキットのことはあまりよく知りませんが、ストレートがたくさんあって、ハードブレーキングのところがいくつかある。そして、右コーナーが多いことは知っています。ドイツで骨折をしたので体調を確認する意味でも重要です。初日は体調を確認しながらの走りになります。とにかく全力を尽くします」

尾野弘樹(Moto3 総合20位)
「オーストリアは初めて走るサーキットなのでとても楽しみです。体の状態もベストなので本来の走りができると思います。後半戦の初戦になるので、ここでいい結果を出しリズムをつかみたいと思います。連戦になるので気を引きしめて臨みます。ケガをしている左手の人差し指はまだ完全には曲がりません。ただモトクロスもミニバイクもたくさん乗りましたが、全く問題ありませんでした」